2017年のニュース

下痢症について (ファクトシート)

2017年5月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

下痢症は、5歳未満の子どもでは死亡原因の第2位となっています。下痢症は、予防も治療もできる疾患です。
毎年、5歳未満の子ども52万5,000人が下痢症でいのちを亡くしています。
下痢症の割合の多くは、飲み水の安全や十分な上下水道の衛生環境によって防ぐことができます。
世界では、毎年、17億人の子どもが下痢症を起こしています。
下痢症は、5歳未満の子どもでは栄養失調の原因の第1位となっています。

概要

 下痢症は、5歳未満の子どもで死亡原因の第2位となっており、毎年、5歳未満の子ども52万5,000人が下痢症でいのちを亡くしています。下痢症は、何日も続くことがあり、生きるために必要となる水分や塩分を(身体に)留めておけない状態にします。過去には、ほとんどの人で、重度の脱水や体液の喪失が主たる死亡の原因となっていました。(しかし)現在では、細菌による敗血症など、その他の原因が下痢症に関連する死亡原因の割合を増やしてきているようです。栄養障害や免疫障害のある子ども、並びにHIV感染者では、下痢症はいのちを脅かす大きなリスクとなっています。

 下痢症は、1日に3回以上(一般に普通とされるよりも多い回数)の軟便または水様便の排泄と定義されています。正常便の頻回の排泄や、母乳で育てられている乳児における緩やかな"ペースト状の"便の排泄は、下痢症ではありません。

 下痢症は、通常、腸管における感染症状です。下痢症は、さまざまな細菌、ウイルス、寄生虫によって引き起こされます。感染は、(原因物質で)汚染された食べ物や飲み水、粗末な衛生環境が導く結果として、人から人へと拡がります。

 飲み水の安全性、改善された衛生環境での生活、石鹸による手洗いなど、下痢症を予防するための介入で、下痢症のリスクを下げることができます。下痢症は、清潔な水に、砂糖、塩分を溶かした経口補水液で治療することができます。また、10日から14日間、補助薬として亜鉛錠剤20mgを補給する治療方法は、下痢症の期間を短縮し、転帰を改善させます。

 下痢症には臨床上3つのタイプがあります。
・急性水様性下痢症:数時間から数日間続き、コレラも(これに)含まれます。
・急性血性下痢症 :赤痢とも呼ばれます。
・遷延性下痢症  :14日以上(下痢が)続きます。

下痢症の問題の展望

 下痢症は、世界の子どもの罹患と死亡の原因の第1位となっています。ほとんどの場合、(原因物質で)汚染された食べ物や飲み水が感染源です。世界では、7億8,000万もの人が改善された飲み水の利用環境を得られず、25億もの人が改善された衛生環境を得られずにいます。感染による下痢症は、発展途上国では瞬く間に拡がります。

 低所得国では、3歳未満の子どもが年に3回は下痢症を経験しています。それぞれの感染が子どもたちから成長に必要な栄養素を奪い取ります。結果として、下痢症は、栄養失調の大きな原因となり、栄養失調の子どもたちは下痢症からさらに病気へと陥ります。

脱水症

 下痢症で引き起こされる最も恐ろしい病態は脱水症です。下痢症に陥ると、水分や電解質(ナトリウム、塩化物、カリウム、重炭酸塩など)が、水様の便、嘔吐物、汗、尿、呼吸によって失われます。脱水症は、失われたこれらの物質が補充されないときに起こります。

 脱水の程度は、3段階で評価されます。

1.重度の脱水(少なくとも次の2つの兆候を含む)
・昏睡状態/無意識
・くぼんだ目
・飲水ができない、できても貧弱である
・皮膚を摘んでも非常にゆっくりしか戻らない(≥2秒)

2.脱水症状(以下の症状のうちの2つ以上を含む):

・不穏、落ち着きのなさ
・くぼんだ目
・盛んに(水分を)摂ろうとする、喉が渇わく

3.脱水症状がない(脱水症状のいくつか又は重度度が分類するのに十分な徴候でない)。

原因

 感染症:下痢症は、細菌、ウイルス、および寄生虫の宿主となることによって引き起こされる感染症状です。そのほとんどは、糞便で汚染された水によって広がります。上下水道などの適切な衛生環境、飲み水、調理や掃除のための清潔な生活水などが整わないときに、感染症は発生しやすくなります。低所得国では、ロタウイルスや大腸菌が中等度から重度の下痢症を起こす最も一般的な病因菌2つです。クリプトスポリジウムや赤痢菌など、この他の病原体も重要です。地域に特異的な病原菌の分布も考えておかなければなりません。

 栄養失調:下痢症でいのちを亡くす子どもたちは、しばしば根本的に栄養失調に悩まされており、下痢に罹りやすくなっています。下痢症への罹患頻度が多くなると、栄養失調はますます悪化します。下痢症は、5歳未満の子どもにおける栄養失調の主要な原因です。

 感染源:下水、浄化槽、トイレなど、人の排泄物で汚染された水には、特に(感染への)懸念があります。動物の糞にも下痢の原因となる微生物が含まれています。

 その他の原因:下痢症は人から人へと広がり、個々人の衛生への意識がないと事態を悪化させます。食べ物も、衛生状態の悪い環境で調理や貯蔵が行われていると、下痢症のさらなる大きな原因となります。安全性を欠いた生活水の貯蔵や取り扱いも大きな危険因子です。(原因物質で)汚染された水とともに獲られた魚や海産物も下痢症の原因となります。

予防と治療

 下痢症を予防するには、次のような対策が重要となります。
・清潔な飲み水を利用できる環境
・改善された衛生設備の使用
・石鹸での手洗い
・誕生から最初の6か月間は、母乳で育児をすること
・確かな個々人の清潔意識と適正な食品衛生
・感染の広がり方についての健康教育
・ロタウイルスのワクチン接種

 下痢症を治療するためには、次のような対策が重要となります。
・経口での脱水の解消:経口補水液(ORS)の使用。経口補水液は、清潔な水、塩分、砂糖を混ぜた物です。1回の治療は数セントに過ぎません。経口補水液は小腸で吸収され、糞便で失われた水と電解質を補充します。
・亜鉛サプリメント:亜鉛サプリメントは、下痢症に罹患している期間を25%短縮し、便の量を30%減らします。
・点滴による脱水の解消:重度の脱水やショック状態の場合には、静脈内への点滴投与を行います。
・栄養豊富な食品:下痢に罹患している間は、母乳等の栄養素に富む食物を与え続けることで、また、回復期に入った小児には、生後6か月間を母乳だけで育てる等、滋養のある食事を与えることで、栄養失調と下痢症の悪循環を断ち切ることができます。
・医療専門家への相談:下痢症が遷延するときや、血液が混じる場合、また、脱水症状の兆候がある場合には、専門家に相談することが必要です。

WHOの取り組み

 WHOは加盟国や支援組織と協力して、次のような活動を行っています。

・下痢症およびその合併症の患者管理を支援するための国の政策および投資を促進させるとともに、開発途上国での飲み水の安全性および衛生設備の利用環境を充実させていくこと
・この分野における下痢症の予防および管理への戦略を作成し、実施のための研究を行うこと
・衛生環境、水源の改善、生活水の取り扱いと安全な貯蔵など、予防的な介入を実施する際の対処能力を構築しておくこと
・ロタウイルスの予防接種など、新しい健康維持への介入手段を開発しておくこと
・医療従事者、特に、地域活動レベルで、彼らの訓練を支援すること

出典

WHO. Fact sheet, Media Centre. Updated May 2017
Diarrhoeal disease
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs330/en/