2016年のニュース

麻しんについて (ファクトシート)

2016年3月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

麻しんは安全かつ費用対効果の高いワクチンがあるにもかかわらず、小児での主な死因の一つです。
2014年には、世界で114,900人が麻しんで死亡しており、これは、毎日約314人、1時間に13人が死んでいることになります。
麻しんのワクチンによって、2000年から2014年までに、世界での麻しんによる死亡者は79%減少しました。
2014年には、世界の小児の約85%が1歳の誕生日までに定期予防接種として1回目の麻しんワクチン接種を受けています。2000年には73%でした。
公衆衛生において、麻しんのワクチンは最も効果の高いものの一つとなっており、2000年から2014年までに、麻しんのワクチン接種は推定で1,710万人の死亡を防ぎました。

概要

 麻しんは非常に伝染しやすい、油断できないウイルス性疾患です。ワクチン接種が広く実施される以前の1980年には、毎年推定で260万人もの患者が麻しんで死亡していました。

 この疾患は、安全かつ有効なワクチンがあるにもかかわらず、依然として世界の小児での大きな死亡原因の一つです。2014年には、推定で114,900人が麻しんで死亡しました。5歳未満の小児がほとんどでした。

 麻しんはパラミクソウイルス科のウイルスによる疾患で、通常、直接接触や空気を介して伝播します。麻しんウイルスは粘膜に感染し、その後に身体全体に広がります。麻しんは人に感染する疾患で、他の動物には感染しません。

 予防接種活動が加速されたことで、麻しんによる死亡者数の減少には大きな衝撃が与えられました。2000年から2014年までに、麻しんのワクチン接種は麻しんによる死亡者を推定1,710万人も防ぎました。全世界での麻しんによる死亡者数は、2000年の546,800人から79%減少し、2014年には114,900人となっています。

症状と所見

 麻しんは通常、ウイルスに接触した後、10日から12日後に高熱で発症し、発熱は4日から7日間続きます。最初の段階で、鼻水、咳、結膜発赤、涙目、頬部内側の白色発疹(コプリック斑)がみられます。通常は数日後に、発疹が顔面と上頚部に出現します。発疹は3日間以上続いて拡大し、手や足にも現れます。発疹は5日から6日間続いた後に消退します。平均すると、ウイルスに接触した後14日(7日~18日)で発疹が出現します。

 麻しんに関連する死亡原因は、ほとんどがこの疾患に関連した合併症によるものです。合併症は5歳未満の小児、または20歳を過ぎた成人に多くみられます。最も深刻な合併症は、失明、脳炎(脳浮腫を引き起こす感染症)、重症の下痢とそれに伴う脱水、耳への感染、肺炎の様な重症呼吸器感染症です。麻しんの重症化は、貧しく栄養状態の悪い幼児、特にビタミンAの不足や、HIV/AIDSなどの免疫機能が低下した患者でよく起こるようです。

 低栄養状態の割合が高く、適切な公衆衛生が受けられない地域では、麻しん患者の10%近くが死亡します。妊娠中に感染した場合には、重い合併症のリスクがあり、流産や早産が起こる可能性があります。麻しんに感染し回復した人は、生涯にわたり免疫が維持されます。

リスクのある人

 ワクチン未接種の幼児は、麻しんの感染と、死亡を含む合併症のリスクが最も高い集団です。ワクチン接種歴のない妊婦にもリスクがあります。免疫のない人(ワクチン接種歴のない人またはワクチンを接種しても免疫ができなかった人)は誰もが感染する可能性があります。

 麻しんは、多くの発展途上国、特にアフリカやアジアの一部では、いまでも頻繁にみられる疾患です。麻しんによる死亡の大部分(95%以上)は国民一人あたりの所得が低く、公衆衛生の基盤が弱い国で発生しています。

 麻しんの流行は、特に、自然災害や紛争が起きている国や、そこから復興する過程の国では致命的となります。公衆衛生の基盤や保健サービスへの打撃は定期予防接種の中断を導き、避難キャンプでの混雑は感染のリスクを増大させてしまいます。

感染経路

 麻しんウイルスは非常に感染力が強く、咳、くしゃみ、濃厚接触、感染した鼻咽頭の分泌物との直接接触で伝播します。

 ウイルスは、空中や物質の表面で最大2時間の活性があり、感染力を持ちます。感染者は発疹が出現する4日前から発疹が消退した4日後まで、感染力を持っています。

 麻しんの集団発生は、特に、若い栄養失調の子供で起こり、多くは死亡者を出す流行となります。麻しんがほぼ撲滅された国でも、依然として、他国からの輸入症例が重要な感染源となっています。

治療

 麻しんウイルスに特化した抗ウイルスの治療法はありません。

 麻しんの重症合併症は、充分に栄養と水分を摂り、WHOの推奨する経口補液で脱水の治療を行うことで避けることができます。この補液は下痢や嘔吐で失った水分や他の必須元素を補うものです。抗生剤は、眼や耳の感染、肺炎の治療に対して必要に応じて処方されます。

 発展途上国で麻しんと診断されたすべての小児は、24時間間隔で2回のビタミンAの投与を受けることが必要です。この治療は、たとえ栄養状態が良い小児でも、麻しんの間に起こるビタミンAの低下を補正し、眼の障害と失明を予防することを助けます。ビタミンAの補給は麻しんによる死亡を50%減少させることが示されています。

予防

 患者発生と死亡率の割合の高い国での集団予防接種キャンペーンを組み合わせた小児に対する麻しんワクチンの定期予防接種は、世界での麻しんによる死亡を減らす公衆衛生戦略の鍵です。麻しんワクチンは50年以上に亘って使用されてきました。安全で、効果的で、かつ安価です。一人の小児に麻しんワクチンを接種する費用は約1米ドル(110円)です。

 麻しんワクチンは、風しんや流行性耳下腺炎の感染症がしばしば問題となっている国では、これらのワクチンと一緒に接種されます。単独ワクチンでも混合ワクチンでも同等の効果があります。麻しんワクチンに風しんワクチンを追加すると、わずかなコストの追加で同時に接種でき、一回分の実施費用で済みます。

 2014年には、世界の小児の約85%が、通常の保健サービスとして、1歳の誕生日までに1度目の麻しんワクチン接種を受けています。2000年には73%でした。1度目のワクチン接種では約15%の小児で免疫ができないので、確実に免疫を誘導し、集団発生を予防するために2度の接種が推奨されています。

WHOの取り組み

 2010年に、WHO総会は将来の麻しんの撲滅に向けて2015年までに達成すべき3つの目標を立てました。

・1歳児の定期予防接種において、全国で90%以上かつ、全ての地域もしくはこれと同等の行政単位で80%以上に、1回の麻しんを含むワクチン(MCV1)接種率を上げること
・年間の麻しん発生率を100万人あたり5人未満に減らし維持すること
・2000年の推定値から麻しんの推定死亡率を95%以上減らすこと

 2014年までに、ワクチン接種率の改善への世界的推進で死亡者を79%減少させました。2000年から2014年の間に、「麻しん・風しんイニシアチブ(the Measles & Rubella Initiative)」の支援を受けて、麻しんのワクチン接種は推定で1,710万人の死亡を防ぎました。2014年には、28か国で約2億1900万人の子どもたちが集団予防接種キャンペーンの中で麻しんの予防接種を受けました。WHOのすべての地域が、現在、この予防可能である致死的疾患を2020年までに撲滅する目標を定めています。

麻しん・風しんイニシアチブ(The Measles & Rubella Initiative)

 2001年に発足した麻しん・風しんイニシアチブは、麻しんと風しんの感染を制御する目標を達成しようとする国々を支える、WHO、国連児童基金(UNICEF)、アメリカ赤十字、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連基金による世界規模の共同団体です。麻しん・風しんイニシアチブは麻しんで死亡したり、先天性風しん症候群で生まれる子どもを確実になくすこと、2015年までに麻しんによる死亡を95%減らすこと、2020年までに少なくともWHOの5つの地域で麻しんと風しんの撲滅を達成すること、を委託されています。

世界麻しん風しん撲滅対策戦略計画2012-2020

  2012年4月、麻しん・風しんイニシアチブは、2012年から2020年に実施する新たな麻しんと風しんの世界的戦略計画(Global Measles and Rubella Strategic Plan 2012-2020)を公表しました。

 この計画では、2015年から2020年の間に麻しんと風しんの感染制御と撲滅の目標を達成するために、国内及び国際的な支援者と協力して、国としての予防接種管理のための明確な戦略が立てられています。

2015年末までに
麻しんの死亡者を2000年の水準に比べて、少なくとも95%減少すること
地域的な麻しんと風しん、および先天性風しん症候群(CRS)の撲滅目標を達成すること

2020年末までに
少なくともWHOの5つの地域で麻しんと風しんの撲滅を達成すること

 この戦略は、5つの中核的な内容の実施に焦点を合わせています。
1. 麻しん・風しん含有ワクチンの2回接種の接種率を向上させ、高い接種率を維持する。
2. 効果的なサーベイランスによって疾患を監視し、予防接種活動の振興と良い影響を確実にするために、計画に沿った努力を適正に評価する。
3. 集団発生への備え、迅速な対応、効果的な患者の治療の発展と維持をはかる。
4. 予防接種に対する信頼と需要を築くために、地域と連携をとり、かかわっていく。
5. 費用対効果の高い取り組みとワクチン接種や診断方法の向上を支援するために研究や開発を行う。

 現在の動向と実績に基づいて、世界的な予防接種の専門家からは、2015年の麻しんマイルストーンと撲滅目標は予定通りには達成されないと結論づけられました。

 麻しんは非常に感染力が強く、感染制御の現在のレベルを維持するには継続的な努力が必要とされます。コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、その他にも高い感染の脅威がある国の接種率の改善には政策の転換が必要とされ、現在の子ども歳以上の現在12ヶ月以上の子どもに行われているワクチン接種での予防の実施が必要とされます。

 2010年以降の計画進展の減速理由を評価し、現在において戦略を必要とされるものに修正するために、麻しん・風しんイニシアチブの関係者は中期戦略の見直しを要請しています。

出典

WHO. Measles. Fact sheet N°286. Updated March 2016
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs286/en/