2016年のニュース

住血吸虫症について (ファクトシート)

2016年2月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

住血吸虫症は寄生虫によって起こる急性及び慢性疾患です。
人々は、寄生虫に汚染された水と日常的に接する機会のある農業活動、家事、職業や野外娯楽活動の中で感染します。
特に、学齢期の子どもは、衛生習慣が乏しく、汚染された水の中で泳いだり、釣りをしたりするなど、日常の遊びの中で感染する機会が高くなります。
住血吸虫症の感染制御は、定期的に大量の人々にプラジカンテルを投与することによって、疾患を減少させることに焦点が当てられています。また、飲料水や清潔な衛生環境の確保、淡水の貝の駆除など、さらに包括的なアプローチも感染伝播の減少を可能にすると考えられています。
2014年には、少なくとも推定で2.58億人が住血吸虫症の予防的治療を必要とすることが示されています。
2014年には、6,160万人以上が住血吸虫症の治療を受けたことが報告されました。

概要

 住血吸虫症は急性及び慢性の寄生虫疾患で、住血吸虫(Schistosoma)属の寄生虫が原因です。2014年には、少なくとも2億5,800万人に予防的治療を行う必要がありました。予防的な治療は数年に渡って繰り返され、罹患率を減らし、予防します。住血吸虫症の感染伝播は78か国で報告されています。しかし、大規模な住民や地域社会に狙いを定めた住血吸虫症に対する予防的治療が必要とされる国は、中等度から高度の感染伝播が起きている52か国だけです。

感染経路

 住血吸虫症に感染している人の排泄物には、水中で孵化する寄生虫卵が含まれており、淡水がその排泄物で汚染された時に感染伝播が起こります。

 人々は、汚染された水に触れている間に、淡水の貝から放出された寄生虫の幼虫が皮膚を突き破ることで(体内に)侵入し、感染します。

 体内では、住血吸虫の幼虫は成虫へと成長します。成虫は血管内に生息し、そこで雌は卵を放出します。その虫卵の一部は、便中や尿中に排泄され、寄生虫の生活環を維持します。また、残る虫卵は、体内組織に留まり、免疫反応を起こし、組織の障害を進行させます。

疫学

 住血吸虫症は、熱帯地域及び亜熱帯地域で、特に安全な飲料水が手に入らず清潔な衛生環境を得られない貧しい国々で多くみられます。住血吸虫症の治療が必要な人の少なくとも90%がアフリカに住んでいると見込まれています。

 住血吸虫症は、腸管に寄生する住血吸虫と泌尿生殖器に寄生する住血吸虫の2つに大別され、主に5種の住血吸虫が原因となります(表参照)。

 表:住血吸虫の種と地理的分布 

住血吸虫症.jpg

 住血吸虫症は、貧しい農村地域、特に農業、漁業従事者に感染しています。汚染された水で洗濯などの家事を行う女性にもリスクがあります。小児は、十分な衛生習慣がなく汚染された水に触れることで、特に感染を受けやすくなります。
 
 都市部への移住や集団の移動が、新たな地域に疾患を持ち込んでいます。人口の増加とそれに伴う電力と水の需要はしばしば開発計画に繋がり、環境変化が感染を伝播しやすくさせます。

 エコ・ツアーや"人里から外れた"旅行企画の増加に伴い、多くの旅行者が住血吸虫症に感染しています。時には、重症の急性感染を起こし、麻痺などの通常は現れることのない症状を起こす旅行者もいます。

 泌尿生殖器に寄生する住血吸虫症も、特に女性で、HIV感染のリスク・ファクターになると考えられています。

症状

 住血吸虫症の症状は、虫卵に対する生体の反応によって引き起こされます。

 腸管に寄生する住血吸虫症は、腹痛、下痢、血便を起こします。進行した患者では肝腫大がみられ、肝腫大はしばしば腹腔内に腹水が貯留し、腹部血管の圧を亢進します。そのような患者では、脾腫も起こることがあります。

 泌尿生殖器に寄生する住血吸虫症の古典的な症状は血尿です。進行した患者では、ときに膀胱尿管線維症や腎障害が現れます。後期の合併症として膀胱がんを発症することもあります。女性では、泌尿生殖器に寄生する住血吸虫症は、生殖器病変、膣出血、性交痛、外陰部結節を引き起こすことがあります。男性では、泌尿生殖器に寄生する住血吸虫症は、精嚢、前立腺、その他の臓器に病変を引き起こすことがあります。この疾患は、不妊など長期にわたる不可逆な結末をもたらすことがあります。

 住血吸虫症によって生じる経済と健康医療への影響はかなり大きく、この疾患は死に至らしめるよりも障害をもたらします。小児では、住血吸虫症は、貧血、発育障害、学習能力の減退を引き起こすことがありますが、通常これらの影響は治療により回復します。慢性の住血吸虫症では、就労能力に影響を与えることがあり、死亡することもあります。サハラ以南のアフリカでは、毎年、推定20万人以上が住血吸虫症で死亡しています。

診断

 住血吸虫症は、便または尿の検体中で虫卵を検出することで診断されます。血液や尿の検体から検出される抗体や抗原も感染の指標となります。

 泌尿生殖器に寄生する住血吸虫症には、ナイロン、紙、ポリカーボネイトのフィルターを使う濾過法が標準的な診断方法です。小児のビルハルツ住血吸虫感染では、ほぼ常に尿中の顕微鏡的血尿が認められ、これは化学試験紙で確認できます。

 消化管に寄生する住血吸虫症の虫卵は、Kato-Katz法として知られるグリセリンかスライドグラスに載せたメチレンブルーで染色したセロハンを使う方法で、糞便から発見することができます。

 住血吸虫症が常在していない地域や感染伝播の少ない地域では、感染の確認と完全な検査、治療と経過観察が必要とされる患者に、血清学的検査と免疫学的検査が有効です。

予防と感染制御

 住血吸虫症の感染予防と制御は、リスクのある集団への大規模な治療、安全な飲料水の利用環境の確保、衛生状況の改善、健康教育、淡水貝のコントロールによって行われます。

 WHOの住血吸虫症に対する感染制御戦略は、大規模な住民に行う(予防投与の)治療を通して対象となる集団を絞り込んで定期的にプラジカンテルを投与することで、疾患を減少させることに焦点が当てられています。これはリスクのあるすべての人に対する定期治療にも関係します。感染伝播が少なくなっている数か国では、疾患の撲滅を目標とする必要があります。

絞り込んだ治療の対象となる集団は、以下の通りです。
・常在地域の学齢期の子ども
・常在地域でリスクがあると考えられる成人、漁業従事者、農業従事者、灌漑作業従事者などの感染の危険のある水に接する仕事に従事する人、家事で感染の危険のある水に接する女性
・(罹患率の)高い常在地域に住むすべての人

 治療の頻度は学齢期の子どもの有病率によって決定されます。高度に感染が伝播している地域では、数年間は毎年繰り返し治療する必要があるかもしれません。感染に対する介入の効果をみるためにモニタリングは必須となります。

 目的は、疾患の減少にあります。リスクのある人を定期的に治療することで、軽度の症状を治し、感染した人が重症化して慢性の後期症状に進行することを防ぎます。しかし、住血吸虫症の感染制御に対する大きな障害は、プラジカンテルの確保が限られていることです。2014年のデータでは、治療を必要としている人の20.7%にしか(プラジカンテル)は届いていませんでした。

 プラジカンテルは、すべての住血吸虫に推奨される治療法です。有効で安全でしかも低価格です。小児期に治療が開始され治療が反復されれば、治療後に再感染が起きたとしても、重症化するリスクが少なくなり回復もします。

 住血吸虫症に対する感染制御は、過去40年以上に渡り、ブラジル、カンボジア、中国、エジプト、モーリシャス、イラン、サウジアラビアなど数か国で成功してきました。また、モロッコでも住血吸虫症の感染伝播が止まったことの根拠があります。ブルキナファソ、ニジェール、イエメンでは、数年以内に国レベルでの住血吸虫症の治療を拡大し、この疾患に衝撃を与えることができるまでになりました。いくつかの国で感染伝播の状況の評価が行われています。

 過去10年以上に渡り、リスクのある人々のほとんどが住むサハラ以南の数々の国では、治療キャンペーンが拡大されました。

WHOの取り組み

 住血吸虫症に対するWHOの活動は、顧みられない熱帯病を制御するための統合的アプローチの一部です。顧みられない熱帯病は、医学的には様々な疾患の総称ですが、貧困状況の中で存続し、集団発生を起こし、しばしば重複感染を起こす共通の特徴があります。

 WHOは、共同センターや、学術・研究組織、民間団体、非政府組織(NGO)、国際開発機関、その他国連の各機関といった支援組織と協議しながら、予防的化学療法の戦略を調整しています。また、WHOは、各国の制御計画で使用する技術的なガイドラインとツールを作成しています。

 WHOは、支援組織や民間団体と連携しながら、プラジカンテルの利用環境の拡大と、それを実現するための資金の拠出を、呼びかけています。毎年1億人以上の学齢期の子どもを治療するために、大量のプラジカンテルの提供が民間団体や開発支援組織から提供されています。

出典

WHO.Fact sheet N°115. Updated February 2016
Schistosomiasis
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs115/en/index.html