世界におけるインフルエンザの流行状況(更新4)

2015年3月9日 WHO(原文[英語]へのリンク[PDF形式:727KB]

要約

地球全体でみると、インフルエンザの活動は北半球で高い状態です。主体はインフルエンザA(H3N2)ウイルスです。アフリカ、アジア、ヨーロッパ南部のいくつかの国からはインフルエンザA(H1N1)pdm09の増加が報告されています。

  • 北米では、インフルエンザの活動はピークに続く高さを維持しています。今シーズンは現在もインフルエンザA(H3N2)が主体です。
  • ヨーロッパでは、インフルエンザのシーズンが高い状態にあります。特に、西部と中央部の国々で高くなっています。
  • 北部アフリカと中東では、インフルエンザの活動はほとんどの地域で低くなってきました。この地域ではインフルエンザAが主体です。
  • アジア温帯地域では、インフルエンザの活動が中国北部とモンゴルでピークから下がってきました。しかし、韓国では増加が続いています。主体はインフルエンザA(H3N2)です。
  • アメリカ熱帯地域では、ほとんどの国でインフルエンザの活動は低い状態です。
  • アジア熱帯地域では、インフルエンザの活動がインドとラオスで高まってきています。中国南部、香港、イランではインフルエンザの活動が高いままにとどまっています。
  • 南半球では、インフルエンザの活動はオフ・シーズンのレベルが続いています。
  • 2015-2016年北半球の冬期に対するワクチンの推奨が発表されました。下記のリンクで閲覧できます。
    (http://www.who.int/influenza/vaccines/virus/recommendations/2015_16_north/en/)
  • 2015年第6週と第7週(2015年2月8日から2月21日)に対して、FluNet(協定世界時間2015年3月5日16:25)に基づき、89の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から、データが集められています。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、133,895本を越える検体が検査されました。インフルエンザ・ウイルスが陽性となった検体は34,056で、このうち25,455検体(74.7%)がインフルエンザA型、8,601検体(25.3%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、2,382検体(20.5%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、9,253検体(79.5%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、1,656検体(97.1%)がB-山形系統で、49検体(2.9%)がB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米

北米では、インフルエンザの活動は2014年の終わりのシーズンのピークに続く高さで残っています。インフルエンザA(H3N2)が流行の主体です。

カナダでは、インフルエンザの検出、インフルエンザでの入院、インフルエンザ様疾患(ILI)の各割合が前数週間から減少傾向を続けています。しかしながら、インフルエンザの検出とRSウイルスの活動は6つの地域で活動の拡大を伴って増加した状態にあります。インフルエンザ検査での陽性検出率は17.5%に減りました。インフルエンザAが69%、インフルエンザBが31%で、インフルエンザBの検出割合の増加が反映されてきています。インフルエンザAにおける亜型は、97%がインフルエンザA(H3N2)でした。インフルエンザA(H3N2)検体110本の特徴から、104本が2015年南半球に対して選択された、そして2015/2015年北半球に対して選択されたA/Switzerland/9715293/2013と抗原性において類似していました。65歳以上の高齢者で大半が占められていたインフルエンザによる入院は減少してきました。

アメリカ合衆国では、インフルエンザの活動は減ってきています。インフルエンザの陽性検出率は2014年12月末に30.4%でピークとなり、12.1%まで減りました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動(3%)も減ってはいますが、まだ国の警戒基準(2%)よりも僅かに高くなっています。RSウイルスの活動は25.3%と高いレベルを維持しています。インフルエンザ関連の入院割合は人口10万人あたり51.7人で、65歳以上で最も高く人口10万人あたり258人でした。この割合は過去6シーズンと比べて最も高くなっています。過去のシーズンでの入院割合は人口10万人あたり1.9-41.8人で、65歳以上では人口10万人あたり6.2-164.9人でした。122都市からの報告体制における肺炎およびインフルエンザによる死亡率は7.4%まで減ってきました。しかし、まだ今週も疫学警戒レベルである7.2%を上回っています。

メキシコでは、インフルエンザ陽性検出の割合が13.3%に減りました。主体はインフルエンザA(H3N2)です。肺炎の活動が人口10万人あたり3.6人と高くなっています。しかし、(これは)予想の範囲内にはあり、過去4週間を通して減り続けています。急性呼吸器感染症(ARI)の活動が高い状態で、警戒レベルにあります。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、インフルエンザ・シーズンの高い状態にあります。インフルエンザの活動の高まりが続いており、特に西部と中央部のヨーロッパの国々で高くなっています。インフルエンザ様疾患(ILI)と急性呼吸器感染症のレベルの高まりが報告された国が9か国あり、35か国ではインフルエンザの活動レベルが平年と同じか、それよりも高くなっています。定点観測による2,535検体のうち、49%の検体が34か国でインフルエンザ陽性となりました。流行しているウイルスはインフルエンザA(H3N2)が相変わらず主体ですが、A(H1N1)pdm09とインフルエンザBの感染も発生しています。公衆衛生活動の一環であるヨーロッパ超過死亡・モニタリングプロジェクト(EUROMOMO)によれば、65歳以上の高齢者では、ベルギー、イングランド、フランス、オランダ、ポルトガル、スコットランド、スペイン、スイス、ウェールズで、全ての原因による死亡率が超過となりました。全ての原因による死亡率の超過はインフルエンザの流行、寒波、急性呼吸器感染症の増加が関係しています。RSウイルスの流行はヨーロッパの全域で低いレベルに下がり続けています。

東ヨーロッパでは、インフルエンザA(H3N2)が主体で、いくつかの国ではインフルエンザBも流行っています。インフルエンザの活動は、チェコ、ルーマニア、ロシア、スロバキアで高まっています。ロシアでは、インフルエンザとその他の急性呼吸器感染症の活動が減少傾向にあることが報告されました。しかし、インフルエンザ様疾患(ILI)と急性呼吸器感染症による死亡率は人口1万人あたり87.5人で、国の警戒基準(人口1万人あたり68.9人)を上回っていることが報告されています。

北アフリカ

北アフリカでは、インフルエンザの活動はアルジェリア、エジプト、モロッコで2014年の終わりのピークの後、低下が始まりました。エジプトでは、A(H1N1)pdm09が主体ですが、インフルエンザBも重ねて流行しています。

西アジア

西アジアでは、バーレーンとイスラエルでインフルエンザとインフルエンザ様疾患(ILI)の活動の高まりが報告されています。主体はインフルエンザA(H3N2)です。グルジアではインフルエンザBが主体です。

中央アジア

中央アジアの国々では、僅かなインフルエンザの活動が報告されています。

東アジア

東アジア地域では、インフルエンザの活動が中国北部、日本とモンゴルでピークから下がり始めました。(一方)、韓国では増加が続いています。これまでのところ、流行の主体はインフルエンザA(H3N2)です。中国北部では、インフルエンザ様疾患(ILI)で受診する患者の割合が前数週間と比べて減少してきました。韓国では、インフルエンザ様疾患(ILI)で受診する割合が(前回報告の22%から)45.5%に増加し、警戒レベルである12.2%をはるかに上回っています。インフルエンザ陽性であった530検体のうち、404検体はインフルエンザA(H3N2)でした。モンゴルでは、主体となるウイルスはインフルエンザA(H3N2)ですが、検出自体は減ってきています。インフルエンザ様疾患(ILI)の割合と肺炎の割合も減ってきました。人口1万人あたりのインフルエンザ様疾患(ILI)の割合は1歳から4歳の幼児で最も高くなっています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国

全体として、インフルエンザの活動はカリブ地域、中央アメリカ、南米熱帯地域で低い状態となっています。キューバでは、重症急性呼吸器感染(SARI)が1歳未満と60歳を越える高齢者で増加し、インフルエンザA(H3N2)の検出も増加していることが報告されています。プエルトリコでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が下がってきているものの依然として高く、インフルエンザの検出の増加も続いています。ジャマイカでは、インフルエンザの活動はインフルエンザA(H3N2)に伴うピークから減少し、重症急性呼吸器感染(SARI)による入院数の減少も報告されています。

中央アフリカ熱帯地域

アフリカでは、西アフリカでのインフルエンザAとB両方の増加と東アフリカでのインフルエンザ活動の低下してきたことに伴い、インフルエンザの活動の変動が報告されています。

アジア熱帯地域

熱帯アジア地域では、インフルエンザの活動が中国南部およびラオスで増え続けています。インフルエンザの活動は中国南部、香港、イランで高い状態でとどまっています。中国南部では、定点観測での外来患者のインフルエンザ様疾患(ILI)による受診率の増加を伴い、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBの入り交じった検出状態が報告され続けています。香港では、主にインフルエンザA(H3N2)の検出が報告されています。インフルエンザの入院と死亡への関与が65歳を越える高齢者集団で高止まりを続けています。ラオスではインフルエンザBの検出数の増加が続いています。シンガポールでは、急性呼吸器感染症による毎日の平均受診者数がピークから減少してきたことが報告されています。イランでは、両方のインフルエンザA亜型による活動の増加が報告されています。

インドでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09検出の急激な増加の報告が続いています。国内の流行地域の広い分布に伴い、デリー、Gujarat(グジャラート)、パンジャーブ、Rajashthan(ラージャスターン)、Telangana(テランガーナ)の各州で、インフルエンザ確診患者?もしくは死亡者?の数が最大になっていることが報告されています。死亡例の中では、患者は高い割合で基礎疾患をもつことが報告されています。スリランカでは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBの入り交じった流行の報告が続いています。

南半球の温帯地域諸国

南半球では、インフルエンザの活動はオフ・シーズンのレベルにあります。

出典

WHO.Influenza Update number232. 9 March 2015
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2015_03_09_surveillance_update_232.pdf?ua=1[PDF形式:727KB]