2017年のニュース

予防接種について(ファクトシート)

2017年3月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

予防接種は、ワクチンで防ぐことのできる子宮頸がん、ジフテリア、B型肝炎、麻疹、流行性耳下腺炎、百日咳、肺炎、急性灰白髄炎(ポリオ)、ロタウイルスによる下痢、風疹、破傷風などの疾病を予防し、障害や死亡を防ぎます。
全体としては、世界におけるワクチンの接種率は安定した水準を維持しています。
これまでに使われていなかった新しいタイプのワクチンの組み入れが増えてきています。
現在、予防接種は推定で毎年200万人から300万人の死亡を防いでいます。もし、世界の予防接種率が改善されれば、さらに150万人の死亡を防ぐことができます。
世界では、現在も推定で1,940万人の幼児が基本的なワクチンを接種できていません。

概要

 予防接種は、推定で毎年200万人から300万人のジフテリア、破傷風、百日咳、麻疹による死亡を防いでいます。しかし、もし、世界の予防接種率が向上すれば、さらに150万人の死亡を防ぐことができます。世界におけるワクチンの接種率(世界の子どものうち、推奨されるワクチンを接種した子どもの割合)は、過去数年間、安定した水準を維持しています。

 2015年には、世界の約86%(1億1,600万人)の幼児がジフテリア-破傷風-百日咳(DTP3: 3種混合ワクチン)の予防接種3回を受け、重篤な病態、障害、死亡を起こしうる感染症から保護されました。2015年までに、DTP 3種混合ワクチンの接種率は126か国で少なくとも90%に到達しています。

2015年における世界の予防接種率

ヘモフィリスインフルエンザ菌b型(Hib)
 インフルエンザ菌b型(Hib)は、髄膜炎や肺炎を起こします。Hibワクチンは2015年末までに191か国で導入されました。世界におけるHibワクチンの3回接種率は推定で64%です。しかし、(接種率には)地域間で大きな差があります。アメリカ大陸では、接種率が推定で90%ですが、西太平洋と東南アジアの地域ではそれぞれ25%と56%しかありません。

B型肝炎
 B型肝炎は肝臓に障害を起こすウイルス感染症です。幼児に対するB型肝炎ワクチンは、2015年末までに185か国に全国規模で導入されました。世界におけるB型肝炎ワクチン3回の接種率は推定で83%とされ、西太平洋では90%です。また、96か国では、生後24時間以内にB型肝炎ワクチン1回が新生児に接種されており、その接種率は39%となっています。

ヒト・パピローマウイルス(HPV)
 ヒト・パピローマウイルスは生殖器系で最もよくみられるウイルス感染症です。子宮頸がんなどのがん種や生殖器疣贅を男女ともに引き起こします。ヒト・パピローマウイルス のワクチンは、2015年末までに66か国で導入されました。

麻疹
 麻疹は非常に感染力が強いウイルス性疾患で、通常、高熱と発疹が現われ、失明や脳炎を引き起こし、死に至らせることもあります。2015年末時点で、85%の子どもが2歳の誕生日までに最初の麻疹予防接種を受けました。160か国では定期予防接種に組み入れられ、61%の子どもが国の接種計画に従って2回目の接種を受けました。

髄膜炎菌A
 髄膜炎菌A型は、重篤な脳の障害を起こし得る感染症で、しばしば死に至ります。2015年5月(ワクチン導入後5年)までに、髄膜炎が発生しているアフリカの国の2億3,500万人がWHOとPATH(Program for Appropriate Technology in Health;保健分野における適切な技術を導入することを目的に設立された非政府組織)によって開発されたワクチン(MenAfriVac)の接種を受けました。

流行性耳下腺炎
 流行性耳下腺炎は非常に感染力が強いウイルスで、有痛性の耳下腺腫脹、発熱、頭痛、筋肉痛を起こします。ウイルス性髄膜炎を起こすこともあります。流行性耳下腺炎のワクチンは、2015年末までに121か国に全国規模で導入されました。

肺炎球菌
 肺炎球菌性疾患は、肺炎、髄膜炎、発熱性菌血症のほか、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎を起こします。肺炎球菌ワクチンは、2015年末までに129か国に導入され、世界全体で接種率が推定で37%となりました。

ポリオ
 ポリオは感染力の強いウイルス性疾患で、不可逆的な麻痺を起こすことがあります。2015年には、世界中で86%の幼児が3回のポリオ予防接種を受けました。ポリオは世界全体での撲滅を目標としており、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリアの3か国を除くすべての国で発生が阻止されています。ポリオの清浄国でも輸入感染が起こりうるため、ポリオが完全に撲滅されるまでは、すべての国、特に紛争や政情不安がある国に、リスクが残されています。

ロタウイルス
 ロタウイルスは、世界中で、最も多く子どもに重篤な下痢症を起こす原因疾患です。ロタ・ウイルス・ワクチンは、2015年末までに84か国で導入され、世界での接種率は推定で23%となっています。

風疹
 風疹はウイルス性疾患で、子どもでは通常軽症です。しかし、妊娠初期に感染すると、胎児死亡や、脳、心臓、眼、耳が障害される先天性風疹症候群を起こすことがあります。風疹ワクチンは、2015年末までに147か国において全国規模で導入され、世界での接種率は推定で46%となりました。

破傷風
 破傷風は、不潔な傷口や清潔に保たれていない臍帯のような、酸素に触れない状況下で増殖する細菌によって起こされます。破傷風菌は重症の合併症を起こし、死へと導く毒素を産生します。2015年末までに、母親と新生児の破傷風を予防するためのワクチンが106か国で導入されました。推定で83%の新生児がワクチン接種によって予防されました。母親と新生児の破傷風は、主にアフリカ及びアジアの19か国では、依然として公衆衛生上の問題として残っています。

黄熱
 黄熱は感染した蚊を介して感染する急性ウイルス性出血熱です。2015年の時点で、黄熱に感染するリスクのあるアフリカ大陸及びアメリカ大陸42か国と地域のうち35か国と地域において、黄熱ワクチンが幼児の定期接種に組み込まれました。

課題に向けた要点

 昨年、予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会(SAGE)は、予防接種の接種率向上の結果を達成させるための5つの要点を示しました。

・データの品質(信頼性)と活用
・地域活動の関与
・辺境の地や接種から取り残された人々に対する予防接種への利用環境の向上
・強固な医療体制
・いつ、如何なるときも利用できるワクチン接種環境

 2015年には、世界で推定1,940万人の幼児がDPT 3種混合ワクチンなどの定期の予防接種を受けられませんでした。これらの子どものおよそ60%は、アンゴラ、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、インドネシア、イラク、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ウクライナの10か国に住んでいます。

 地方(subnational)レベルでデータを管理することは、それぞれの国が優先順位を付け、予防接種のギャップに取り組み、いのちを救うことのできるワクチンをすべての人に届けるための地域に合わせたワクチン接種戦略を支援するために重要です。

WHOの取り組み

 WHOは、2012年5月の世界保健総会で採択されたこれらの率先すべき取り組みを含め、世界全体のワクチンの接種率を改善するために国や関係機関と連携して取り組んでいます。

世界ワクチン接種行動計画
 世界ワクチン接種行動計画(The Global Vaccine Action Plan:GVAP)は、ワクチンの接種環境をより公正なものに整備し、何百万もの人々を感染による死から保護するロードマップ(工程表)です。各国は、2020年までに、全国(平均)で90%以上、すべての地域で80%以上のワクチン接種率の達成を目標としています。GVAPは、ワクチンで予防可能となるすべての疾患の制御を促進しながら、その試金石としてポリオの根絶を最初の目標に設定しています。GVAPは、次世代ワクチンの研究・開発の促進も目標としています。

 WHOは、GVAPを実行するために国と地域を支援する取り組みを進めています。2016年4月に、WHOは、活用されていないワクチンの導入を十分に進めるという目標を除いて、GVAPの6つのうちの5つの目標が達成されていないことに警鐘を鳴らしました。この結果は、予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)による独立した評価報告書に基づいて下されました。

 GVAPは予防接種のギャップを埋めるために3つの鍵となる手順を推奨しています。

・母親と赤ちゃんのための産後検診のような、その他の保健サービスと予防接種を統合すること
・医療体制は危機のときでさえもワクチンが提供され続けるように強化しておくこと
・誰もがワクチンを利用でき、それらに余裕をもって支払える金額のワクチンを確保すること

世界予防接種週間
 WHOと加盟団体は、毎年4月の最終週を世界予防接種週間としています。ここでは、自分自身と自分の子どもたちに致命的な疾患に対するワクチンを接種することを世界中の人々に奨励しながら、予防接種がどのように生命を守っているかという国民意識を高めることを目指しています。

 2016年は、"Close the immunization gap(予防接種のギャップを埋める)"という世界に向けた標語の下で、キャンペーンでは生涯のうちに全ての予防接種を受けることに焦点を当てています。180以上の国と地域で、その週には予防接種キャンペーン、訓練のためのワークショップ、円卓会議、一般市民への情報提供キャンペーンを含む活動を確認しました。

出典

WHO.Fact sheet, Media centre. Reviewed March 2017
Immunization coverage
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs378/en/