世界のインフルエンザ流行について(更新4)

2016年3月8日 WHO(原文[英語]へのリンク[PDF形式:750KB]

WHOから発表された2016年2月21日までのデータに基づくインスルエンザの活動状況です。

要約

世界では、主体は、インフルエンザA(H1N1)pdm09とするもののインフルエンザBの検出割合が増加していました。北半球では、インフルエンザの活動が高いレベルで続いていました。南半球と熱帯地域の国々では、全般的にインフルエンザの活動は低い状態でした。

  • ヨーロッパでは、いくつかの国で既にピークを迎えたようですが、高いレベルのインフルエンザの活動が報告され続けていました。インフルエンザA(H1N1)pdm09がウイルスのほとんどを占めましたが、インフルエンザBの検出割合も増加してきました。ロシアとウクライナでは、重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動の上昇が続いていました。しかし、先週と比べるとレベルは下がってきました。
  • 北米のカナダとアメリカ合衆国では、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09による、またメキシコではインフルエンザA(H3N2)による、インフルエンザの活動のさらなる高まりが報告されました。
  • アジア北部/温帯地域では、インフルエンザの活動が高い状態で留まっていました。しかし、いくつかの国では既にピークを迎えたようでした。
  • 西アジアでは、インフルエンザの活動が下がってきました。オマーンでは、低いレベルでインフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBウイルスの両方が続いていることが報告されました。
  • アフリカでは、アフリカ北部でインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動が報告されました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域、中米、カリブ海では、全体としてほとんどの国で、インフルエンザとその他の呼吸器系ウイルスの活動が低調でした。例外として、ジャマイカとプエルトリコでインフルエンザの活動が高まっていましたが、それも下がってきました。
  • 東南アジアでは、引き続きインフルエンザの活動は低い状態であることが報告されました。
  • 南半球温帯地域では、インフルエンザの活動は低い状態で、オフシーズンのレベルでした。
  • 2016年2月8日から2016年2月21日までのデータが、FluNet(協定世界時間2016年3月4日 07:20:12まで)に基づき、98の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から集められています。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、この間に158,158本を超える検体が検査されました。インフルエンザ・ウイルスが陽性となった検体は42,727本で、このうち33,745検体(79%)がインフルエンザA型、8,982検体(21%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、19,269検体(87,7%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、2,709検体(12.3%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、589検体(24.4%)がB-山形系統で、1,821検体(75.6%)がB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米

北米では、全体としては落ち着いた状態でした。しかし、インフルエンザとその他の呼吸器系ウイルスの活動レベルの増加が報告されました。

カナダでは、季節性インフルエンザの活動が高まり、地理的にも拡がってきました。主体はインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。陽性率は29%に上昇し、予想レベルを上回っていました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動も引き続き高く、20-64歳の年齢層で最高の割合を示しました。この間、若年および中年層の成人では、この間での入院率が増加していました。

アメリカ合衆国では、インフルエンザの活動が増加を続けていました。インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出の大部分を占め、次いでインフルエンザA(H3N2)、インフルエンザBの順でした。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が高まり、国内基準2.1%を超える3.2%と報告されました。RSウイルスが引き続き高いレベルで報告されました。肺炎とインフルエンザによる死亡率は7.1%に上昇しましたが、流行値閾値である7.2%を下回りました。

メキシコでは、インフルエンザA(H3N2)をともない、急性呼吸器感染症(ARI)が引き続き増加していました。

ヨーロッパ

ヨーロッパのほとんどの国では、インフルエンザの活動が高い状態でした。インフルエンザA(H1N1)pdm09が主体で、検出されるインフルエンザAの87%を占めました。定点観測の43%では、インフルエンザBウイルスを検出し、徐々にインフルエンザB に移行していることを示していました。15-64歳の年齢層で重症インフルエンザの増加が報告されました。ヨーロッパ北部(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)では、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが主体で、この数週間はインフルエンザBウイルスがこれに続き、増えてきました。ヨーロッパ南部では、全体としてインフルエンザが引き続き落ち着いたレベルにあることが報告されました。インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBウイルスの両方が流行していました。オーストリア、ベラルーシ、イタリア、ポーランド、スペインでは、高いレベルのインフルエンザの活動が報告されました。フランスでは、引き続きインフルエンザBウイルスが流行していました。ヨーロッパ東部では、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスによる高いレベルのインフルエンザの活動が続いていました。前回の報告よりもレベルが下がったものの、ロシアとウクライナでは、引き続き非常に高いインフルエンザの活動が報告されました。

西アジア

西アジアのバーレーン、ヨルダン、カタールでは、前週に見られたように、インフルエンザの活動が下がってきました。イスラエルとオマーンでは、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBの活動は持続していましたが、活動レベルは少しずつ下がってきました。

中央アジア

中央アジア全体を通して、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスにともなうインフルエンザの活動が続いていました。しかし、落ち着いてきました。カザフスタンでは、重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動が高まりを続けていました。

アジア北部/アジア温帯地域

アジア北部/温帯地域では、この地域でのインフルエンザの活動が再び報告されました。大半がインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスですが、インフルエンザBウイルスとインフルエンザA(H3N2)ウイルスの流行がこれに続いてきました。モンゴルでは、この間、インフルエンザBウイルスが優勢でした。韓国では、僅かにインフルエンザBウイルスの伝播をともないながらも、インフルエンザA(H1N1)pdm09がほとんどを占めるインフルエンザの活動が検出されてきました。この間、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が下がってきましたが、全体としては国の基準を上回っていました。中国北部では、インフルエンザの活動は、インフルエンザAとインフルエンザBウイルスがともに減少する傾向にありました。

熱帯地域

中米、カリブ海、南米の熱帯地域

南米熱帯地域の国々では、インフルエンザと呼吸器系ウイルスの活動は予想されたレベルで、引き続き低い状態にあると報告されました。エクアドルでは、RSウイルスの活動が増加傾向をともない高い状態にあると報告されました。中米とカリブ海地域では、インフルエンザもその他の呼吸器系ウイルスの活動も、全体的に下がっており、低いレベルにあることが報告されました。ジャマイカでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の検出数の増加が報告され、重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動は昨年と比べて高いレベルにありました。プエルトリコでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動レベルの高いことが報告されました。

アフリカ熱帯地域

全体的にアフリカ地域では、インフルエンザの活動が低いレベルで報告されました。例外的に、北アフリカ(アルジェリア、モロッコ、ニジェール)では、この間にインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動の高まりが報告されました。

アジア熱帯地域

中国南部では、前週にも見られたように、インフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢で、高い状態にありました。香港では、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBウイルスの同時流行による高まりが認められました。一般外来と特定の民間診療所医師にによるインフルエンザ様疾患(ILI)の活動の報告は、前週と比べて少なくなりました。東南アジア(シンガポール)では、インフルエンザAおよびBウイルスが同時に流行し、インフルエンザの活動が引き続き報告されました。タイでは、インフルエンザの活動が高い状態にあり、インフルエンザBウイルスが優勢でした。

南半球の温帯地域

南米温帯地域

南米温帯地域では、インフルエンザとその他の呼吸器系ウイルスの活動が低い状態でした。重症急性呼吸器感染症(SARI)のレベルも低く、予想の範囲内にありました。

アフリカ南部

南アフリカでは、インフルエンザのオフシーズンが続いています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアでは、引き続き、極小規模のインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動が報告されました。大洋州ソロモン諸島のミクロネシア連邦では、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動レベルが閾値を上回ったことが報告されました。

出典

WHO.Influenza Update number258. 8 March 2016
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2016_03_07_surveillance_update_258.pdf?ua=1[PDF形式:750KB]