2016年のニュース

フランベジア(イチゴ腫)について(ファクトシート)(更新)

2016年6月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

フランベジア(イチゴ腫)は、慢性的に外観の損傷と体力の消耗を伴い、梅毒トレポネーマの亜種pertenueによって引き起こされる小児の感染症です。
フランベジアは、WHOとユニセフが1950年代に根絶のための対象として定めた疾患のひとつです。
フランベジアは、皮膚、骨、軟骨に感染します。この疾患は、人だけが保有宿主であり、感染経路は人から人だけであると考えられてきました。
フランベジアは、手に届く価格のアジスロマイシン抗生剤を単回経口投与するだけで治すことができます。
現在、流行している国は13か国で、ここはWHOの「フランベジア根絶戦略」(モルジュ戦略)を実施するための支援を必要としています。
以前に感染が常在していた73か国では、疾患の存在の有無を確認することを必要としています。

概要

 フランベジアは、一般には風土病性梅毒として知られる慢性細菌感染症の1種です。これらの疾患は流行梅毒(ベジェル)やピンタなどを含むトレポネーマ属のらせん状細菌によって引き起こされます。フランベジアは、この種の感染症で最も頻度の高い疾患です。

 原因菌であるTreponema pallidum 亜種pertenueは、一般に非性病性の風土病性トレポネーマに属するベジェルやピンタ、および梅毒の病原体である梅毒トレポネーマと遺伝的に近い関係があります。

 この疾患は、主に、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、太平洋の温帯湿潤気候や熱帯雨林気候の貧困な地域でみられます。感染が発生している地域の住民の多くは、「道の終わり」ともいうべき地域に住んでおり、基礎となる社会設備や医療施設への利用環境が限られています。貧しい社会的・経済的な状況や(入浴や洗濯用のための水や石鹸の不足よって引き起こされる)各家庭の衛生環境、粗末な衣服、過密な居住環境などは、フランベジアの拡散を促進します。

 感染を受けた人の約75%から80%は15歳未満の子供であり、彼らは感染の主要な宿主となっています。発生が最も多いのは6歳から10歳の子どもです。性差はありません。フランベジアは、感染している人から、非性的な接触で軽い傷を介して感染していない人に(人から人へ)直接に感染伝播されます。病変のほとんどは四肢に発生します。フランベジアの初期病変は細菌に富んでいます。潜伏期間は、9-90日、平均で21日です。

 治療しなければ、感染によって慢性的に外見が損なわれ、障害を生じることにつながります。

問題の展望

 1950年代以降の歴史記録によれば、フランベジアは北緯20度から南緯20度の熱帯地域にある少なくとも88の国と地域での風土病でした。しかし、現在、フランベジアが風土病とされる国は13か国のみです。これらの国では、WHOの 「フランベジア根絶戦略」(モルジュ戦略)を実施するための支援が必要とされます。最近の推定では、13か国の約8,900万人がフランベジアの流行地域に住んでいるとされています。

 エクアドルとインドの2か国は、2003年以降は患者が報告されていません。WHOの国際検証チームが、感染伝播が遮断された状態であることを評価するために、2015年10月にインドを訪れました。国際検証チームの報告書に基づき、WHOの顧みられない熱帯疾患への戦略および技術的支援グループの支持によって、WHOは2016年5月にインドにおけるフランベジアの終息を宣言しました。エクアドルでは、またWHOによるランベジアの終息は宣言されていません。中南米など、これまでに疾患が土着していた少なくとも73の国では、それぞれの状況に対し、この疾患の感染経路が存在するのかを判断するための評価を必要とします。それによって、WHOは世界的な根絶への過程として評価を検証し、証明する手続きを取ることができます。

臨床症状、診断、治療

臨床症状
 フランベジアは、最初に細菌で満たされた乳頭腫を形成します。治療せずにいると、乳頭腫は潰瘍を形成します。この乳頭腫は特徴的で、臨床診断は容易です。診断は潰瘍を形成すると難しくなります。

 軟性下疳菌が皮膚潰瘍(ほとんどが下肢)を起こす重要な原因で、臨床的にフランベジアによって引き起こされる潰瘍によく似ていることが最近発見されました。フランベジアのもうひとつの症状は、最初の感染の数週間から数か月後に起こります。特徴的な症状は、あらゆる場所に起こる黄色病変や、長骨や指の痛みや腫れなどで現れます。WHOは、健康活動ボランティアや地域活動ボランティアがこの疾患を特定するときに役立つように資料を作成しました。

診断
 トレポネーマ感染症を診断するために、梅毒トレポネーマ粒子凝集検査法(TPPA)や急速血漿レアギン試験;(RPR)などの血清学的検査が、広く使用されています(例、梅毒、フランベジア)。しかし、これらの検査は、フランベジアと梅毒とを区別することができません。フランベジアが常在する地域に住む成人に対して検査の結果を解釈するときには、慎重な臨床評価が必要になります。

 この領域で使われる患者の治療の重要ポイントでの4つの迅速検査が、広く使用されています。しかし、検査法の多くは、梅毒の診断に使われており、過去と現在の感染を区別することができません。最近、梅毒と非梅毒性を平行して測る迅速検査が使用できるようになりました。これが、この領域での診断の簡素化を可能しています。この種の試験は、現在と過去の両方の感染を(区別して)検出し、感染に活動がある人々に治療することができます。

 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法検査は、皮膚病変中の病原体を検出することによってフランベジアを確定診断することができます。また、アジスロマイシンへの感受性を決定するために使用でき、根絶プログラムの最終段階で非常に有用と考えられています。

治療
 
フランベジアの治療には2種類の抗菌薬(アジスロマイシンもしくはペニシリンベンザチン)が使用されます。
・アジスロマイシンの単回経口投与は30mg/kg(最大2g)は、大規模な治療キャンペーンにおいて管理しやすく対価も安いため、「フランベジア根絶戦略」(モルジュ戦略)で好まれる選択肢です。
・ペニシリンベンザチンの単回筋肉内注射は、120万単位(成人)と60万単位(小児)です。ペニシリンとアジスロマイシンにアレルギーをもつ患者には、ドキシサイクリン100mg(1錠)1日2回7日間が使用されます。

患者の経過観察

 患者は、抗生物質による治療4週間後に検査する必要があります。ほとんどの患者では、完全に治癒します。患者は、治療の6か月後および12か月後にも、非トレポネーマ検査を行う必要があります。ほとんどの患者では、RPRの力価が2年未満で陰性になります。

予防

 フランベジアにワクチンはありません。早期診断のほか、患者が発生している地域での集団治療や、患者と接触者に対象を絞った治療による感染伝播の阻止に基づいた予防が行われます。健康教育と個々の衛生状態の改善は予防の中でも重要な要素です。

根絶に向けた新たな取り組み:これまでの進展

 2012年に、WHOは「フランベジア根絶戦略」を作成しました。これは、1960年代のベンザチンペニシリン注射からアジスロマイシン経口剤の使用への移行に基づいて、Morges戦略と呼ばれます。顧みられない熱帯病(NTDs)に対するWHOのロードマップと、2013年の世界保健総会で決議されたWHA 66.12では、2020年までにフランベジアを根絶するという目標が設定されました。

 5か国(コンゴ、ガーナ、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ)で先行実施された「フランベジア根絶戦略」は、規模を拡大するために有望な結果と実用的な教訓を提供してきました。

 根絶作戦の実施に当たっての指針とするために、実施調査において優先順位が検討されてきました。パプア・ニューギニアでは、標準治療がフランベジアに対して30 mg/kgで与えられているのに対して、トラコーマに対して用いられる用量として推奨されている20 mg/kgという低用量での有効性を決定するための研究が行われました。もし成功すれば、その結果は、これら2つの疾患が重複している国では、両方の疾患を同時に治療する方針を立てることに繋がります。

根絶のための判断基準

 病気を根絶するための2つの判断基準が、性行為感染症と梅毒に関するWHO専門家委員会によって1960年に設定されました。

 これらの基準は、次のとおりです。
・3年間連続して先住する民族での患者がでないこと。
・1-5歳の子供たちの間の血清調査で測定し、3年間連続して感染伝播の証拠がなられないこと(例えば、RPR血清反応検査で陽性の幼児がいないこと)。

 2010年のPCR方検査の開発以降、疑いのある病変検体のPCR法検査の結果が陰性であることが基準に追加されました。これは、フランベジア潰瘍とよく似た潰瘍を形成する軟性下疳との鑑別に必要となります。

他の計画との連携

 顧みられない熱帯性疾患(NTDs:ブルーリ潰瘍、皮膚リーシュマニア症や、ハンセン病など)のプログラムとの連携、並びに性感染症プログラムとの連携は、フランベジアの根絶を進めるために不可欠です。

今後の展望

 先行実施した5つの国における「フランベジア根絶戦略」(モルジュ戦略)の経験で、アジスロマイシンを継続的に供給することが確保できれば、2020年までにフランベジアの根絶の可能性があることが明白に示されました。旧来の治療法(ベンザチンペニシリン)を使って感染経路を遮断したインドの成果は、アジスロマイシン経口剤を単回投与することで、2020年に目標に到達することの推進力構築するにあたり、明るい教訓を提供しています。

出典

WHO. Fact sheet, Media Centre. Updated June 2016
Yaws
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs316/en/index.html