2015年のニュース

麻しんについて (ファクトシート)

2015年2月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

麻しんは安全かつ費用対効果の高いワクチンがあるにもかかわらず、小児での主な死因の一つです。
2013年には、世界で145,700人が麻しんで死亡しており、毎日約400人、1時間に16人が死んでいることになります。
麻しんのワクチンによって、2000年から2013年までに、世界での麻しんによる死亡者は75%減少しました。
2013年には、世界の小児の約84%が1歳の誕生日までに定期予防接種として1回目の麻しんワクチン接種を受けています。2000年には73%でした。
2000年から2013年までに、麻しんのワクチン接種は世界で麻しんによる推計1,560万人の死亡を防ぎました。

概要

 麻しんは非常に伝染しやすい、油断できないウイルス性疾患です。ワクチン接種が広く実施される以前である1980年には、毎年推計で260万人もの患者が麻しんで死亡していました。

 この疾患は、安全かつ有効なワクチンがあるにもかかわらず、依然として世界の小児での大きな死亡原因の一つです。2013年には、推計で145,700人が麻しんで死亡しました。そのほとんどが、5歳未満の小児でした。

 麻しんはパラミクソウイルス科のウイルスによる疾患で、通常、直接接触や空気を介して伝播します。麻しんウイルスは粘膜に感染し、その後に身体全体に広がります。麻しんは人に感染する疾患で、他の動物には感染しません。

 予防接種活動が加速されたことが、麻しんによる死亡者数の減少に大きな影響を与えました。2000年から2013年までに、麻しんのワクチン接種は麻しんによる死亡者を推計1,560万人も防ぎました。全世界での麻しんによる死亡者数は、2000年の544,200人から75%減少し、2013年には145,700人となっています。

症状と所見

 麻しんは通常、ウイルスに暴露した後、10日から12日後に高熱で発症し、発熱は4日から7日間続きます。最初の段階で、鼻水、咳、結膜発赤、涙目、頬部内側の白色発疹(コプリック斑)がみられます。通常は数日後に、発疹が顔面と上頚部に出現します。発疹は3日間以上続いて拡大し、手や足にも出現します。発疹は5日から6日間続いた後に消退します。平均すると、ウイルスに暴露した後14日(7日~18日)で発疹が出現します。

 麻しんに関連する死亡原因は、ほとんどが疾患に関連した合併症によるものです。合併症は5歳未満の小児、または20歳を過ぎた成人に多くみられます。最も深刻な合併症には、失明、脳炎(脳浮腫を引き起こす感染症)、重症の下痢とそれに伴う脱水、耳への感染、肺炎の様な重症呼吸器感染症があります。麻しんの重症化は、貧しく栄養状態の悪い幼児、特にビタミンAの不足や、HIV/AIDSなどの免疫機能が低下した患者でよく起こるようです。

 低栄養状態の割合が高く、適切な公衆衛生が受けられない地域では、麻しん患者の10%近くが死亡します。妊娠中の感染には重い合併症のリスクがあり、流産や早産が起こる可能性があります。麻しんに感染し回復した人は、生涯にわたり免疫が維持されます。

リスクのある人

 ワクチン未接種の幼児は、麻しんの感染と、死亡を含む合併症のリスクが最も高い集団です。ワクチン接種歴のない妊婦もリスクがあります。免疫のない人(ワクチン接種歴のない人またはワクチンを接種しても免疫がつかなかった人)は誰もが感染する可能性があります。

 麻しんは、多くの発展途上国、特にアフリカやアジアの一部では、いまでも頻繁にみられる疾患です。麻しんによる死亡の大部分(95%以上)は国民一人あたりの所得が低く、公衆衛生の基盤が弱い国で起こっています。

 麻しんの流行は、特に、自然災害や紛争が起きている国や、そこから復興する途中の国で致命的です。公衆衛生の基盤や保健サービスへの打撃は定期予防接種の中断を招き、避難キャンプの中での混雑は感染のリスクを増大させてしまいます。

感染経路

 麻しんウイルスは非常に伝染しやすく、咳、くしゃみ、濃厚接触、感染した鼻咽頭の分泌物との直接接触で伝播します。

 ウイルスは、空中や物質の表面で最大2時間の活性があり、感染力を持ちます。感染者は発疹が出現する4日前から発疹が消退した4日後まで、感染力を持っています。

 麻しんの集団発生は、特に、若い栄養失調の子供で起こり、多くは死亡者を出す流行となります。麻しんがほぼ撲滅した国では、依然として、他国からの輸入症例が重要な感染源となっています。

治療

 麻しんウイルスに特異的な抗ウイルス薬はありません。

 麻しんの重症合併症は、充分に栄養を摂り、適切に水分補給を行い、WHOの推奨する経口補液(ORS)で補液を確実に行う支持療法を行うことで避けることができます。この補液は下痢や嘔吐で失った水分や他の必須元素を補うものです。抗生剤は、眼や耳の感染、肺炎の治療に対して必要時に処方されます。

 発展途上国で麻しんと診断されたすべての小児は、ビタミンAの投与を24時間間隔で2回受けるべきです。この治療は栄養状態が良い小児で起きた麻しんであっても、低水準のビタミンAを補正し、眼の障害と失明を予防することを助けます。ビタミンAの補給は麻しんによる死亡を50%減少させることが示されています。

予防

 小児の麻しんワクチンの定期予防接種と重症化と死亡の割合の高い国における集団予防接種キャンペーンは、いずれも世界的に麻しんの死亡を減らす公衆衛生戦略の鍵です。麻しんワクチンは50年ものあいだ使用されてきました。安全で、効果的で、かつ安価です。一人の小児に麻しんワクチンを接種する費用は約1米ドル(110円)です。

 麻しんワクチンは、風しんや流行性耳下腺炎の感染症がしばしば問題となっている国で、これらのワクチンとともに、一緒に接種されます。単独ワクチンでも混合ワクチンでも同等の効果があります。麻しんワクチンに風しんワクチンを追加すると、わずかなコストの追加で同時に接種でき、実施費用が一回分ですみます。

 2013年には、世界の小児の約84%が、通常の保健サービスとして、1歳の誕生日までに1度目の麻しんワクチン接種を受けています。2000年には73%でした。1度目のワクチン接種では約15%の小児で免疫がつかないので、確実に免疫をつけ、集団発生を予防するために2回接種が推奨されています。

WHOの取り組み

 ミレニアム開発目標の第4の目標(MDG4)として、1990年から2015年までに、5歳未満の死亡率を3分の2に減らすことを目標としています。麻しんワクチンには小児の死亡率を低下させる可能性が認められ、麻しんワクチンの接種率が小児保健サービスの到達度のマーカーとして考えられるので、麻しんワクチンの定期予防接種率はMDG4達成への進捗度の指標に選択されています。麻しん・風しん含有ワクチン接種を受けやすい環境を提供することの有益性が、広く世界中で圧倒的な根拠をもって示されています。

 2013年までに、ワクチン接種率を向上させる世界的な取り組みによって、死亡者数は75%減少しました。2000年から2013年までに、麻しん・風しんイニシアチブ(M&R Initiative)の支援により、麻しんによる死亡を推計1,560万人防ぐことができました。2013年には、34か国での集団接種キャンペーン中に、約2億500万人の小児が麻しんのワクチンを受けました。現在、すべてのWHO地域事務局は、2020年までにこの予防可能な致死的疾患を撲滅するという目標を立てています。

 麻しん・風しんイニシアチブは、麻しんと風しんの感染を制御する目標を達成しようとする国々を支える、WHO、国連児童基金(UNICEF)、アメリカ赤十字、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連基金と共同で活動しています。

 2012年4月、麻しん・風しんイニシアチブは、2012年から2020年に実施する新たな麻しんと風しんの世界的戦略計画を公表しました。

 この計画には、2015年から2020年の間で新たに世界的な目標が立てられています。

2015年末までに
麻しんの死亡者を2000年の水準に比べて、少なくとも95%減少すること
地域的な麻しんと風しん、先天性風しん症候群(CRS)の撲滅目標を達成すること

2020年末までに
少なくともWHOの5地域で麻しんと風しんの撲滅を達成すること

 この戦略は、5つの中核的な内容の実施に焦点を合わせています。

麻しん・風しん含有ワクチンの2回接種の接種率を向上させ、高い接種率を維持する
効果的なサーベイランスによって疾患を監視し、予防接種活動の振興と良い影響を確実にするために、計画に沿った努力を適正に評価する
集団発生への備え、迅速な対応、効果的な患者の治療の発展と維持をはかる
予防接種に対する信頼と需要を築くために、地域と連携をとり、かかわっていく
費用対効果の高い取り組みとワクチン接種や診断方法の向上を支援するために研究や開発を行う

 この戦略計画を実施することで、速やかにかつ持続的に、世界中の小児とその母親の生命を守ることができます。この計画は、2015年と2020年の麻しんと風しんの感染制御と撲滅の目標を達成するために、国内また国際的なパートナーとともに働いている国々の予防接種の管理者に明確な戦略を提供します。これは、長年にわたる予防接種計画の実施の経験や、推進された麻しんのコントロールやポリオ根絶イニシアチブの教訓を踏まえています。

 現在の動向と実績に基づいて、世界的な予防接種の専門家からは、2015年麻しんマイルストーンと撲滅目標は予定通りには達成されないと結論づけられました。進展を再開させるためには、各国と予防接種のパートナーが麻しん撲滅計画を可視化し、麻しん接種の障壁に取り組み、保健システムを強化し予防接種サービスへの公平な利用環境の整備を実施するために中身のある持続的な追加投資が必要となるでしょう。

出典

WHO. Measles. Fact sheet N°286. Updated November 2015.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs286/en/