2016年のニュース

レジオネラ症について (ファクトシート)

2016年6月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

レジオネラ・ニューモフィラは、1976年にアメリカ合衆国の会議センターで重症肺炎が集団発生した原因として、1977年に初めて確認されました。
レジオネラの最も一般的な感染経路は、細菌で汚染された水しぶき、噴射水、散布霧から産生される微粒子(エアロゾル)を吸い込むことです。感染は免疫力の弱った入院患者では細菌を含む水や氷を誤嚥することででも起こり得ます。
レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の潜伏期間は2~10日(複数の集団感染の記録でも最大16日以内)です。
呼吸不全や多臓器不全をともなう進行性の肺炎を起こすために、死に至ることがあります。
通常、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は治療しなければ、最初の1週間で悪化します。
報告された症例のうち、75~80%が50歳以上、60~70%が男性です。

背景

 レジオネラ症は重症度が、軽度の発熱状態から重症の時に死に至る肺炎まで幅があります。この病気は(生活)水や腐葉土で見つかるレジオネラ種に曝されることが原因で起こります。

 世界的に、水が媒介物となるレジオネラ・ニューモフィラは、集団感染を含めて患者発生の最も身近な原因です。レジオネラ・ニューモフィラとその関連菌種は、湖、川、排水路、温泉、その他の体を洗う日常の生活水の中から見つかります。L. longbeachaeを含むその他の菌種は腐葉土の中から見つかります。

 レジオネラ・ニューモフィラは、1976年にアメリカ合衆国の会議センターで重症肺炎が集団発生した原因として、1977年に初めて確認されました。それ以来、レジオネラ・ニューモフィラとそれに関連する菌種は、管理が不十分な人工的な水まわり、特に、空調設備で使う蒸発凝縮器や工場の冷却塔、公共および民間施設の温水および冷水の水まわり、循環型のジェット・スパなどと関連して幾度となく流行を起こしてきました。

 感染が成立する細菌量はわかっていません。しかし、この疾患は短時間の暴露、さらには発生源から3 km以上も離れた感染源からの暴露でも流行が発生しています。そのため、細菌量は極めて少なくても感染が成立すると考えられています。発症の可能性は、水源におけるレジオネラ菌の濃度、エアロゾルの生成と拡散、年齢および感染前の健康状態などの宿主因子、レジオネラの菌株がもつ特別な病原性に左右されます。ほとんどの感染は、病気を起こすことはありません。

原因

 原因菌は、水や腐葉土からのレジオネラです。病気で最も多い原因菌は、世界中の自然の淡水環境で発見されるL. pneumophilaです。しかし、レジオネラの増殖と拡散の助けとなる環境を供給する人工の水まわりのシステムが、最も感染し易くします。

 細菌は20〜50℃(最適温度35℃)の温度の水まわりに生息し、増殖します。レジオネラは活動性の原生動物に寄生したり、水まわりでバイオフィルムを形成したりして生存し、増殖します。この細菌は、原生動物に寄生するときと同じメカニズムで人の細胞にも寄生し、感染症を起こします。

感染経路

 レジオネラの感染伝播の最も一般的な形態は、細菌を含むエアロゾルを吸入することです。レジオネラの伝播と関連をもつエアロゾルの発生源は、空調機の冷却塔、温水と冷水の水まわり、加湿器、ジェットバス・スパです。感染は免疫力の弱った入院患者では、細菌を含んだ水や氷を誤嚥することででも起こり得ます。人から人への直接感染はありません。

分布

 レジオネラ症は世界中に広く分布すると考えられています。

疾患の拡大

 集会で感染したレジオネラ肺炎(在郷軍人病)の発生率は、調査と報告のレベルによって大きく変化します。多くの国では、感染を診断する適切な方法や調査体制が不十分なため、その発生率は不明です。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ合衆国では、発見される患者数は人口100万人あたりおよそ10〜15例です。

 報告されている患者の75~80%が50歳以上、60~70%が男性です。レジオネラ症の市中での感染および旅行中での感染に対する危険因子には、これ以外にも、喫煙、大量飲酒、肺疾患、免疫抑制剤、慢性の呼吸不全や腎不全などがあります。

 院内肺炎としての危険因子には、手術直後、気管内にチューブを留置する過程である挿管、人工呼吸器、誤嚥、経鼻胃管、および呼吸器系の治療装置の使用などがあります。最も感染しやすい人は、臓器移植を受けた患者、癌患者およびコルチコステロイドで治療を受けている患者などの免疫不全状態の患者です。

 診断と適切な抗生物質による治療の遅れ、加齢および合併症の存在が、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)による死亡の予測因子となります。

症状

 レジオネラ症は、レジオネラ細菌よる肺炎と非肺炎性の感染を示す総称です。

 非肺炎性疾患(ポンティアック病)は、急性で、自分に限定された(他に感染させない)インフルエンザ様の疾患で、通常2~5日間続きます。潜伏期間は数時間から48時間です。主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感や筋肉痛です。このタイプの感染は死に至ることはありません。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は、潜伏期間が2〜10日です(複数の集団感染の記録でも最大16日以内)。症状は、発熱、食欲不振、頭痛、倦怠感や無気力などで始まります。一部の患者は、筋肉痛、下痢、昏迷を起こします。通常、感染初期に起こす咳は軽度ですが、約半数の患者は痰を伴います。約3分の1の患者では、血液混じりの痰や血痰が現れます。疾患の重症度には、軽度の咳から急速で致命症に至る肺炎まで幅があります。呼吸不全や多臓器不全をともなう進行性の肺炎を起こすことで、死に至ることもあります。

 通常、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は無治療の状態では、最初の1週間で悪化します。重症肺炎を起こす共通の危険因子として、呼吸不全、ショックや急性腎不全および多臓器不全が最も頻繁にみられる合併症があります。回復には抗生物質による治療が不可欠であり、治癒までには数週間から数ヶ月を要します。稀ではありますが、重度進行性の肺炎や効果のない肺炎への治療によって脳に後遺症をもたらすことがあります。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の死亡率は、疾患の重症度、最初の抗生物質の適切な選択、レジオネラに感染した状況、患者側の因子(通常、疾患は、免疫力の弱い患者でより重症となります)に依存します。死亡率は、免疫抑制中の患者が無治療の場合40〜80%の高さになり、適切な患者管理と臨床徴候および症状により5〜30%まで低下します。通常、全体での死亡率は5〜10%の範囲内にあります。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)は暴露のタイプに基づいて、市中、旅行、院内に分類されます。

対策

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)に対して、現在効果のあるワクチンはありません。

 非肺炎性疾患を呈する患者は、抗生物質による治療を必要とせず、対症療法で十分です。レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の患者には、常に、診断を検査で確認し、抗生物質で治療する必要があります。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)が引き起こす公衆衛生上の脅威は、建物の安全性および水道・配管設備の安全性に対して規制する行政が定める水の安全性計画を実施することによって対処できます。これらの計画は、具体的に建物や水道・配管設備に対して実施される必要があります。その結果は、レジオネラ菌などの特定できるリスクに対処した管理方法の導入や定期的な点検をもたらすものなければなりません。感染源をなくしてしまうことは不可能ですが、実質的なリスクを低減することはできます。

 レジオネラ肺炎(在郷軍人病)の予防対策は、レジオネラの増殖とエアロゾルの拡散を最小限に抑える管理と対策を適用することに依存します。これらの対策には、定期的な清掃と消毒、および増殖を最小限に抑えるためのその他物理的(温度)対策または化学処理(殺菌)対策を当てはめることなど、装置の適切なメンテナンスが含まれます。その実際例は以下のとおりです
殺菌剤の頻回または連続添加と冷却塔の定期的なメンテナンス、清掃、消毒
冷却塔からのエアロゾルの拡散を減らすためのドリフトエリミネータ-の導入
ジェットスパ・プールにおける塩素剤などの殺菌剤の適正レベルでの維持と、少なくとも週1回の水まわりの配管系全体を完全排水し清掃すること
温水は60℃以上、冷水は20℃以下、もしくはその代わりの適切に増殖を抑える殺菌剤で、殺菌処理することにより温水・冷水システムの清潔を維持すること
週1回を基本として、建物内で未使用の蛇口を洗い流し、水の停滞を減らすこと

 このような管理を適用すれば、レジオネラの感染リスクを大幅に低減し、散発的な患者の発生および流行を防げます。特に感染に弱い患者には、病院でも細菌が含まれた水や氷を誤嚥する可能性を考えて、さらなる予防措置を必要とすることもあります。

 管理と予防の対策は、患者を発見するために一般開業医や地域保健サービスの中で適度な警戒感をもって行われなければならない。

出典

WHO. Fact sheet, Media centre. Updated June 2016
Legionellosis
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs285/en/