2016年のニュース

黄熱について(ファクトシート) 

2016年3月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

黄熱は感染した蚊によって伝播される急性ウイルス性の出血性疾患です。"イエロー(黄色)"の名称は患者の一部で黄疸を来すことに由来します。
治療しなければ、重症者の50%が黄熱で死亡します。
最近の分析によると、年間推定8万4000-17万人が患者となり、6万人が亡くなっています。
このウイルスは、アフリカとラテンアメリカの熱帯地域で流行しており、両地域には9億人以上の住民がいます。
2006年の黄熱病イニシアチブに着手して以来、黄熱の患者数は過去10年で減少してきました。
黄熱に特異的な治療法はありません。治療は、患者の症状を緩和することを目指した、対症療法が行われます。
予防接種は、黄熱に対して最も重要な予防対策です。ワクチンは、安全かつ安価であり、極めて有効です。1回の黄熱ワクチン接種で黄熱に対し十分な免疫が獲得されれば、生涯免疫を維持することができ、追加接種(ブースター)を行う必要はありません。ワクチンにより接種した人の99%が30日以内に有効となる免疫を獲得できます。

所見と症状

 感染が成立すると、黄熱ウイルスは3-6日の潜伏期間に続いて、1期または2期の症状を起こします。第1期は「急性」期で、通常は、発熱、背部の顕著な筋肉痛、頭痛、悪寒、食欲減退、嘔気、嘔吐を起こします。ほとんどの患者は回復し、3-4日後には症状が治まります。

 しかし、15%程の患者は最初の寛解から24時間以内に、より毒性の強い第2期に移行します。再び高熱を起こし、いくつもの体内臓器が侵されます。患者は急速に黄疸を起こし、嘔吐を伴う腹痛を訴えます。口、鼻、目、胃から出血を起こすことがあります。出血が起こると、嘔吐物や便に血液が混じります。(そして、)腎機能が悪化します。中毒期に入った患者の半数は10-14日以内に死亡し、残る半数は深刻な臓器障害を伴うことなく回復します。

 黄熱は、特に初期の段階では、診断するのが困難です。重症マラリア、デング出血熱、レプトスピラ症、ウイルス性肝炎(特に劇症型のB型とD型肝炎)、他の出血熱(ボリビア出血熱、アルゼンチン出血熱、ベネズエラ出血熱、並びにウエストナイル、ジカウイルスなどの他のフラビウイルスによる出血熱)、そして中毒など、他の疾患と混同されることがあります。血液検査では、感染に応答して産生される黄熱抗体を検出できます。死後に採取された血液検体や肝組織の中からウイルスを同定するために使われる他のいくつかの手法があります。これらの検査には、高度に訓練された検査技師や特別な設備と試薬が必要です。

リスクのある人々

 アフリカとラテンアメリカの44か国の常在地域(原文どおりに記載)に9億人以上住民が(感染の)危険に晒されています。アフリカでは推定で31か国(原文どおりに記載)に住む、推定5億800万人が危険に晒されています。残る危険地域の人々は、ラテンアメリカの13か国で、最も感染の危険が高い国はボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーです。

 WHOの推定によると、1990年代の初めから、全世界で毎年3万人の死亡者を伴う20万人の黄熱患者が発生し、そのうち90%はアフリカで発生しています。最近のアフリカのデータからの分析では、アフリカにおける2013年の黄熱患者は、重症例が8万4000人-17万人と死亡例が2万9000人-6万人と推定される脅威を抱えています。予防接種がなければ、脅威となる数値はさらに高くなっていたと思われます。

 黄熱の常在しない国でも、わずかに患者が感染輸入されています。これまでにアジアで黄熱の報告はありませんが、感染流行に必要な条件が存在しているため、この地域は危険な状態です。過去(17-19世紀)には、北アメリカ(チャールストン、ニューオーリンズ、ニューヨーク、フィラデルフィア)やヨーロッパ(フランス、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン、イギリス、北アイルランド)で黄熱の発生が報告されました。

感染経路

 黄熱ウイルスはフラビウイルス属のアルボウイルスのひとつで、蚊が主要な媒介種となります。蚊は、ひとつの宿主から別の宿主へ、本来はサルからサルへ、サルからヒトへ、そしてヒトからヒトへとウイルスが運ばれます。

 数種類のAedes(シマカ)属とHaemogogus 属の蚊が、ウイルスを媒介します。蚊は家屋周辺(domestic)や密林湿地帯(wild)、または両方の生息地(semi-domestic)で繁殖します。次の3つのタイプの伝播サイクルがあります。

・森林(または密林湿地帯)型黄熱:熱帯雨林で、自然の中に生息する蚊から感染したサルで黄熱が発生します。感染したサルから吸血した蚊がウイルスに感染します。感染した蚊が森林に入ったヒトを刺し、黄熱の偶発症例が発生します。感染の多くは森林で働く(例えば伐木)若い男性に発生します。
・中間型黄熱:アフリカの湿地地域、または半湿地地域で、小規模の流行が起こります。集落の周囲(semi-domestic)に生息する蚊(野外と家屋の周りに生息する蚊)はサルとヒトの両方に感染させます。ヒトと感染した蚊の接触が増加すると感染伝播が起こります。同じ地域にある、たくさんの僻村では同時に患者が発生することがあります。これはアフリカにおける流行の最も一般的なタイプです。家屋周辺に蚊が生息しており、ワクチンを受けていない人々が住んでいる地域に感染が持ち込まれたならば、集団感染ははより深刻なものとなります。
・都会型黄熱:感染したヒトが、免疫のない人とシマカ属の蚊が密集する地域に入って来ると大流行が起こります。感染した蚊がヒトからヒトへウイルスを伝播します。

治療

 黄熱に特別な治療法はありません。脱水、呼吸不全、発熱に対する支持療法を行うだけです。細菌感染があれば抗生剤を使った治療も行われます。支持療法は重症患者の予後を改善する可能性がありますが、貧困が酷い地域ではほとんど行われることはありません。

予防

1.予防接種
 予防接種は黄熱を防ぐ最も重要な唯一の方法です。予防接種の普及率が低いハイリスクの地域では、予防接種を通して速やかな認識の形成と感染発生の制御が流行の回避のために重要となります。感染が地域全域で発生することを避けるため、予防接種の普及率は、リスクのある地域の住民の少なくとも60%-80%に到達しておかなければなりません。   

 リスクのある国では、予防接種を、小児の定期予防接種や予防接種の接種率を上げるための一度に集団で行われる接種キャンペーンを通じて、また、黄熱流行地域への旅行者へも提供することができます。WHOは、リスクのある地域の子どもたちには定期黄熱予防接種を強く推奨しています。

 黄熱ワクチンは安全で手頃な価格であり、10日以内に90%以上の人で黄熱に対して有効な免疫ができ、30日以内には99%に免疫ができます。黄熱ワクチンを1度接種して黄熱に対し十分な免疫が獲得されれば、生涯に亘り予防できる十分な免疫を獲得でき、黄熱ワクチンの追加接種(ブースター)を行う必要はありません。重篤な副反応は極めて稀です。稀に、いくつかの地域流行域で予防接種後や接種を受けた旅行者(例えばオーストラリア、ブラジル、ペルー、トーゴ、アメリカ合衆国)から重篤な副作用が報告されています。研究者が原因を調査しています。

 60歳以上の人で黄熱ワクチンを接種した場合、60歳以上の人が黄熱ワクチンに関連する内臓疾患の発現リスクが若い年齢の人よりも高いものの、全体でのリスクは低いと指摘されています。60歳以上の人のワクチン接種は、予防接種による重篤な有害事象と黄熱に罹ることのリスクを比較し、リスク・ベネフィットを慎重に評価した後に投与すべきです。

 黄熱による死亡のリスクは、ワクチンに関連するリスクよりもかなり大きくなります。 ワクチン接種が推奨されない人は以下の通りです。

・9ヶ月未満の幼児(例外として、ワクチンの副作用より疾患リスクの高い地域での流行時には6-9ヶ月児も接種するべきである)
・妊婦-例外として、感染のリスクが高い黄熱発生期間を除く
・卵タンパクに重度のアレルギーがある人
・HIV/AIDSまたは他の原因で重症の免疫不全状態の人、または胸腺疾患がある人

 旅行者、特にアフリカやラテンアメリカからアジアへの旅行者は黄熱予防接種証明書を取得しなければなりません。予防接種ができない医学的根拠がある場合には、国際保健規則では、適切な機関によってこれを証明しなければならないと記されています。

2.蚊の繁殖制御
 いくつかの状況においては、予防接種が効果を発揮するまでは蚊の繁殖を制御することがきわめて重要です。都会での黄熱の伝播のリスクは、蚊の生息場所の除去と蚊の繁殖初期の段階で水に駆虫剤を投与することで低減できます。都会での流行期間中に、蚊の成虫を殺すためのスプレー殺虫剤の使用と緊急の予防接種キャンペーンを組み合わせることは、接種された住民に免疫ができ、黄熱の伝播を低下させ、阻止することができるまでの「時間稼ぎ」になります。

 蚊の駆除キャンペーンは、歴史的に、中南米本土のほとんどの国から都市型黄熱を媒介するネッタイシマカを排除することに成功しました。しかし、ネッタイシマカは中南米の都市部で再び繁殖し、都市型黄熱の新たなリスクとなっています。

 森林地域に生息している蚊を対象とした蚊の繁殖制御計画は、密林湿地帯(または森林)の黄熱伝搬を防ぐことには現実的とはいえません。

3.流行への備えと対策
 黄熱の速やかな発見と緊急の予防接種キャンペーンによる迅速な対応は発生をコントロールする上できわめて重要です。しかし、実際より過小に報告されていること懸念されています。- 実際の患者数は、現在報告されている患者数の10倍から250倍であると推定されています。

 WHOは、リスクのあるどの国も基本的な黄熱血液検査のできる国立検査センターを、少なくとも一カ所は持つことを推奨しています。検査で確定診断された症例が、予防接種を受けていない住民の中で発生すれば、それは流行発生と考えられます。また、多くの人が予防接種を受けているような地域で確定症例が発生した場合でも、調査を行う必要があります。調査チームは、緊急対応と長期の予防接種計画の両方で、流行発生を評価し対処しなければなりません。

WHOの取り組み

 WHOはInternational Coordinating Group for Yellow Fever Vaccine Provision(ICG:黄熱ワクチン供給国際調整グループ)の事務局です。ICGは、ハイリスク国での流行発生に迅速に対応をするため、黄熱ワクチンを緊急備蓄用に保持しています。

 黄熱イニシアチブは、ユニセフと各国政府の支援の基で、黄熱が顕著であるアフリカの最も流行の著しい国に焦点を当てて、WHO主導で行っているワクチンによる予防的な制御戦略です。イニシアチブは小児の定期予防接種(9ヶ月で開始する)に黄熱ワクチンを組入れること、ハイリスク地域で9か月以上の子どもとすべての年齢の住民に集団予防接種キャンペーンを行うこと、また、サーベイランスと流行発生の対処能力を維持することを推奨しています。

 2007年-2016年の間に14か国で黄熱予防接種キャンペーンが実施されました。実施国は、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コートジボワール、ガーナ、ギニア、リベリア、マリ、セネガル、シエラレオネ、トーゴです。ナイジェリアとスーダンでは、既にキャンペーンが実施されています。黄熱イニシアチブは財政をGAVI Alliance(ワクチンと予防接種のための世界同盟)、EC人道援助局(ECHO)、Central Emergency Response Fund(CERF)(中央緊急対応基金)、保健省、国家レベルのパートナーにより支援されています。

参考

WHO. Media center. Fact sheet. Updated March 2016
Yellow fever
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs100/en/