2015年のニュース

A型肝炎について (ファクトシート)

2015年7月 WHO  (原文[英語]へのリンク)

要点

A型肝炎はウイルス性の肝疾患です。症状は軽症から重症まで幅があります。
A型肝炎はウイルスに汚染された食品や水を摂取したり、感染した人に直接接触したりすることで感染します。
A型肝炎はほとんど全ての人が回復します。しかし、極めて稀に劇症肝炎で死ぬことがあります。
A型肝炎のリスクは安全な水の不足や不十分な衛生環境に関連します。
流行は、爆発的に進展し、大きな経済損失を生じることがあります。
この疾患と戦うためには、衛生環境の改善とA型肝炎の予防接種が最も効果的な方法です。

 A型肝炎は、A型肝炎ウイルスによって起こる肝疾患です。このウイルスは、主に、感染したことのない(そして、予防接種を受けていない)人が、感染した人の便で汚染された食品や水を摂取することで感染します。この疾患は、安全な水の不足や、不十分な衛生環境、貧弱な個々人の衛生管理と密接に関係します。

 A型肝炎は、B型肝炎やC型肝炎とは異なり、慢性肝炎を起こすことはなく、死亡することは稀です。しかし、全身の衰弱症状や、劇症肝炎(急性肝不全)を起こすことがあり、この場合には死亡率が高くなります

 A型肝炎は、世界中で、散発的に発生し流行を起こしており、周期的に再燃する傾向があります。A型肝炎は食べ物で起こる感染症として、最も頻繁にみられる疾患のひとつです。汚染された食べ物や水に関連した流行が爆発的に発生することがあり、1988年には上海で約30万人の感染者が発生しました。A型肝炎ウイルスは環境中に存在し続け、細菌性の病原体を不活化または増殖抑制するために使われる食品生産の通常工程には抵抗を示します。

 この疾患は、地域社会に著しい経済的・社会的影響をもたらすことがあります。感染した人が回復し、仕事や学校に通い、日常生活ができるようになるまでには、数週間から数か月かかります。通常、ウイルスが検出された食品関連施設や地域の生産性への影響は相当に大きなものになります。

地理的分布

 A型肝炎感染の地理的分布は、高・中・低の3つの水準に分けることができます。

感染が高水準の地域
 衛生環境が極めて悪く、衛生習慣もよくない開発途上国では、小児のほとんど(90%)が10歳になるまでにA型肝炎に感染します。小児で感染した場合には、明らかな症状は現れません。通常、年齢の高い小児や成人は免疫力を持っているので、流行が起こることは稀です。このような地域での有症率は低く、流行の発生は稀です。

感染が中等度の水準の地域
 開発途上国のうち、経済成長の過渡期にある国で、衛生状態が変化しやすい地域では、しばしば小児が幼少期での感染を免れます。皮肉にも、こういった経済や衛生環境の改善が、より高い年齢層での感染しやすさとなり、青年や成人に感染を起こし、大流行が発生することがあります。

感染が低水準の地域
 衛生環境の良い先進国では、感染率は低くなります。疾患は、注射薬物使用者、男性同性愛者、ウイルスの蔓延地域に渡航した者、閉鎖的な宗教コミュニティのような孤立した集団などの、高リスクグループの青年や成人に発生する可能性があります。

感染経路

 A型肝炎ウイルスは、主に糞口感染で伝播します。即ち、感染していない人が、感染した人の便によって汚染された食べ物や水を摂取することで感染します。稀なことですが、水系汚染による大流行は、いつも下水による汚染や、水の不適切な処理に関連しています。

 人と人の日常での接触程度ではウイルスが広がることはありません。しかし、濃厚な身体接触では感染することがあります。

症状

 A型肝炎の潜伏期間は、通常14日から28日間です。

 A型肝炎の症状は、軽症から重症まで幅があり、発熱、倦怠感、食欲不振、下痢、悪心、腹部の不快感、褐色尿、黄疸(皮膚や眼球結膜の黄染)がみられます。感染した人のすべてが、これらすべての症状を発現するものではありません。

 成人は小児よりも所見や症状が現れ、年齢が高くなる程に、疾患の重症度と死亡率が高くなります。6歳未満の小児が感染した場合には、通常は顕著な症状が現れず、黄疸は10%のみです。しかし、年齢が上がるに連れて、通常、症状がより重症となり、70%を超える患者で黄疸が現れます。

リスクのある人

 A型肝炎のワクチン接種を受けたことがなく、過去に感染したことのない人は、誰もがA型肝炎に感染するリスクがあります。ウイルスが広範囲に存在する地域(蔓延地域)では、ほとんどの小児が早期にA型肝炎に感染しています。リスク要因には、次のようなものがあります。

不十分な衛生環境
安全な水の不足
注射薬物使用者
感染した人との同居生活
急性A型肝炎に感染している人の性的パートナー
予防接種を受けずに、ウイルスの蔓延地域に渡航する人

診断

 A型肝炎の患者は、臨床的には他のタイプの急性ウイルス性肝炎と区別できません。特異診断は血中特異抗体であるIgM-HAV抗体とIgG-HAV抗体の検出によって行われます。追加検査には、A型肝炎ウイルスRNAを検出する逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)がありますが、この分析には特殊な検査設備が必要になります。

治療

 A型肝炎に対する特別な治療法はありません。感染後の症状の回復は遅く、数週間から数か月かかることがあります。治療は、症状の緩和と、嘔吐や下痢で失われた体液の補正を含む栄養バランスの維持に合わせて行います。

予防

 この疾患と戦うには、衛生状態の改善とA型肝炎の予防接種が最も効果的な方法です。

 A型肝炎の感染拡大は、以下の方法で減らすことができます。

安全な飲用水の十分な供給
地下での下水の適切な処理
安全な水での日頃からの手洗いなど個々人の衛生習慣の実施

 国際的に、数種類のA型肝炎ワクチンが利用可能です。ウイルスから身を守る効力と副反応はすべてのワクチンで同様です。1歳未満の小児に承認されたワクチンはありません。

 ワクチンを1回接種後の1か月以内に、ほぼ100%の人でウイルスに対する抗体価が感染を防ぐレベルになります。また、ウイルスに暴露された後でも、ウイルスとの接触機会から2週間以内に1回接種を受けることができれば感染予防効果があります。しかし、ワクチン製造業者は、接種後5年から8年の長期予防効果を確実にするために2回接種を推奨しています。

 世界中で、何百万もの人々がワクチンを接種していますが、重篤な副反応は起こっていません。ワクチンは小児の定期予防接種の一部として接種でき、また、渡航者では他のワクチンと一緒に接種することができます。

予防接種を実施する努力

 A型肝炎の予防接種は、ウイルス性肝炎の予防と感染制御に対する総合的な計画の一部であるべきものです。大規模な予防接種計画を策定する際には、慎重に経済評価を行うべきで、衛生環境の改善や衛生習慣を向上させる健康教育など、予防接種に代わる予防方法や、追加の予防方法も検討すべきです。

 小児の定期予防接種にA型肝炎ワクチンを含めるかどうかは地域の状況によります。人口の中で感染しやすい人の割合やウイルスの暴露レベルが検討されるべきです。アルゼンチン、中国、イスラエル、トルコ、米国を含む数か国では、A型肝炎ワクチンは小児の定期予防接種に導入されました。

 多くの国では、不活化A型肝炎ワクチンの2回接種が行われています。しかし、国によっては、予防接種のスケジュールとして1回の不活化A型肝炎ワクチン接種の導入を検討する可能性もあります。いくつかの国では、以下のA型肝炎に感染するリスクの高い人々にもワクチン接種を勧めています。

ウイルスの蔓延地域への渡航者
男性同性愛者
慢性肝疾患を有する人(A型肝炎に感染すると、重篤な合併症のリスクが増加するため)

 流行対策のための予防接種について、A型肝炎ワクチンの接種の推奨は特定の地域でも実施すべきです。広範囲に予防接種キャンペーンを素早く実地することの実行性の検討が必要です。

 地域に広がった流行を制御するための予防接種は、小さな地域の中で、その活動が早期に開始され、多くの年齢層で高い接種率が達成できたときに、最も成功しています。予防接種を実施する努力は、衛生環境の改善、衛生習慣の向上、食品の安全向上のための健康教育で補われる必要があります。

WHOの対応

 WHOは、ウイルス性肝炎の予防と感染拡大を抑えるため、下記の分野で活動しています。

意識の向上、パートナーシップの促進、人的資源の動員
エビデンスに基づく政策と行動するためのデータの組織立て
感染経路の防止
スクリーニング、管理、治療の実行

 WHOは、ウイルス性肝炎に対する意識と理解の向上のため、毎年7月28日を世界肝炎デーと定めています。

出典

WHO Fact sheet N°328
Hepatitis A, Updated July 2015
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs328/en/