ポリオウイルスの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第7回会議でのWHO声明

2015年11月26日 WHO (原文[英語]へのリンク

国際保健規約IHR(2005)に基づき、ポリオの国際的感染拡大に関する第7回緊急委員会が、事務局長の要請により招集され、2015年11月10日にテレビ会議によって開催されました。WHO事務局長は、2015年8月に開かれた緊急会議の中でワクチン由来のポリオウイルス(cVDPV)が伝播していることに懸念を示していました。このため、事務局長は、患者を以前より幅広い観点から見てcVDPVの感染発生を検討するための緊急委員会として今回の会議を招集しました。現在のポリオ撲滅の終盤において、ワクチン由来のポリオウイルスの伝播は、ポリオが終息したはずの国で定期予防接種の接種率が低いことからポリオウイルスに対する免疫能との間に著しいギャップがあることを反映しています。加えて、ワクチン由来のポリオウイルス2型(cVDPV2)を撲滅することは、2016年4月に経口ポリオワクチンから2型を世界同時に引き揚げさせることに先立ち、特に、緊急の課題となっています。

以下のIHR加盟国、アフガニスタンとパキスタンは、委員会が前回開催された2015年8月4日以降の一時勧告の実施状況の更新資料を提出しました。また、ワクチン由来のポリオウイルスの伝播に対策を立て、これを阻止するための報告書を提出した南スーダンを除き、以下のすべてのIHR加盟国、ナイジェリア、ギニア、マダガスカル、ウクライナ、ラオスが、それぞれの国の見解を述べるために委員会に招集されました。

野生型ポリオ

委員会は、ポリオの感染拡大が現在も国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)の状態にあることを宣言してから、事務局長によって発行された一時勧告に対する各国の取り組みが力強い進展をみせ、全体として野生型ポリオの国際的感染拡大を抑止していることを議題に上げました。委員会は、これらの達成を賞賛すべきこととして高く評価しました。委員会は、アフリカでは約12か月にわたって野生型ポリオウイルス患者が報告されていないことを取り上げて、また、ナイジェリアが野生型ポリオの感染伝播を終息させたことを取り上げ、アフリカの各国がポリオ撲滅に力強く努力していることを確認しました。委員会は、特に、パキスタンとアフガニスタンのポリオウイルスの流行阻止に向けた強い意志での努力とその強力な進展に気持ちを強くしました。

委員会は、しかしながら、パキスタンからフガニスタンにかけて、2015年7月と8月に発生した新たに記された感染輸出により、野生型ポリオウイルスの国際的拡大は現在も続いていることを議題に上げました。アフガニスタンの患者2人から見つかったポリオウイルスの分離株は、現在、アフガニスタンで見つかっているものよりも、最近になってパキスタンで伝播しているウイルス株の遺伝子配列に近いものでした。この患者の両方ともがパキスタンと国境を接するNangarhar(ナンガハール)州Achin地区で発生しました。アフガニスタンからパキスタンへの新たな感染輸出はなかったものの、特に国境に近いアフガニスタンの東部の出入りが困難な一部地域では、リスクが存在し感染伝播が続いています。

委員会は、歴史的に、パキスタンとアフガニスタンは大きな共通のポリオウイルス感染伝播地帯となっていたものの、最近の2国間の感染拡大はそれぞれの国の持続的な感染伝播による個別の地域から発生していることを議題に上げました。かつてポリオが流行した地域での経験を踏まえれば、このような地帯での強力な感染予防活動には、こういった国境を越える感染伝播を遮断することが必要となります。委員会は、IHRの下で、この加盟国2か国間でのポリオの感染拡大が引き続き国際的な拡大となっていることも強調しました。委員会は、国境において協力体制を敷くことの努力を評価しながらも、世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)の独立監視委員会(IMB)の勧告を議題に上げ、これに同意しました。独立監視委員会(IMB)は、GPEIの加盟国に対し、パキスタンとアフガニスタンの政府が国境を越えたポリオの予防対策と感染管理の意識を高めるためには、共同で(これに)取り組み、計画を具体化するための支援を行う必要があると勧告しています。委員会は、現在、カブール国際空港でアフガニスタン人すべての年齢の国際旅行者を対象に、一時勧告が実施​​されていることに満足の意を表しました。

委員会は、現在も感染が流行しやすい地域があり、世界では紛争や政情不安、現在も基盤の弱い予防接種計画に関連した予防接種率の低さにより免疫応答が不十分な人々がいることを議題に取り上げました。このような感染が流行しやすい地域には、中東、アフリカの角における国々、アフリカ中央部、ヨーロッパの一部があります。公衆衛生環境が破壊され緊急事態で人為的に複雑な環境の中にポリオウイルスが再び持ち込まれたときには、これまでに苦労して積み重ねてきた成果が一瞬にして失われる可能性があります。中東を渡ってくる、そしてアフガニスタンやパキスタンからの大規模な人口の移動は、ポリオの国際的な拡大への高いリスクをもたらします。ポリオの予防ワクチンを接種していない移民や難民のリスクとともに、ヨーロッパ、中東、アフリカには、ワクチンの接種機会を逃した、又は免疫応答が不十分な人々にもリスクがあります。推定で300-400万人が、トルコ、レバノン、ヨルダンに移り住み、ヨーロッパへの大量移民の中心地となっています。

ワクチン由来のポリオウイルス

現在、WHOが把握する3つの地域でのワクチン由来のポリオウイルス(cVDPV)の感染発生は、感染の影響を受けた国における定期予防接種計画に存在する著しいギャップがポリオの感染が発生しやすい大きなポケットとなっていることを示しています。2015年には、5つの地域でワクチン由来のポリオウイルスの感染発生がありました。3つの地域(ウクライナ、マダガスカル、ラオス)でcVDPV1型が、2つの地域(ナイジェリア、ギニア)でcVDPV2型が発生しています。さらに、紛争状態にある南スーダンのVDPV2型の追加患者が懸念されます。

2014年から2015年にかけてcVDPVの国際的な感染輸出はありません。それでも、過去には少なくとも5つのcVDPVの国際的な感染輸出の発生事例が記録されています。すべてはcVDPV2型によるものです。歴史的に、国際的にcVDPVが拡がる総合的なリスクは野生型ポリオウイルスよりも低いとは見られていますが、cVDPVを管理する十分な対策を怠れば、そのリスクが増す可能性はあります。

委員会は、ウクライナとマダガスカルで初期対応が遅れたことに懸念を持っていました。しかし、両国とも、対応が改善されていることに安堵もしました。両国ともに、補完される予防接種活動(SIA)の質の向上に、さらなる努力が必要とされています。委員会は、ウクライナとラオスでは、ワクチン接種への躊躇を克服するために、対象となる地域での意思伝達と地域の強力な活動への後押しが必要であったこと、GPEIは意思疎通のために適切な手段の考えと資料の作成を支援する必要があることを、議題に取り上げました。さらに、エボラの流行によって健康システムが崩壊したギニアと近隣のリベリアやシエラレオネにおける予防接種率と急性弛緩性麻痺(AFP)調査活動の大幅な低下はcVDPVが伝播するさらなるリスクをもたらしており、委員会は、ギニアでのcVDPVの感染発生対策への支援を強化するために国際的支援への参加を促しています。AFP患者からの検体の検査体制は、直ちに復旧が図られる必要があり、そのためにエボラの感染の影響を受けた3か国では調査活動と予防接種のためシステム全体ができるだけ早く強化される必要があります。委員会は、ポリオ撲滅が世界で確認されるまで、政治と市民が確固たる意思で共に参加できるように計画の質を維持することが重要であることを強調しました。

国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に対する結論

委員会は、ポリオの国際的な感染拡大が、現在も国際的な懸念に関する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)にあることに全会一致で合意し、修正のとおり、さらに3か月間一時勧告を延長することを勧告しました。委員会は、この結論に達する中で以下の要点について議論しています。

2015年もパキスタンとアフガニスタンでは野生型ポリオウイルスの国際的な感染拡大が続いていること

  • 世界で最も深刻ではあるが、ワクチンで予防が可能な疾患の一つを地球上から撲滅することに失敗したときに発生するリスクと結果としての費用
  • .野生型ポリオウイルスに対して予防接種とサーベイランスを向上させ、国際協調の下に対策を続けることの必要性、国際的な感染拡大の阻止および新たな感染リスクの軽減
  • 紛争や複雑な緊急事態によって予防接種体制の弱体化や崩壊が生じた国が増えることで、さらに国際的な感染が拡大することがもたらす深刻な社会的影響の重大性。これらの不安定な地域の人々はポリオに集団感染しやすくなっています。感染しやすい状態での感染発生は感染制御が極めて困難で、最終局面で世界からポリオを撲滅することの完結を脅かします。
  • ポリオの国際的な感染拡大は国境を越えて発生することが多いことから、地域での感染対策の推進と国境での協力体制の強化が重要であること。その間に、ポリオの感染伝播が活発な地帯から遠隔地に国際的に感染拡大するリスクがあることを認識すること
  • さらに、ワクチン由来のポリオウイルスに関して以下の要点について議論しています。
    • cVDPVsは国際的な拡大に対するリスクを有しており、適切な措置と緊急の対策を講じなければ、特に、既に述べられたような感染しやすい人々を脅かすこと。
    • ワクチン由来のポリオウイルス(VDPV)が出現・伝播しているWHOが把握する3つの地域でポリオ撲滅の終盤の重要な時に、地域の人々の免疫応答には大きなギャップがあり、これが世界でのポリオ撲滅を成功裡に完結することへの脅威となっていることの強調。
    • 2016年4月に2型の経口ポリオワクチンを世界同時に撤退させることに先立ち、ワクチン由来のポリオウイルス2型(cVDPV2)を撲滅することが特に緊急性が高いこと

リスクの分類

委員会は、リスク分類に基づいて、野生型ポリオウイルスとワクチン由来のポリオウイルスの国際的拡大のリスクを軽減することを目的とした以下の助言を事務局長に提出しました。

野生型ポリオウイルス

  • 現在、野生型ポリオウイルスを感染輸出している国
  • 野生型ポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国
  • もはや野生型ポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国

ワクチン由来のポリオウイルス

  • 現在、ワクチン由来のポリオウイルスを感染輸出している国
  • ワクチン由来のポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国
  • もはやワクチン由来のポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国

委員会は、新たな感染輸出の検出に対する期間と野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来のポリオウイルスの新たな患者または環境分離株の検出に対する期間の以下の基準での評価に更新し、適用しました。

もはや感染輸出のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの感染輸出の検出がない)国

  • ポリオウイルス感染者:最新の感染輸出による最初の症例が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月、もしくは、最新の感染輸入により発生した直近の患者から12か月以内に発症し報告された急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対し検査され、新たに感染輸入された野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、最初の患者から12か月以内に集められた環境サンプルも陰性となり、何れもが続いているとき。
  • 感染輸出された野生型ポリオウイルスの環境下からの分離:新たに感染輸出を受けた国の環境下での最初の陽性検体の採取に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。

もはや感染のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの検出のない)国

  • ポリオウイルス感染者:最新の患者が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。もしくは、直近の患者から12か月以内に発症した急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対して検査され、野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、直近の患者から12か月以内に集められた環境サンプルが陰性となり、何れもが続いているとき。
  • (野生型ポリオウイルス患者の発生がない)野生型ポリオウイルスの環境下からの分離:最新の環境下で陽性検体が採取された日に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。

一時勧告について

現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国
現在の対象は、パキスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2015年8月27日)とアフガニスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2015年6月6日)です。

感染輸出している国には、以下の行動の実行が求められます。

  • もしまだならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急課題が継続された状態にあることを宣言すべきです。
  • 全ての年齢での、全ての住民と4週間以上の長期滞在者は国際渡航の12か月前から4週間前までに1回のポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けていることを確認すべきです
  • 4週間以内に急な旅行を行う人々で、12か月前から4週間前までにポリオ生ワクチンもしくは不活化ワクチンを接種していない人は、出発までに1度はポリオワクチンを接種していることを確認すべきです。これでも、有益性が上回ります。特に、これは頻繁に旅行する人に当てはまります。
  • そのような渡航者には、IHR(2005)別添6で明記された国際予防接種証明書がポリオワクチンの接種記録としてまた接種の証明書として発行されていることを確認すべきです。
  • 適切なポリオ予防接種の書類を欠いたままではいかなる住民も海外渡航を出発の時点で制限すべきです。これらの勧告は、渡航の手段(例えば、陸、空、海)に関係なく、すべての出発地から海外渡航する者に適用されるべきです。
  • パキスタンとアフガニスタンとの国境を越える人々の移動は野生型ポリオウイルスの感染輸出を助長し続けることを認識しておくべきです。両国は、実質的には、国境を越える渡航者とハイリスクの国境に住む人々に対してワクチン接種率を高めるために、国、地域、地方レベルで協力体制を確実に向上させる国境での努力をさらに強化させる必要があります。両国は長年にわたり主要な国境検問において永続的な予防接種チームを維持してきました。国境での努力の協調体制の改善には、より密接な管理、国境通過点での接種ワクチンの品質の監視とともに、国境を越えた後にワクチンを接種していないと識別される渡航者の割合を追跡することを組み入れる必要があります。
  • これらの対策は以下の基準が達成されるまで継続されるべきです。(i)新たな感染輸出がなく、少なくとも6か月を経過すること、(ii)すべての感染地域やハイリスク地域で質の高い撲滅活動が完全に実施されたことの証拠となる書類を提出すること、そのような書類が提出できない場合には、その国が"もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
  • 渡航が制限された住民の数とワクチンを接種し出発の地点で適切な予防接種の書類を提供した渡航者の数を含め、海外渡航での月別実施件数に関する一時勧告の報告書を事務局長に引き続き提供することが求められています。

野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国
現在の対象は、ナイジェリア(6か月に亘り如何なるワクチン由来ポリオウイルスも検出していない)と、ギニア、マダガスカル、ウクライナ、ラオスです。

ワクチン由来ポリオウイルスの発生がある国における発症者数及び発症日

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。

  • もしまだならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝染の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われているならば、この緊急課題が継続されていることを宣言することが必要です。
  • 全ての住民と4週間以上の長期滞在者は海外渡航の12か月前から4週間前までに1度ポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けることを推奨すべきです。4週間以内に急な旅行を行う人々には、出発までに1度はポリオワクチンを接種することを推奨すべきです。
  • そのようなワクチン接種を受けた渡航者はポリオワクチン接種状況の記録を適切な文書で所有していることを確認すべきです。
  • ポリオウイルスの早期発見のためのサーベイランスを強化するために、地域の協力体制と国境を越えた協力体制を強化し、実質的に難民、渡航者、国境を越える集団でのワクチン接種率を高めることが必要です。
  • これらの対策は以下のような基準が達成されるまで継続されるべきです:(i)少なくとも6か月間、国内のどのような検査検体からも野生型ポリオウイルスの感染伝播が検出さずに経過すること、(ii)すべての発生地域とハイリスク地域で質の高い撲滅活動が完全に実施された証拠文書を提出すること。これらの対応の証拠文書が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
  • 感染伝播の証拠なく12か月間を終えたときには、一時勧告を実行するために取られた対策の報告書を事務局長に提供することが求められています。

もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国
現在の対象は、ソマリア、エチオピア、シリア、イラク、イスラエル、赤道ギニア、カメルーン、南スーダンです。

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。

  • 地域の人々の免疫機能を押し上げるために、定期予防接種を早急に強化すること。
  • 検出されなかった野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスが伝播するリスク、特にリスクの高い移動民と感染しやすい人々の間でこれを軽減するために、調査活動の質を向上させること。
  • 移動民、国境を越える人々、国内避難民、難民やその他の感染しやすい人々へのワクチン接種を確実に実行する取り組みを強化すること。
  • 野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの速やかな発見とハイリスクの集団へのワクチン接種を確実に実行するために、地域協力と国境を越えた連携を強化すること。
  • 質の高い調査活動とワクチン接種活動の全てに適応性のある手順書を作成し、これらの対策を維持すること。
  • 野生型ポリオウイルスまたは新たに出現し伝播するワクチン由来ポリオウイルスの再侵入の証拠なく12か月を経過させたときには、一時勧告を実施するために講じた対策について事務局長に報告書を提出すること。

提出が必要とされる国と予定は以下のとおりです。

野生型ポリオウイルス及びワクチン由来ポリオウイルスに対し講じた対策について報告書の提出が必要とされる国並びに提出時期

全ての感染国に対する追加の検討事項

委員会は、IHRの下で一時勧告の実施計画の重要な時期にすべての感染国に最適なサポートを提供することを、強く世界の加盟国に求めました。委員会は、進展状況、国際的な感染拡大のリスクに対する定期的な議論と評価およびこれらのリスクを軽減するための対策が保証されるべきことを進言しました。

委員会は、ポリオ撲滅の終盤において、ワクチン由来ポリオウイルスに対する国民の正しい理解を確かなものにし、野生型ポリオウイルスとの違いを理解し、ポリオワクチンの有効性と安全性、並びに必要性への信頼を維持するために、世界の加盟国が適切な意思伝達のための手段や資料を作成し、ワクチン由来ポリオウイルスによる感染の影響を受けた国を支援することを進言しました。そうでなければ、ワクチン由来ポリオウイルスがポリオの感染のない国において定期予防接種計画に重大なギャップがあることを示していることの認識から、委員会は、定期予防接種においては、GAVI Alliance(ワクチンと予防接種のための世界同盟)のような世界の支援団体が、感染の影響を受けた国に対して早急に国の予防接種計画を改善するための支援を行う必要があることを進言しました。

委員会は、感染輸出をしている国が国際渡航を行う全ての人に対して出発の前にワクチンを接種することを求める一時勧告の実施に対して、公衆衛生上の利益と支出の分析を行うように事務局に要請しました。

野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの伝播、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、マダガスカル、ギニア、ウクライナ、ラオスによって作成された報告書、現在入手可能な情報に関する助言に基づいて、事務局長は、ワクチン由来ポリオウイルスに関することも含めて、ポリオウイルスに関する状況が国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)の状態にあると決定しました。事務局長は、「現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国」、「野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国」、そして「もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国」に対する委員会の一時勧告に署名しました。そして、事務局長はIHRの下で委員会によって改定されたものとして、2015年11月25日に効力を開始するポリオウイルスの国際的な拡大を軽減するための一時勧告を延長しました。

事務局長は、委員会委員とアドバイザーの助言に対して感謝を述べ、3か月後に現在の状況の再評価を行うことを要請しました。

出典

WHO.Media center news.WHO Statements. 26November2015
Statement on the Seventh IHR Emergency Committee meeting regarding the international spread of poliovirus.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2015/ihr-ec-poliovirus/en/