2015年のニュース

結核について (ファクトシート)

2015年3月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

結核(TB)は単一の感染症としては、HIV/AIDSに続き、世界で2番目に死亡者数が多い疾患です。
2013年には900万人が結核に罹患し、150万人が結核で死亡しました。
結核による死亡の95%以上は低所得国と中所得国で発生しており、15歳から44歳までの女性の五大死因の一つです。
2013年には小児の55万人が結核を発症し、HIV陰性の小児の8万人が結核で死亡したと推計されました。
結核は、HIV感染者の主な死因のひとつで、HIV感染者の死因の5分の1を占めています。
2013年には、世界で推定48万人が多剤耐性結核(MDR-TB)を発症しました。
結核に罹患している患者数の推計値は、非常に緩やかではありますが、毎年減少しており、2015年までに結核の発生を食い止め、その後、発生率を減少させるというミレニアム発展目標の達成が順調に進んでいることを示しています。
結核の死亡率は1990年から2013年の間に45%減少しました。
2000年から2013年までに、推定3700万人の生命が結核の診断と治療を通して救われました。

 結核(TB)は細菌(結核菌)によって起こり、多くの場合、肺を侵します。結核は治療と予防が可能な疾患です。

 結核は、空気感染によって人から人に広がります。肺結核の人が咳やくしゃみをしたり、つばを吐いたりする時に、人は空気中に結核菌をまき散らします。人は、少量の結核菌を吸い込んだだけでも感染します。

 世界の総人口の約3分の1は、結核菌に感染しているものの、発症はせず、他の人にうつすことのない潜在性結核感染症の状態にいます。

 結核菌に感染している人が生涯で結核を発症するリスクは10%です。しかし、HIV感染者、栄養失調者、糖尿病患者、喫煙者などの免疫系が低下している人々では、発症リスクがずっと高くなります。

 人が結核を発症し活動性となると、数か月間は症状(咳、発熱、寝汗、体重減少など)が軽症で経過することがあります。これは受診の遅れを招き、結果として他の人に結核菌をまき散らすことになります。結核を発症した人は、1年の間に、濃厚接触者の10人から15人に感染させることができます。適切な治療を受けなければ、結核を発症した人の3分の2は死亡します。

リスクの高い人

 結核に侵されるのは、大部分が生産年齢人口の青少年です。しかし、リスクはすべての年齢層にあります。患者と死亡者の95%以上は、開発途上国で発生しています。

 HIVと結核に重複感染している人は、結核を発症するリスクが21倍から31倍高くなるようです(「結核とHIV」の項を参照)。活動性結核になるリスクは、他の免疫不全状態にある人でも高くなります。

 2013年には、約50万人の小児(0歳から14歳)が結核に罹患し、HIV陰性の小児の8万人が結核で死亡したと推計されました。

 喫煙は結核の発症と死亡のリスクを大幅に高めます。世界の結核患者の20%以上は喫煙が寄与しています。

世界に与える影響

 結核は、世界中で発生しています。2013年に、新規結核患者数が最も多かったのは東南アジアと西太平洋地域で、世界の新規結核患者数の56%を占めました。しかし、2013年の人口あたりの新規患者数が最も多かったのはサハラ以南のアフリカであり、人口10万人対280でした。

 2013年のうち、報告された結核患者の約80%は22か国で発生していました。患者数が大きく減少した国がある一方、患者数の減少が非常に緩やかな国もあります。たとえば、ブラジルと中国は、過去20年以上にわたって、結核の患者数が持続的に減少している22の国の中のひとつです。カンボジアでは、結核の有病率がこの10年間で約50%減少しました。

症状と診断

 活動性肺結核の一般的な症状は、何度も血痰を伴う咳、胸痛、脱力感、体重減少、発熱、寝汗です。

 多くの国では、依然として、結核の診断は、顕微鏡による喀痰塗抹鏡検と呼ばれる長く使われてきた検査法に頼っています。訓練された検査技師が、顕微鏡で喀痰の検体中に結核菌が存在するかどうかを見ます。1日以内に診断することができ、3回の検査を行いますが、この検査では感染菌数の少ないタイプの結核患者を多く発見することはできません。

 多剤耐性結核(「多剤耐性結核」の項を参照)やHIVが関係する結核の診断は、もっと複雑です。現在、結核の診断と薬剤耐性の有無の確認を非常に効率的に検査できることが証明された、2時間で検査できる新しい方法が多くの国で使われ始めています。

 結核は、小児での診断が特に困難です。

治療

 結核は治療可能な疾患です。薬剤耐性のない活動性結核は、医療従事者または訓練されたボランティアが、患者への情報提供、患者管理、患者支援を行いながら4種類の抗菌薬による6か月間のコースで行う標準療法で治療されます。患者管理と患者支援がなければ、服薬の遵守が困難となり、疾患が広がるおそれがあります。結核患者の大部分は、薬が提供されて、適切に服用すれば治ります。

 2000年から2013年までに、推定3700万人の生命が結核の診断と治療を通して救われました。

結核とHIV

 活動性結核に進展していなくても、2013年に世界でHIV感染者の少なくとも3分の1は結核菌に感染しています。HIVに感染していない人に比べて、活動性結核を発症するリスクが26-31倍高くなるようです。

 HIVと結核の重複感染は致命的で、双方の疾患が他方の疾患の進行を早めます。2013年には、約36万人がHIVに関係する結核で死亡しました。2013年に、HIV陽性の新規結核患者が110万人発生したと推計されており、そのうちの78%はアフリカに住んでいます。

 後述の通り、WHOは、結核とHIVに総合的に対応するため、感染と発症の予防及び治療と死亡を減らすための行動を含む、12項目の取組を推奨しています。

多剤耐性結核

 数十年もの間、標準的な抗結核薬が使用されており、薬剤への耐性が拡がっています。単一の抗結核薬に耐性を持つ菌株は、調査が行われたすべての国で記録されています。

 多剤耐性結核(MDR-TB)は、少なくとも、最も強力な第一選択薬(標準療法に使用される薬)であるイソニアジドとリファンピシンに耐性を示す結核菌による結核です。

 MDR-TBの主な原因は不適切な治療です。抗結核薬の不適切な使用や誤った使用のほか、品質の劣った薬剤の使用は、いずれも薬剤耐性の原因になります。

 耐性菌により引き起こされた症状では、従来の第一選択薬による治療には反応しません。MDR-TBは、第二選択薬を使用することにより治療可能で、治癒させることができます。しかし、第二選択薬による治療は、選択肢が限られ、推奨された薬が常に使用できるとは限りません。長期にわたる化学療法(最大2年間の治療)が必要であり、治療費が高額となり、患者に重い副作用が発生することもあります。

 場合によっては、薬剤耐性がさらに進むことになります。超多剤耐性結核(XDR-TB)は、第二選択薬の抗結核薬のうち最も効果的な薬剤をも含む複数の薬剤に抵抗性を示す結核で、使用できる薬剤が極めて少なくなります。

 2013年に、全世界で報告された肺結核患者のうち、約48万人がMDR-TBでした。そのうちの半数以上は、インド、中国、ロシアで発生しました。MDR-TBの約9.0%がXDR-TBであったと推計されています。

WHOの取り組み

 WHOは結核に対処するために、6項目の中核となる取り組みを進めています。

  1.結核に関する重要な問題に世界的なリーダーシップを発揮すること
  2.結核の予防、治療、感染制御のために、根拠に基づく政策、戦略、標準対処法を推進し、
    それらの実施状況を監視すること。
  3.加盟国に技術的な支援を行い、変革を起こし、持続的な対処能力を確立すること。
  4.世界の結核の状況を監視すること。また、結核の治療、感染制御、財政に関する進展状況を
    評価すること。
  5.結核に関する研究課題をまとめ、研究を奨励し、貴重な知見を翻訳し、普及させること。
  6.支援者との協力関係の中で結核対策活動を促進し、取り組むこと。

 WHOがすべての国と支援者に実施を促しているストップ結核戦略は、国レベルや地域レベルで官民が以下のように行動することで、結核を劇的に減少させることを目指しています。

  1.質の高いDOTSの発展と強化を続けること。DOTSは以下の5項目の要点から成る総合
    対策です。
   a.適切で継続性のある財政基盤への政治的取り組みの確保
   b.患者の早期発見と、精度が保証された細菌学的検査による診断の確保
   c.患者管理や患者支援と一体化した標準療法の提供
   d.効果の高い薬剤の供給と管理の確保
   e.実績と効果に対する監視と評価
  2.結核とHIVの重複感染、MDR-TB、貧困および社会的弱者のニーズへの対応
  3.プライマリ・ヘルス・ケアに基づく公衆衛生システムの強化への関与
  4.すべての医療従事者による関与
  5.結核患者の地位向上と、協力関係を通しての地域の権限の向上
  6.研究の可能性を広げ、推進すること

出典

WHO. Tuberculosis. Fact sheet N°104. Updated March 2015.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs104/en/index.html