2015年のニュース

エボラ出血熱について (ファクトシート)

2015年8月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

Ebola virus disease(エボラ出血熱)は、人間では重症化し、しばしば死に至る病気です。
ウイルスは野生動物から人に感染し、生活環境下では人から人へも感染伝播します。
エボラ出血熱の死亡率は平均して50%前後です。過去の流行では、致死率は25%から90%の間で変動しています。
エボラ出血熱の最初の流行は、アフリカ中央部の熱帯雨林に近い僻村で発生しました。しかし、西アフリカでの最近の流行は僻村だけでなく主要都市でも発生しています。
地域社会の関わりが流行を制御するための鍵となります。流行の的確な制御は、患者の管理、患者の調査と接触者の追跡、対応能力をもった検査体制、安全な埋葬、社会資源の動員といった一連の組立てを構築することにかかっています。
補液による早期の支持療法、対症療法は生存率を向上させます。まだ、ウイルスを不活化し改善させるために承認された治療法はありません。しかし、薬物療法は開発の途上にあります。
現在、承認されたエボラのワクチンはありません。しかし、2種類の有望なワクチン候補が評価の段階にあります。

背景

 エボラウイルスは、治療をしなければ、しばしば死に至る急激かつ重篤な病態を引き起こします。エボラ出血熱は、1976年に初めて、スーダンのンザラとコンゴ民主共和国のヤンブクの2か所で同時期に発生しました。後者は、エボラ川の近くの村で発生したため、疾患名が川の名前にちなんで名づけられました。

 西アフリカで起きている現在の流行(2014年3月に初発例が確認されたもの)は、1976年にエボラウイルスが最初に確認されてから、最大かつ最も深刻なエボラ流行となっています。今回の流行は、患者、死亡者ともに、過去の流行を全て合わせた数を上回っています。流行は、ギニアで始まりシエラレオネとリベリアの国境を越え、(たった1人の旅行者から)空路でナイジェリアとアメリカ合衆国に拡がり、さらには、陸路で(1人の旅行者から)セネガルおよび(2人の旅行者から)マリへと拡がりました。

 最も深刻な感染伝播が生じているギニア、シエラレオネ、リベリアの国々は、公衆衛生環境がとても脆弱で、人的資源も医療設備も不足しており、最近、長期間の紛争および政情の不安定から脱したところです。WHO事務局長は、国際保健規約(IHR 2005)に基づき、(2014年)8月8日に西アフリカの流行に対して国際的な懸念となる公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。

 エボラウイルスが属するフィロウイルス科は、クウェバウイルス(Cuevavirus)属、マールブルグウイルス属(Marburgvirus)、エボラウイルス(Ebolavirus)属の3種の属から成ります。また、エボラウイルス属は、ザイール、ブンディブギョ、スーダン、レストン、タイフォレストの異なる5型が同定されています。ブンディブギョ、ザイール、スーダンの3種は、アフリカでの大流行を起こしてきました。2014年に西アフリカで流行を起こしているウイルスはザイール型に属します。

感染経路

 エボラウイルスの自然宿主はオオコウモリ科のフルーツコウモリと考えられています。エボラウイルスは、熱帯雨林で病気となった、または死亡したチンパンジー、ゴリラ、オオコウモリ、サル、森林に生息するレイヨウ、ヤマアラシといった感染動物の血液、分泌液、臓器、その他の体液を介して人が濃厚接触することで侵入します。

 その後、エボラウイルスは感染した人の血液、分泌液、臓器、体液など、また、これらに汚染された物の表面や日用品(ベッド、衣類など)を介して直接接触することで(皮膚の傷や粘膜を通して)人から人へと感染が拡がります。

 医療従事者は、エボラ出血熱の疑い患者または確定患者を治療する際に、しばしば感染しています。これは、感染予防対策が厳格に実施されていないときに、患者と濃厚接触したことで起きています。

 埋葬儀式で参列者が死者の体に直接触れることも、エボラの感染拡大の一因となりました。

 感染者は、血液がウイルスを含んでいる限り、感染性を保持しています。

性行為による感染伝播

 さらなる調査究データおよび研究が、性行為感染、特に時系列での精液中に存続し感染力を保ったウイルスを検出する割合に対して必要とされています。WHOは、現在のエビデンスに基づいて中間解析から以下のことを勧めています。

全てのエボラ出血熱からの回復者とその性的パートナーは、彼らの精液が2度の検査で陰性結果を得るまで安全な性交渉を行うように指導を受けるべきです。エボラ出血熱からの回復者にはコンドームが提供されるべきです。
エボラ出血熱からの回復者は、発症後、3か月で精液の検査を受けるべきです。その後、検査で陽性の者は、毎月、週1回の頻度で、2度のRT-PCRでの検査が陰性になるまで精液を検査すべきです。
エボラ出血熱からの回復者とそのパートナーには以下の何れかが必要です。
 ・全ての性交渉を控えること
 ・精液での2度の検査結果が陰性となるまで、コンドームを常に正しく使用し、安全な性交渉を行うこと

陰性の検査結果が得られれば、エボラ出血熱からの回復者はエボラウイルスからの感染を恐れることなく、通常の性交渉を再開することができます。
もし、エボラ出血熱からの回復者の精液が検査されていないならば、症状を発症後に6か月間は安全な性交渉を続けるべきです。この間隔は、エボラ出血熱からの回復者の精液でのエボラウイルスの検出率に追加情報が得られたときに、随時、調整される可能性があります。
精液でのエボラ検査で2度の陰性結果を得るときまで、エボラ出血熱からの回復者は、マスタベ-ション後も含めて、精液が身体のどこに付いたとしても、直ちにそして徹底的に石鹸と水を使って洗浄し、手と身体の清潔を保つべきです。この期間、使用されたコンドームは、精液との接触を避けるために、安全に取り付け、安全に取り外すべきです。
全てのエボラ出血熱からの回復者、そのパートナーおよび家族には敬意と品位と思いやりが示されるべきです。

症状と所見

 潜伏期間(感染から発症するまでの期間)は2日から21日です。症状が発現するまでは、その人は感染力をもちません。初期症状は、突然に襲われる発熱を伴う倦怠感、筋肉痛、頭痛、咽頭痛です。これらの症状に続いて、嘔吐、下痢、発疹、腎機能および肝機能の障害が起こり、しばしば内出血と外出血(歯肉出血や血性便)がみられます。検査所見では、白血球減少、血小板減少、肝酵素の上昇がみられます。

診断

 マラリア、腸チフス、髄膜炎などの感染症とエボラ出血熱との鑑別は困難です。エボラウイルス感染症による症状であることの確認は以下の検査で行います。

抗体捕捉のためのELISA法
抗原検出試験
血清中和試験
RT-PCR法
電子顕微鏡
細胞培養によるウイルス分離

 患者から採取された検体は、バイオハザードリスクが非常に高いものです。不活化処理していない検体を扱う検査室は最も厳しい生物学的に封鎖された条件下で取り扱われるべきものです。

治療とワクチン

 経口または点滴により支持的に行う補液療法、特異的な症状に対処する治療は生存率を向上させます。まだ、エボラ出血熱に対処できると証明された治療法はありません。しかし、血液製剤、免疫療法、薬物療法を含む幅広い有望な治療法が、現在、評価の段階にあります。承認されたワクチンはありませんが、2種類の有望なワクチンが臨床での安全性評価の段階にあります。

予防と感染制御

 流行の的確な制御は、患者の管理、患者の調査と接触者の追跡、対応能力をもった検査体制、安全な埋葬、社会資源の動員といった一連の組立てを構築することにかかっています。地域社会の関わりが流行を制御するための鍵となります。エボラ感染の危険因子に注意する意識を高め、個々人で対処できる予防を行うことが、人での感染を減らす効果的な対策となります。感染の危険性を低減するためのメッセージが、いくつかの要点としてまとめられています。

感染したオオコウモリ、サル/類人猿との接触、その生肉の摂取を原因とする、野生動物から人に感染する危険性を減らすこと:動物は、手袋やその他適切な防護服の下で処理することが必要です。動物精製品(血液と食肉)は食べる前に徹底して加熱調理する必要があります。

エボラ症状のある人、特に、感染者の体液との、直接または濃厚な接触による人から人への感染の危険性を減らすこと:自宅で病人を世話するときには、手袋と適切な個人用の防御具を着用することが必要です。家庭内で病人を世話した後と同様に、患者の見舞いで病院を訪れた後にも必ず手洗いを行うことが必要です。

起こりうる性行為感染のリスクを減らすこと:性行為感染のリスクが排除できないため、男女ともエボラから回復した者は少なくとも発症から3か月間はすべての性行為(肛門セックス、オーラルセックスを含む)を控えるべきです。もし、性交渉を控えることができないのであれば、男性用もしくは女性用のコンドームの使用が勧められます。体液への接触を避け、石鹸と水を使って洗浄することが勧められます。WHOは血液によるエボラウイルス検査で陰性の結果を得た回復期の男女に対して隔離することは勧めていません。

流行の抑制策:抑制策には、迅速かつ安全な死者の埋葬、エボラ感染者と接触した可能性のある人の特定、21日間の接触者の健康状態の監視、さらなる感染拡大を防ぐために病人から健康者を引き離すことの重要視、良好な衛生環境の重要視と清潔な環境の維持が含まれます。

医療機関での感染予防

 推定される診断名に関係なく、医療従事者は、患者を世話するとき、常に基本的な予防対策を講じることが必要です。これらには、基礎となる手指の衛生、清浄な空気の換気、個人用の防御具の使用(飛沫または感染物質などとの接触を防御するため)、安全な注射の実施、さらには安全な埋葬の実施が含まれます。

 エボラウイルスが疑われた、または確定された患者を世話する医療従事者は、患者の血液や体液との接触を防ぐために、追加の感染管理対策をとる必要があります。1m以内でエボラウイルス感染者と接するときには、医療従事者は顔面の防御(フェイス・シールド、医療用マスクとゴーグル)、滅菌は必要ないものの清潔な長袖のガウン、手袋(いろいろな処置を行うための滅菌手袋)をつける必要があります。

 検査施設の勤務者にも危険があります。エボラ感染の検査のために人や動物から採取された検体は、訓練を受けた職員が取り扱うべきであり、十分に設備が整った検査施設で処理すべきです。

WHOの取り組み

 WHOは、エボラ出血熱の調査を行い、感染制御の計画を展開するリスク国を支援することでエボラの流行を防ぐことを目的としています。下記の文書はエボラやマールブルグウイルスの流行を制御するための総合ガイダンスです。

 エボラやマールブルグウイルス病の流行:準備、警告、制御、および評価

 流行が発生したとき、WHOは、調査の支援、地域社会への参画、症例の管理、検査設備、接触者の追跡、感染管理、法的支援、安全な埋葬の実施への訓練や支援に取り組みます。

 WHOはエボラ感染予防と制御に関する詳細なアドバイスを作成しました。

 エボラに焦点を当てた医療施設における疑いおよび確定したフィロウイルス出血熱の患者をケアするための感染予防と制御のための指針

註:原文には過去に発生したエボラ流行の年表のリンクが提示されています。原文でお確かめください。

出典

WHO. Ebola virus disease. Fact sheet Number 103. Updated August 2015.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/