2015年のニュース

HIV/AIDSについて (ファクトシート)

2015年7月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

HIVは、依然として世界的における公衆衛生上の大きな問題で、これまでに3,400万人以上の生命を奪ってきました。2014年には、世界中で120[100~150]万人がHIVに関連した原因で死亡しています。
2014年末には、HIV感染者は世界全体で約3,690[3,430~4,140]万人となり、200[190~240]万人が新たにHIVに感染しました。
最も感染の多い地域はサハラ以南のアフリカで、2014年にはHIV感染者が2,580[2,400~2,870]万人になっています。また、サハラ以南のアフリカが世界全体で新たにHIVに感染した人の約70%を占めています。
HIVへの感染は、通常、HIV抗体の有無を検出する迅速診断検査(RDTs)で診断されます。ほとんどの場合、この検査は診断結果をその日のうち提供しています。検査した日に診断され、早期に診療と治療に入れることは重要なことです。
HIV感染症は完治できません。しかし、抗レトロウイルス薬(ARV)による有効な治療法でウイルスを抑制します。その結果、HIV感染者は健康的で生産性のある生活を楽しむことができます。
現在、自分の状態を知っているHIV感染者はたったの51%であると推定されています。2014年には、129の低所得国と中所得国の子どもと大人、約1億5000万人がHIV検査を受けました。
2014年に、世界で1,490万人が抗レトロウイルス療法(ART)を受けました。そのうちの1,350万人は低所得国と中所得国の患者です。ARTを受けている1,490万人の患者は、世界のHIV感染者のうちの40[37~45]%です。

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫系を標的とし、感染症やある種のがんに対する人々の免疫応答機能を低下させます。ウイルスは免疫細胞の機能を破壊し損傷を起こすことで、感染者を徐々に免疫不全にさせていきます。免疫機能は主にCD4細胞数で測られます。免疫不全になると、正常な免疫系をもった人ならば防御できる様々な感染症やその他の疾患の影響を受けやすくなります。

 HIV感染症が最も進行した段階がAIDS(後天性免疫不全症候群、エイズ)です。個人差がありますが、感染してから2年から15年でAIDSまで進行します。AIDSは、ある種のがん、感染症またはその他の重篤な臨床症状が発症することによって定義づけられています。

症状と所見

 HIVの症状は感染の段階によって異なります。HIV感染者は最初の数か月に最も強い感染力をもちますが、多くの人は進行した段階まで自分の状態に気づくことはありません。感染して数週間、感染者は、無症状のこともありますが、発熱、頭痛、発疹、咽頭痛などのインフルエンザ様症状を経験します。

 感染が進行し免疫機能が弱まってくると、感染者には、次第にリンパ節の腫張、体重減少、発熱、下痢、咳などの症状や所見が現れるようになります。治療をしなければ、感染者には、結核、クリプトコッカス髄膜炎といった重篤な疾患や、リンパ腫、カポジ肉腫といった癌腫、その他の疾患も生じます。

感染経路

 HIVは、感染者の血液、母乳、精液、膣分泌液など様々な体液を介して伝播します。人が、キス、抱擁、握手といった普段の日常生活での接触や、感染者が使用する物品、食品、水を分かち合うことで感染することはありません。

危険因子

 HIVに感染するリスクが高くなる行動様式や条件は、下記のとおりです。

コンドームを使用せずに肛門性交や膣性交をした場合
梅毒、ヘルペス、クラミジア、淋菌や細菌性膣炎など、他の性行為感染症に感染している場合
薬物を注射する際に、汚染された針、シリンジ、その他の注射のときの付属器具や薬液を使い回す場合
安全が不確かな注射、輸血、滅菌処理されていない医療用具での切開や(ピアスの)貫通などの医療行為を受けた場合
医療従事者の間を含む、偶発的な針刺し事故を経験した場合

診断

 迅速診断検査や酵素抗体法といった血清検査は、HIV-1/2の抗体やHIVのp24抗原の有無を検知します。このような検査は、検定が行われた検査の手順に則った検査計画の中で使用される場合には、高い精度でHIV感染を検出することができます。血清検査は、HIV自体を直接検出するのではなく、外部からの病原体を排除する感染者の免疫系の一部として産生される抗体を検出していることに注意することが重要です。

 ほとんどの感染者は、28日以内でHIV抗体を産生します。そのため、感染早期には、所謂「ウィンドウ・ピリオド」と呼ばれる期間があり、抗体が検出されない可能性があります。HIVの感染伝播は全ての段階で起こりえますが、この感染初期に最も強力な感染力を示します。

 あらゆる潜在的な検査エラーや報告エラーを排除し、診療もしくは治療に入る前に初期段階で陽性の診断を受けられるよう、全ての人が同じように再テストを受けることが勧められます。

HIV検査

 HIV検査は自発的に行われるべきものであり、検査を拒否する権利が認められなければなりません。医療従事者、保健当局、パートナーや家族が、検査を義務づけたり、強制したりすることは、健全な公衆衛生の運用を妨げ、人権を侵害するものであり、許されることではありません。

 一部の国では追加の選択肢として自己テストの導入または検討を行っています。HIVの自己テストは、自分のHIV感染の有無を知りたい人が検体を採取し、それによってテストを行い、個人的に検査の結果を判断する方法です。HIV自己テストは、確定診断ではありません。これは、国で定められた検査手順に従って医療者が行うさらなる検査を必要とする単なる初期診断検査にすぎません。

 全てのHIV検査への取り組みには、WHOが推奨する5つのC(five C's)を含んでいなければなりません。5つのCとは、インフォームド・コンセント(informed Consent)、機密性の保持(Confidentiality)、カウンセリング(Counselling)、正確な検査結果(Correct test results)、ケア、治療、その他のサービスとの連携(linkage to Care , treatment and other services)です。

予防

 人は、危険な要因に接触する機会を制限することによってHIVの感染リスクを下げることができます。HIV予防のための要点は以下のとおりです。これらは組み合わせて実行されることもあります。

1. 男性と女性のコンドーム使用
 膣性交や肛門性交を行う際には、男性用、女性用コンドームを首尾一貫して正しく使用することでHIVを含む性行為感染症(sexually transmitted infections: STIs)の拡散に対して身を守ることを可能にします。男性用ラテックスコンドームの使用は、HIVや他の性行為感染症の伝播に対して85%以上の予防効果があることが示されています。

2.HIVと性感染症の検査とカウンセリング
 あらゆる危険な要因に曝される人々には、HIVと他の性感染症の検査を受けることが強く勧められます。これは、遅れることなく自らの感染状態を理解し、必要となる予防や治療を受けることにつながります。WHOはパートナーやカップルにも検査を受けることを勧めています。

 結核はHIV感染者の間で最も頻繁に現れる疾患です。もし、発見されず、治療されなかったときには、生命に関わります。HIV感染者の間では、結核はHIV関連死の4人に1人が関係する主たる死亡原因です。結核を早期に発見し、結核治療とARTを速やかに結びつけることでこれらの死を防ぐことができます。HIV検査体制は結核検査を合わせて整備し、HIVおよび活動性結核があると診断された人が速やかにARTを実施できるようにすることが強く勧められます。

3.任意で行われる男性の包皮環状切除
 男性の包皮環状切除は、熟練した医療の専門家によって安全に行われた場合、男性におけるHIVの異性間感染のリスクを約60%低下させます。これは、HIVの有病率が高く、HIVが広く流行し、男性の包皮環状切除の実施率が低い一般的な公衆衛生の状況では、重要な介入手段です。

4.ARV(antiretroviral:抗レトロウイルス)薬を用いた予防
4.1予防としての抗レトロウイルス療法(ART
 2011年のある試験によれば、HIV陽性患者が有効性のあるARTレジメンを遵守すれば、感染していない性交渉のパートナーに感染させるリスクを96%下げられることが確認されました。WHOは、HIV陽性者とHIV陰性者のパートナーとのカップルには、CD4値にかかわらずHIV陽性患者へARTを実施することを勧めています。

4.2 HIV陰性のパートナーに対する暴露前予防(pre-exposure prophylaxis: PrEP)
 HIVの経口暴露前予防(PrEP)は、HIVの感染を防ぐためにHIV非感染者がARV薬を毎日服用することです。10を越える無作為化比較試験が、PrEPは、血液検査結果が異なる(HIV陽性者とHIV陰性者のパートナー)異性カップル、男性同性愛者、性転換した女性、ハイリスクの異性間カップル、薬物注射使用者においてHIV感染の減少に有効であることを示しました。

 2014年7月に、WHOは「カギとなる集団のためのHIV予防、診断、治療および診療の強化ガイドライン」を発行しました。その中で、男性同性愛者に対する包括的なHIV予防対策の中でPrEPをHIV予防への追加選択肢として推奨しました。

4.3 HIVに対する暴露後予防 (pre-exposure prophylaxis:PEP)
 暴露後予防(post-exposure prophylaxis :PEP)は、感染を予防するためにHIVに暴露してから72時間以内にARV薬を使用することです。PEPには、カウンセリング、一次救急処置、HIV検査のほか、ARV薬の28日間投与と経過観察が含まれます。

 2014年12月に改定されたガイドラインでは、WHOは職業的な暴露と非職業的な暴露の両方そして成人と小児の両方に対してPEPの使用を推奨しています。新しい推奨では、既に治療で使われているARV薬を用いたより使いやすいレジメンを提示しています。新しいガイドラインの実効性は、医療従事者、予防が行われないままの性行為で受けた暴露や性的暴行のように、偶発的にHIVに曝された人をHIVから予防するために、処方をより簡単に、治療をより良好に継続させ、PEPを完全に行う割合を上げるものです。

5. 注射薬物使用者での感染の軽減
 注射薬物の使用者は、毎回、針とシリンジ等が滅菌された注射器具を使用することで、HIVの感染から予防することができます。HIVの予防と治療への介入の包括的な対応には、以下のことが含まれます。

針と注射器への対応計画
オピオイド依存患者へのオピオイド補充療法や、その他の根拠に基づいた薬物依存症の治療
HIVの検査とカウンセリング
HIVの治療とケア
コンドームの使用
性行為感染症、結核、ウイルス性肝炎の感染管理

6.母子感染の排除(Elimination of mother-to-child transmission of HIV: eMTCT)
 HIV陽性の母親から子どもへの感染は、妊娠中、分娩・出産時、授乳時に起こり、垂直感染または母子感染と言われます。介入が行われない場合、HIVの母子感染率は15%から45%です。母親、小児ともに、感染が起こり得る全期間でARV薬を投与すれば、母子感染はほぼ防ぐことができます。

 WHOは、母子感染の予防のための様々な選択肢を推奨しています。その選択肢には、妊娠中、分娩中と産後に母子にARV薬を投与すること、または、CD4値にかかわらずHIV陽性の妊婦に対して生涯にわたり治療することが含まれます。

 2014年に、低所得国と中所得国でHIVに感染している推計150[130-160]万人の妊婦の73[68-79%]が、彼らの子どもへの感染防止に有効な抗レトロウイルス薬の投与を受けました。

治療

 HIVは、3種類以上のARV薬を併用する抗レトロウイルス療法(ART)で抑えることができます。ARTでは、HIV感染症を完全に治癒させることはできませんが、体内でのウイルスの複製を抑制し、免疫系を高め、再び感染症と戦う能力を再生することができます。

 2014年末時点で、世界で約1,490万人がARTを受けました。そのうちの約82万3000人が子どもです。

 2014年に、ARTを受けている人々の数が一年で190万人増えました。

 WHOはCD4細胞数が500個/mm3以下に低下したらARTを始めることを推奨しています。非HIV感染者を相手にもつカップルのHIV感染者、結核とHIVとの重複感染者、HIVと重度の慢性肝疾患のB型肝炎との重複感染者は、CD4細胞数に関係なく勧められています。同様に、5歳以下のHIV感染小児は全員にARTが勧められています。

WHOの対応

 世界がミレニアム開発目標の達成に向けて歩んでいる中で、WHOは2011年から2015年にHIV/AIDSに関する国際保健戦略を実行するために各国と協力して作業を進めています。WHOは、世界のHIV目標に向かって最も効果的に各国を支援するために、2014年-2015年における6つの運用目標を特定しました。

HIVの治療と予防のために抗レトロウイルス薬を戦略的に使用すること
小児のHIV撲滅と小児科治療への環境整備を拡大すること
鍵となる集団におけるHIVに対する公衆衛生上の防御領域の改善
HIVの予防、診断、治療、ケアにおけるさらなる技術革新
規模拡大のための効果的な情報戦略
HIVと関連する健康対策の成果との間のより強力なつながり

 WHOは、国連合同エイズ計画(the Joint United Nations Programme on AIDS : UNAIDS)の共同スポンサーです。UNAIDSの中で、WHOはHIVの治療や診療、HIVと結核の重複感染の優先分野を主導し、ユニセフ(国連児童基金)と共同でHIVの母子感染を撲滅するための活動を共同で行っています。

 現在、WHOは、2016-2021年のHIVに対する世界保健セクターの取り組みに対する進捗度管理に取り組んでいます。

出典

WHO, Fact sheet N°360
Updated July 2015
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs360/en/