世界におけるインフルエンザの流行状況 (更新20)

2015年10月19日 WHO (原文[英語]へのリンク[PDF形式:486KB]

要約

地球全体で見ると、総じてインフルエンザの活動は両半球ともに下がるか、低下した状態でした。わずかな国でのみ呼吸器疾患のレベルの上昇が報告されています。

  • 北半球では、インフルエンザの活動は散発的な検出だけでオフシーズンの低いレベルが続いています。アメリカ合衆国では、RSウイルスの活動の高まりが報告されました。
  • アフリカの国からは、インフルエンザの検出はほとんど報告されていません。アフリカ東部と西部でインフルエンザの活動が報告された国では、主にインフルエンザA型が占めていました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域、中米、カリブ地域では、インフルエンザの活動は低いレベルに留まっていました。例外的にキューバでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とRSウイルスが関係し、依然としてたくさんの重症急性呼吸器感染症(SARI)が報告されています。コロンビアでは、この数週間で急性呼吸器疾患の活動が下がり始めました。しかし、RSウイルスの活動は前年と比べて高い状態です。
  • アジア熱帯地域では、全体として南アジアと東南アジアの国々でインフルエンザの活動は低い状態にあると報告されました。例外的に、インドではインフルエンザA(H1N1)pdm09による活動の高まりが、ラオスではインフルエンザA(H3N2)による活動の高まりが、続いていると報告されています。中国南部では、インフルエンザの活動が低下してきました。
  • 南米温帯地域では、RSウイルスの活動が7月初めに、インフルエンザウイルスの活動が8月終わりにピークを迎えた後、この数週間、呼吸器系ウイルスの活動が下がってきました。チリでは、通常の上昇傾向よりも遅れて8月から9月の初めにインフルエンザの活動がピークを迎えましたが、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動はA(H1N1)pdm09とRSウイルスの検出数の減少に伴い低下してきました。
  • 南アフリカでは、インフルエンザシーズンが9月中旬までに終わり、この数週間はインフルエンザBウイルスだけが散発的に検出されました。インフルエンザ様疾患(ILI)とRSウイルスも低い状態でした。
  • オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザの活動が8月中旬にピークを迎えた後、下がり続けています。最近は主にインフルエンザBウイルスが検出されていました。ニュージーランドでは、まだインフルエンザ様疾患(ILI)の活動がシーズンの注意レベルを上回っています。
  • 2015年9月21日から10月4日までのデータが、FluNet(協定世界時間2015年10月1日 12:17:00現在)に基づき、81の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から集められています。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、49,103本を超える検体が検査されました。インフルエンザウイルスが陽性となった検体は2,240本で、このうち1,495検体(66.7%)がインフルエンザA型、745検体(33.3%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、350検体(29.8%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、824検体(70.2%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、138検体(66.7%)がB-山形系統で、69検体(33.3%)がB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米
北半球の国々では、インフルエンザの活動はオフシーズンの低いレベルにあります。カナダでは散発的にインフルエンザA(H3N2)ウイルスが検出され、アメリカ合衆国ではRSウイルスの活動が高まってきました。

ヨーロッパ
インフルエンザの活動は、散発的にインフルエンザが検出されるだけのオフシーズンのレベルであり、低い状態です。

熱帯地域

中米、カリブ海、南米の熱帯地域
カリブ海、中米、南米熱帯地域の国々は、総じてこの期間にインフルエンザの活動が低いか下がりつつあることを報告しました。キューバでは、例外的に、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動とRSウイルスの検出の増加に伴い、たくさんの重症急性呼吸器感染症(SARI)患者が報告され続けています。南米の熱帯地域の国々ではインフルエンザウイルスの検出数は低い状態ですが、一方で、コロンビアではRSウイルスの活動が高まりを維持しているために、急性呼吸器疾患(ARI)の活動が僅かに上昇しています。この数週間、コロンビアのARIの活動が昨年よりも下回り始めました。

アフリカ熱帯地域
アフリカ東部では、インフルエンザの活動を報告している国は僅かしかありません。主にインフルエンザA(H1N1)pdm09が報告されています。

アフリカ西部では、コートジボワールとガーナでインフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)およびインフルエンザBのウイルス検出が報告されました。

アジア熱帯地域
アジア南部の期間の報告では、全体的にインフルエンザの活動レベルが下がるか低い状態にありました。

インドでは、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスによる活動の高まりが続いています。

香港では、インフルエンザの活動は低い状態でした。中国南部では、活動は下がる傾向でした。主にインフルエンザA(H3N2)が検出されています。

東南アジアでは、ラオスでインフルエンザA(H3N2)ウイルスによるインフルエンザの活動の高まりが報告されました。数は少ないですが、僅かにインフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBも検出されました。

南半球の温帯地域

南米温帯地域
南米温帯地域では、インフルエンザもRSウイルスも検出数は少なく、全体としてインフルエンザ様疾患(ILI)と重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動は下がるか低い状態でした。今シーズンは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)の流行によるインフルエンザA型が優勢で、インフルエンザBの検出は僅かでした。

チリでは、8月から9月初旬までの急激な増加とピークを迎えた後、この数週間はインフルエンザ様疾患(ILI)の活動が低下してきました。重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動も8月に活動が高まっていたことに比べて、この数週間は下がってきたようでした。インフルエンザウイルスとRSウイルスの検出数が、この数週間で減ってきました。インフルエンザA(H1N1)pdm09とこれより少ない割合でインフルエンザA(H3N2)が検出されていると同時に、インフルエンザBの割合が増えてきました。

アフリカ南部
南アフリカでは、この数週間はインフルエンザBが散発的に検出されるだけで、インフルエンザシーズンの終わりが告げられました。最近は、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動とRSウイルスの活動も低くなりました。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア
現在も活動の高まりが続いているノーザンテリトリーを除いて、オーストラリアのほとんどでは、シーズンの活動はピークを迎えたとみられます。全体では、インフルエンザ様疾患(ILI)の報告が昨シーズンの傾向に沿って活動の低下を示してきました。この数週間、全国でのインフルエンザ関連の入院数と死亡数も減ってきました。検出されるインフルエンザウイルスの中では、インフルエンザA(H3N2)の流行を伴いながらインフルエンザBウイルスが優勢となっています。

ニュージーランドでは、インフルエンザの活動が優勢であったBウイルスによる8月の第2週のピークからこの数週間は下がってきました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動は、この数週間は昨シーズンと同様の動きを示し、流行シーズンの注意段階をやや上回るレベルにまで低下しました。

出典

WHO.Influenza Update number248. 19 October 2015
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2015_10_19_surveillance_update_248.pdf?ua=1[PDF形式:486KB]