ポリオウイルスの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第11回会議でのWHO声明

2016年11月11日 WHO (原文[英語]へのリンク

国際保健規則[IHR(2005)]に基づき、ポリオの国際的感染拡大に関する第11回緊急委員会が、事務局長の要請により招集され、2016年11月11日にテレビ会議によって開かれました。

緊急委員会では、野生型ポリオ1型(WPV1)とワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の感染伝播についてデータが検討されました。事務局は、IHRに加盟し、一時勧告の対象となっている感染発生国の進展状況に関する報告書を提出しました。IHR各加盟国(アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェール)から、前回2016年8月11日に開かれた委員会以降のWHO一時勧告の実施状況について更新情報が提出されました。

野生型ポリオ

全体として、委員会は、パキスタンとアフガニスタンの着実な進展を示したことに希望を見いだしました。しかし、ナイジェリアで野生型ポリオウイルス1型(WPV1)4例が発見されたことは、ポリオ撲滅(計画)における後退であったとして議題に上げました。委員会は、ナイジェリアのポリオ撲滅計画の迅速な対応には安堵し、それに強い印象をもちました。委員会は、(ポリオ)撲滅が近づくに連れてこのような逆行現象が起こることは予想された現実として受け止めましたが、これらの事例が世界のポリオ撲滅を達成することには脅威であることも認識しました。

委員会は、アフガニスタンとパキスタンにおける進捗状況を歓迎し、この地域で疫学的ブロックが構成されていることに注目し、新たに両国間の長い国際境界線に沿って協力関係の重点が置かれたことを支持しました。

パキスタンに対し、委員会は2016年に(ワクチンを)利用できない子どもが大幅に減ったことが大きな成果となっていると認めました。しかし、最近になって野生型ポリオウイルス(WPV1)がパキスタンからアフガニスタンPaktika州に感染輸出されたことで、両国間での国際的な伝播の拡がりをくい止めるには困難があることが示されました。さらに、パキスタンでの環境試料中のWPV1陽性の割合は、2016年を通じて10%前後のままであり、広範な地域で陽性検体が検出されていました。ほとんどの場合、住民の免疫力が高いことが示唆されているため、陽性との判定は野生型ポリオ症例が発見されていない地域の環境試料からですが、発見されていない患者がいる可能性も高まっています。

委員会は、アフガニスタンの一部で治安が悪化し、(ワクチンを)利用できない子どもが増えているため、撲滅の完了に大きな不安をもって、懸念を示した。Paktika州Bermel地区での最近の感染発生は、難民、帰還民、国内難民、および遊牧民を含め、流動性が高く、免疫力が低いために、この高いリスクのある集団ポケットの中に、アフガニスタンの脆弱性があることを示しています。委員会は、アフガニスタンから最後の感染輸出されたのは13か月以上前(パキスタン、2015年9月14日)であったことに注目しました。

委員会は、ナイジェリアが新たな野生型ポリオ患者(WPV1)に迅速に対応し、緊急資金の拠出を含め、その情報伝達の透明性を維持したことを賞賛しました。しかし、ナイジェリア北部には、ポリオ撲滅ための活動やボランティアを危険に曝す可能性のある大きな治安リスクがあるため、依然として、完全にまたは部分的に入ることのできない集落が残っています。最近、分離された4件のポリオウイルスが3~4年間は伝播していたことに注目し、ポリオウイルスはこれらの地域で伝播し続けている可能性が高いと結論づけました。ポリオ撲滅のためには、これらの集団に到達することが極めて重要となります。チャド湖流域の国々や、サハラ以南のアフリカに国際的に広がるリスクはかなり高いと考えられています。委員会は、ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェール、中央アフリカ共和国を含むチャド湖周辺の盆地諸国が、地域活動の調整のための特別対策委員会を設置したことに希望をもちました。これにより、入ることのできなかった地域に入る機会が開かれます。チャド湖のナイジェリア島には、ナイジェリアからは入ることができませんが、チャドからは入ることができる可能性があります。

委員会は、ソマリア、カメルーン、赤道ギニアから最終報告を受けました。これらの3か国は、IHRポリオ緊急委員会が定義するリスク・カテゴリーでは、感染拡大を受けやすい国です。このカテゴリー・リストにおいては12か月後に、各国はポリオウイルスの感染発生への弱点を低下させるために取り組んだ活動を要約した報告書を委員会に提出することが求められています。委員会は、この報告に基づいて、各国が感染拡大を受けやすい国のリストにとどめられるべきかどうかについて助言します。これらの国からの報告書を検討した後、委員会は各国に次のような勧告を行いました。カメルーンは、野生型ポリオ患者(WPV1)の発生地と地理に近いこと、チャド湖周辺地域ではポリオウイルスが伝播している可能性があることに基づき、依然として感染拡大を受けやすいと考えられています。赤道ギニアは、調査活動が貧弱であり、定期的なワクチン接種の接種率が低下し、この感染拡大を受けやすいことに対処する国の努力が減少しているなど、かなり次善のポリオ撲滅活動に基づいても、感染拡大を受けやすいままです。一方、ソマリアは、ワクチン接種ができず、未だワクチン接種されていないたくさんの人々がいますが、この地域での調査活動は感染を除外するには十分であり、この国の他の地域でも(ポリオ撲滅の)国家プログラムは確りと維持されています。

ワクチン由来ポリオウイルス

委員会は、前回2016年5月および8月の会議以降、新たにワクチン由来のポリオウイルスの感染例がなかったことを議題に取り上げました。しかし、ナイジェリア・ボルノ州の野生型ポリオ患者(WPV1)と接触した健康な子どもは、2016年3月の環境試料で陽性であったウイルス株と同じcVDPV2株に対して2016年8月にも陽性となりました。これは、ボルノ州で伝播が続いていることを示しています。cVDPV2が存在する可能性はありますが、WPV1と同様に入ることのできない集団では確認できておらず、周辺各国に国際的に拡大するリスクは継続していると結論付けられました。

ギニアでは、最後のワクチン由来ポリオ患者は、2015年12月に発症しました。しかし、委員会は、ギニア国内および隣国でありエボラが発生した後のリベリアとシエラレオネと隣接する地域では、積極的な調査体制が最近になって始まったばかりであり、伝播の見逃しの可能性を除外できないことから、拡がりへのリスクは可能性が続いていると考えています。リベリアとシエラレオネの調査活動への取り組みには、依然としてよりいっそうの努力が必要となります。

委員会は、ミャンマーとマダガスカルから「12か月の報告書」を受け取りました。現在、これらの国ではワクチン由来ポリオ(cVDPV)患者が発見されてから13か月以上経過していることを議題としました。調査活動におけるギャップは残されたままですが、伝播は治まったとみられます。

国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に対する結論

委員会は、ポリオの国際的な感染拡大が、現在も国際的な懸念に関する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)にあることに全会一致で合意し、さらに3か月間、一時勧告を延長することを助言しました。委員会は、この結論に達する中で以下の点について議論しています。

  • ナイジェリアでの新たな野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の発生は、何年間も発見されることなく野生型ポリオウイルスが存在し続けていたことから、調査に入れずに妥協させられていたハイリスクの地域が存在していたことを強く示していること。チャド湖周辺での感染伝播のリスクは極めて高くなっているとみられること。
  • 感染に弱い人々への伝播が強いことで、2016年においても、パキスタンからアフガニスタンへの野生型ポリオウイルスの国際的な拡大が続いていること。
  • パキスタンでの環境試料において、野生型ポリオウイルス1型(WPV1)が広い地域で陽性を示し続けていること。
  • これまでの歴史の中で、現在の特別な、いままでにない状況は、ポリオ撲滅にさらに近づいていること。
  • 世界で最も深刻ではあるがワクチンでの予防が可能な疾患の一つを地球上から根絶することに失敗したときに発生するリスクと結果としての費用(は莫大であること)。世界規模での感染伝播は劇的に減少し、国際的に拡大する可能性が低下しているものの、国際的な拡大が起これば、その結果と衝撃は深刻なものとなること。
  • ポリオ患者数が減り続け、撲滅の可能性が見え(現状に対し)世界が自己満足する可能性があること。
  • 紛争や複雑な緊急事態によって予防接種体制の弱体化や崩壊が生じた国が増えることで、国際的な感染の拡大はさらに深刻な社会的影響をもたらすこと。これらの不安定な地域の人々はポリオに集団感染しやすくなっています。感染しやすい状態での患者の発生は感染の制御を極めて難しくし、最終局面で世界からポリオ撲滅が完了することを脅かします。
  • 野生型ポリオウイルスに対して予防接種と調査活動を向上させ、国際的な感染拡大を阻止し、新たな感染リスクを軽減させるために国際協調の下での対策を続けることの必要性。
  • ポリオの国際的な感染拡大は国境を越えて発生することが多いため、地域での感染対策の推進と国境での協力体制の強化が重要であること。一方で、ポリオの感染伝播が活発な地帯から遠隔地に感染が国際的に拡大するリスクがあることの認識が必要であること。
  • さらに、ワクチン由来のポリオウイルスに関して以下の点について議論しています。
    • ワクチン由来のポリオウイルスは国際的な拡大に対するリスクを有しており、適切な措置と
      緊急の対策を講じなければ、特に、既に述べられたような感染しやすい人々では脅威となること。
    • ポリオの終局における重要な時期に、人々の免疫力には大きな解離があることを示している
      ワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)の伝播が、ナイジェリアと、恐らくはギニアとラオスで
      続いていること。
    • 2016年4月に2型の経口ポリオワクチンを世界同時に撤退させたことに続き、ワクチン由来の
      ポリオウイルス2型(cVDPV2)への予防には引き続き緊急性があること
    • エボラを含めて、環境の不安定な状態やその他の緊急事態によって感染が発生する地域で
      定期予防接種を向上させる取り組みを継続させること
    • 世界中での不活化ポリオワクチンの不足は、ワクチン由来ポリオの新たな脅威となること

リスクの分類

委員会は、リスク分類に基づいて、野生型ポリオウイルスとワクチン由来のポリオウイルスの国際的拡大のリスクを軽減することを目的とした以下の助言を事務局長に提出しました。

野生型ポリオウイルス

  • 現在、野生型ポリオウイルスを感染輸出している国
  • 野生型ポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国
  • もはや野生型ポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国

ワクチン由来のポリオウイルス

  • 現在、ワクチン由来のポリオウイルスを感染輸出している国
  • ワクチン由来のポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国
  • もはやワクチン由来のポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国

委員会は、新たな感染輸出の検出に対する期間と野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来のポリオウイルスの新たな患者または環境分離株の検出に対する期間の以下の基準での評価に更新し、適用しました。

もはや感染輸出のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの感染輸出の検出がない)国の評価に対する判断基準

  • ポリオウイルス感染者:最新の感染輸出による最初の症例が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月、もしくは、最新の感染輸入により発生した直近の患者から12か月以内に発症し報告された急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対し検査され、新たに感染輸入された野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、最初の患者から12か月以内に集められた環境サンプルも陰性となり、何れもが続いているとき。
  • 感染輸出された野生型ポリオウイルスの環境下からの分離:新たに感染輸出を受けた国の環境下での最初の陽性検体の採取に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。

もはや感染のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの検出のない)国の評価に対する判断基準

  • ポリオウイルス感染者:最新の患者が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。もしくは、直近の患者から12か月以内に発症した急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対して検査され、野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、直近の患者から12か月以内に集められた環境サンプルが陰性となり、何れもが続いているとき。
  • 野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルス(ポリオウイルス感染者がいないこと)の環境下からの分離:最新の環境下で陽性検体が採取された日に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。

一時勧告について

現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国

現在の対象は、パキスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2016年8月2日、アフガニスタンへ)です。

  • 感染輸出している国には、以下の行動の実行が求められます。
  • もしまだであるなら、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急課題が継続された状態にあることを宣言すべきです。
  • 全ての年齢での、全ての住民と4週間以上の長期滞在者は国際渡航の12か月前から4週間前までに1回のポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けていることを確認すべきです
  • 4週間以内に急な旅行を行う人々で、12か月前から4週間前までにポリオ生ワクチンもしくは不活化ワクチンを接種していない人は、出発までに1度はポリオワクチンを接種していることを確認すべきです。これでも、有益性があります。特に、これは頻繁に旅行する人に当てはまります。
  • そのような渡航者には、IHR(2005)別添6で明記された国際予防接種証明書がポリオワクチンの接種記録としてまた接種の証明書として発行されていることを確認すべきです。
  • 適切なポリオ予防接種の書類を欠いたままではいかなる住民も海外渡航を出発の時点で制限すべきです。これらの勧告は、渡航の手段(例えば、陸、空、海)に関係なく、すべての出発地から海外渡航する者に適用されるべきです。
  • パキスタンとアフガニスタンとの国境を越える人々の移動は野生型ポリオウイルスの感染輸出を助長し続けることを認識しておくべきです。両国は、実質的には、国境を越える渡航者とハイリスクの国境に住む人々に対してワクチン接種率を高めるために、国、地域、地方レベルで協力体制を確実に向上させる国境での努力をさらに強化させる必要があります。両国は長年にわたり主要な国境検問において永続的な予防接種チームを維持してきました。国境での努力の協調体制の改善には、より密接な管理、国境通過点での接種ワクチンの品質の監視とともに、国境を越えた後にワクチンを接種していないと識別される渡航者の割合を追跡することを組み入れる必要があります。
  • これらの対策は以下の基準が達成されるまで継続されるべきです。(i)新たな感染輸出がなく、少なくとも6か月を経過すること、(ii)すべての感染地域やハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施されたことの証拠となる書類を提出すること、そのような書類が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
  • 渡航が制限された住民の数とワクチンを接種し出発の地点で適切な予防接種の書類を提供した渡航者の数を含め、海外渡航での月別実施件数に関する一時勧告の報告書を事務局長に引き続き提供することが求められています。

野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国
野生型ポリオウイルス1型の感染が発生している国

  • ナイジェリア(最後の感染発生は2016年8月21日)
  • アフガニスタン(同、2016年10月7日)

ワクチン由来ポリオウイルスの感染が発生している国

  • ナイジェリア(地域調査からのウイルス分離は2016年8月26日)
  • ギニア(最後の感染発生は2015年12月14日)
  • ラオス(同、2016年1月11日)

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。

  • もしまだならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われているならば、この緊急課題が継続されていることを宣言することが必要です。
  • 全ての住民と4週間以上の長期滞在者は海外渡航の12か月前から4週間前までに1度ポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けることを推奨すべきです。4週間以内に急な旅行を行う人々には、出発までに1度はポリオワクチンを接種することを推奨すべきです。
  • そのようなワクチン接種を受けた渡航者はポリオワクチン接種状況の記録を適切な文書で所有していることを確認すべきです。ポリオウイルスの早期発見のためのサーベイランスを強化するために、地域の協力体制と国境を越えた協力体制を強化し、実質的に難民、渡航者、国境を越える集団でのワクチン接種率を高めることが必要です。
  • これらの対策は以下のような基準が達成されるまで継続されるべきです:(i)少なくとも6か月間、国内のどのような検査検体からも野生型ポリオウイルスの感染伝播が検出さずに経過すること、(ii)すべての発生地域とハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施された証拠文書を提出すること。これらの対応の証拠文書が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
  • 感染伝播の証拠なく12か月間を終えたときには、一時勧告を実行するために取られた対策の報告書を事務局長に提供することが求められています。

もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国
野生型ポリオウイルス1型の感染が発生している国

  • カメルーン(最後の感染発生は2014年7月9日)
  • ニジェール(同、2012年11月15日)
  • チャド(同、2012年6月14日)
  • 赤道ギニア(同、2014年5月13日)
  • 中央アフリカ共和国*(同、2011年12月8日)

ワクチン由来ポリオウイルスの感染が発生している国

  • ウクライナ(最後の感染発生は2015年7月7日)
  • マダガスカル(同、2015年8月22日)
  • ミャンマー(同、2015年10月5日)

*中央アフリカ共和国は、チャド湖周辺地域において協調して対策を取る必要があることに基づいて追加されました。論理的に、チャド湖周辺の他の国と同じ一時勧告を受ける必要があります。

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。

  • 地域の人々の免疫機能を押し上げるために、定期予防接種を早急に強化すること。
  • 検出されなかった野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスが伝播するリスク、特にリスクの高い移動民と感染しやすい人々の間でこれを軽減するために、調査活動の質を向上させること。
  • 移動民、国境を越える人々、国内避難民、難民やその他の感染しやすい人々へのワクチン接種を確実に実行する取り組みを強化すること。
  • 野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの速やかな発見とハイリスクの集団へのワクチン接種を確実に実行するために、地域協力と国境を越えた連携を強化すること。
  • 質の高い調査活動とワクチン接種活動の全てに適応性のある手順書を作成し、これらの対策を維持すること。
  • 野生型ポリオウイルスまたは新たに出現し伝播するワクチン由来ポリオウイルスの再侵入の証拠なく12か月**を経過させたときには、一時勧告を実施するために講じた対策について事務局長に報告書を提出すること。

**チャド湖周辺の国では、野生型ポリオウイルス(WPV1)またはワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV2)が最後に発生した患者のうち、いずれかの最新の日付から12か月後になります。赤道ギニアについては、国が委員会に声明を出すように招待される予定で、2017年2月の次回会議で決定されます。最後の患者(上記)に基づき、ウクライナの報告書は2017年8月、ミャンマーは2017年11月、マダガスカルは2017年9月になります。

全ての感染国に対する追加の検討事項

委員会は、IHRの下での一時勧告の実施計画において重要なこの時期に、感染の発生した国および感染が発生しやすい国の全てに最適な支援が行われること、また最近、一時勧告が実施され始めたソマリアのような国にも支援が続くことを、ポリオ撲滅の中で世界の加盟各国に強く求めました。委員会は、今後の事務局の報告に、(状況が改善したことで)感染を受けやすい国のリストから外れた国について、これらの国の現在の状況のコメントを添えたこれらの国の表を作成することを要請しました。また、委員会は、最近のナイジェリアでの事例を踏まえて、ポリオの調査活動に妥協が入り、調査に入れていない全ての地域について、事務局が世界報告書を提出することを要請しました。委員会は、ポリオが終息したとされる国でさえも、定期予防接種計画との間には重大な解離があることを認めなければならないことから、定期予防接種の国際支援組織(例えば、GAVI Alliance[ワクチンと予防接種のための世界同盟])などが感染の発生している国に対して国全体の予防接種計画の向上を支援することが必要であると促しました。

委員会は、世界的な不活化ポリオワクチンの不足が撲滅への努力を脅かしていることを指摘し、SAGE(予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会)が監視を続け、この状態に取り組むべき一時勧告を作成することを要請しました。

委員会は、インドで環境試料中からSabin 2型ウイルスが検出された報告は、恐らく、民間のどこかで3価の経口ポリオワクチンが使われ続けていることが原因であろうと留意しました。Sabin 2型ウイルスはロシア、ナイジェリア、アフガニスタンでも確認されているため、委員会は、次回会議ではこのことについて十分は報告を行うように要請しました。

委員会は、一時勧告を実施することに対する公衆衛生上のコストとベネフィットのより詳細な分析を行い、2017年2月の会議では報告書を利用できるように要請しました。

委員会は、すべての国に対し、簡単にポリオの再興に繋がる自己満足を避けることを促しました。特に、調査活動では、あらゆる再興による感染伝播を素早く発見するために細心の注意を払う必要があります。

野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの伝播に関する助言、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェールからの報告書に基づき、事務局長は、委員会の評価を受け入れ、2016年11月18日に、ポリオウイルスに関する状況が、野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの両方に対して、国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に該当すると決定しました。事務局長は、「現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国」、「野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国」、そして「もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国」に対する委員会の一時勧告に署名しました。そして、事務局長はIHRの下で委員会によって改定されたものとして、2016年11月18日から有効となるポリオウイルスの国際的な拡大のリスクを低下させるための一時勧告を延長しました。

事務局長は、委員会委員とアドバイザーの助言に対して謝意を示し、3か月後に現在の状況を再評価することを要請しました。

出典

WHO.Media center news.WHO Statements. 11November2016
Statement on the11th IHR Emergency Committee meeting regarding the international spread of poliovirus.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/11th-ihr-polio/en/