2015年のニュース

ラッサ熱について (ファクトシート)

2015年3月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

ラッサ熱は、西アフリカで発生している1週から4週にわたり出血を伴う急性ウイルス性疾患です。
ラッサ・ウイルスは、げっ歯類の尿や糞でウイルス汚染された食べ物や日用品に触ることで人に感染します。
人から人への感染、検査室での感染が、特に、十分な感染予防と制御への対策を欠いた病院で頻繁に発生しています。
ラッサ熱はベナン(2014年11月に初めて診断された国)で風土病として知られています。ギニア、リベリア、シエラレオネとナイジェリアの一部、おそらくはその他の西アフリカの国々でも同様に、(この病気が)存在しています。
ラッサ熱全体での致死率は1%です。重症のラッサ熱入院患者で観察された致死率は15%です。
水分補給と症状の軽減による早くからの対症療法は生存率を改善します。

背景

 この病気は、1950年代に最初に報告されていたものの、ラッサ熱を起こす原因がウイルスであることは1969年まで確認されませんでした。ウイルスはアレナウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスです。

 ラッサ・ウイルスに感染した人の約80%は症状を発現しません。5人のうちひとりが重症となり、ウイルスが肝臓、脾臓、腎臓のようないくつもの臓器を侵します。

 ラッサ熱は人畜共通感染症で、人は感染した動物との接触機会があったことを示唆します。ラッサ・ウイルスを保有する動物もしくは宿主は、一般にマストミスラット(多産のネズミの意味)として知られるマストミス属のげっ歯類です。ラッサ・ウイルスに感染したマストミスラットは発病しませんが、尿や糞でウイルスをばらまくことができます。

 この疾患の臨床経過は非常に多彩です。そのため、感染者の中からこの病気を発見することは困難です。しかし、地域生活の中でこの疾患が確認された時には、速やかな患者隔離、感染からの適切な保護と感染予防措置の実行、厳重な接触者の追跡が、流行の阻止を可能にします。

ラッサ熱の症状

 ラッサ熱の潜伏期間は6-21日間です。この疾患が症状を現わすときには、通常ゆっくりと、発熱、脱力感、易疲労感で始まります。数日後には、頭痛、咽頭痛、筋肉痛、胸痛、嘔気、嘔吐、下痢、咳および腹痛が続きます。重症例になると、顔の腫れ、胸水の貯留、口、鼻、陰部または消化管からの出血、低血圧へと進行します。タンパク尿が出ることもあります。その後の段階では、ショック、痙攣発作、振戦、見当識障害および昏睡がみられます。生存者の中で難聴が25%で発生します。これらの患者の半数は1-3ヶ月後に聴力の一部は回復します。回復中に一時的な脱毛や歩行障害が現れることがあります。

 通常、致死的な症例では発症から14日以内に死に至ります。この疾患は、特に妊娠後期に重症化することが多く、この時期の妊婦患者の80%以上で妊婦死亡および/または胎児死亡が発生します。

感染経路

 通常、人は感染したマストミスラットの尿または糞との接触によってラッサ・ウイルスに感染します。ラッサ・ウイルスは、ラッサ熱感染者の血液、尿、糞便、その他分泌物と直接に接触することでも、人から人へと拡がります。人と人での間での飛沫感染を裏付ける疫学的証拠はありません。人から人への感染は、ウイルスが地域社会や針の再使用による汚染された医療機器で感染拡大するような医療施設で発生します。ラッサ・ウイルスは性行為でも感染することが報告されています。

 ラッサ熱は、男女ともすべての年齢層で発生します。最もリスクが高い人々は、日常的にマストミスが発見される農村地域に住む人、特に衛生設備が不十分で密集した生活条件にある生活地域に住む人です。医療従事者は、適切な防護仕切りを使った看護や感染予防措置の実行を欠いた環境でラッサ熱患者の世話をするならば、危険性は高くなります。

診断

 ラッサ熱の症状は非常に多彩で特徴がないので、臨床診断、特に臨床経過の初期段階での診断は、しばしば困難なものとなります。ラッサ熱は、エボラ出血熱のようなその他のウイルス性出血熱と区別することができません。発熱を起こすマラリア、細菌性赤痢、腸チフス、黄熱病などのその他多くの疾患との鑑別も困難です。

 確定診断には、専門の検査室でのみ使用が許可される検査が必要です。検査室での検体は非常に危険であり、細心の注意で取り扱う必要があります。ラッサ・ウイルス感染は、検査室で下記の診断法を用いたときのみ確定診断が可能です。

酵素結合免疫吸着法(ELISA)
抗原検出検査
リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法
培養細胞によるウイルス分離

治療とワクチン

 抗ウイルス薬リバビリンは、臨床経過の早い段階で投与されれば、ラッサ熱に対して有効なようです。ラッサ熱に対する暴露後予防薬としてのリバビリンの有効性を支持する証拠はありません。

 現在、ラッサ熱に対して有効なワクチンはありません。

感染の予防と制御

 ラッサ熱の予防は、家庭に侵入するげっ歯類を阻止するために、適切な「地域社会での衛生」を推進することに依存します。効果的な対策には、ネズミ対策容器での穀物やその他食材の保管、住居から遠く離れた場所でのごみの処分、きれいな家庭環境の維持、猫の飼育があります。マストミスは流行地域では非常に数が多いので、それらを完全に環境から排除することはできません。病人の世話をしている間は、家族は常に血液や体液との接触を避けるように注意を払う必要があります。

 予想される診断にかかわらず、医療施設では患者の世話をするときに、医療スタッフは常に標準的な感染予防・制御措置を取る必要があります。これらには、基本的な手洗いの衛生環境、呼吸器の衛生環境、個人用保護具の使用(飛沫や感染した他の物品との接触を断ち切るため)、安全な注射の実施や安全な埋葬の慣習などが含まれます。

 ラッサ熱が疑われた又は確定した患者を世話する医療従事者は、患者の血液や体液さらには衣類や寝具などのウイルスで汚染された表面物または物品との接触を避けるために、追加の感染予防・制御処置を取る必要があります。ラッサ熱患者(1メートル以内)に近づく場合、医療従事者は、顔の保護(顔面シールドまたは医療用マスクとゴーグル)、清潔で、長袖の滅菌までは不要のガウン、手袋を着用しなければなりません(清潔な手袋についてはいくつかの操作手順が必要)。

 検査室での検査技師には高いリスクがあります。ラッサ・ウイルス感染の研究調査のため人や動物から採取したサンプルは、訓練を受けたスタッフによって取り扱われ、設置基準を満たした検査室で手順にしたがって処理されるべきものです。

 稀なことですが、ラッサ熱が流行している地域からやって来た旅行者が、他国に疾患を感染輸出することがあります。マラリア、腸チフス、及びその他の多くの熱帯感染症の方がはるかに一般的ですが、ラッサ熱の診断は、西アフリカから帰国した発熱している患者、特にラッサ熱の風土病が知られている国で農村地域や病院で接触機会があった患者では、念頭に置かれるべきです。ラッサ熱が疑われる患者を診ている医療従事者は、速やかに各地および国の専門家に連絡し、助言を求め、検査室での検査を手配することをすべきです。

WHOの取り組み

 ギニア、リベリア、シエラレオネの各保健省、WHO、米国の外国災害援助事務局、国連、及びその他の支援者らは、マノ川同盟ラッサ熱ネットワークを設立するためにともに取り組んできました。計画は、国家の感染予防戦略を展開し、ラッサ熱やその他の危険性のある疾患の検査診断を向上させることに取り組む3か国を支援しています。支援には、検査診断の訓練、臨床の管理、および環境の予防処置が含まれています。さらに、ラッサ熱患者の治療に専用の新病棟が、欧州連合(EU)による援助でシエラレオネに建設中です。

出典

WHO. Lassa fever. Fact sheet N°179. Updated March 2015.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs179/en/