2017年のニュース

ラッサ熱 (ファクトシート)

2017年7月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

ラッサ熱は、2-21日にわたり出血を伴う急性ウイルス性疾患です。西アフリカで発生がみられます。
ラッサ・ウイルスは、げっ歯類の尿や糞でウイルスに汚染された食物や日用品に触ることで人に感染します。
人から人への感染や検査施設内での感染も起こります。特に、十分な感染予防と制御への対策を欠いた病院内で発生しています。
ラッサ熱は、ベナン、ガーナ、ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、ナイジェリアで風土病として知られています。おそらくは、同様に、その他の西アフリカの国々でも(この病気が)存在しています。
ラッサ熱全体での致死率は1%です。重症のラッサ熱入院患者で調べられた致死率は15%です。
水分の補給と症状の軽減に対する早くからの対症療法が生存率を改善します。

背景

 この疾患は、既に1950年代には報告されていたものの、ラッサ熱を起こすウイルスは1969年まで発見されませんでした。ウイルスはArenaviridae(アレナウイルス)科に属する一本鎖RNAウイルスです。
 ラッサ・ウイルスに感染した人の約80%は発症しません。感染者の5人のうち1人が重症となり、ウイルスが肝臓、脾臓、腎臓などのいくつもの臓器を侵します。
 ラッサ熱は、感染した動物に人が接触したことで感染する人畜共通感染症です。ラッサ・ウイルスを保有する動物もしくは宿主は、一般にマストミスラット(多産のネズミの意味)として知られるマストミス属のげっ歯類です。ラッサ・ウイルスに感染したマストミスラットは(自分自身は)発病しませんが、尿や糞でウイルスをばらまきます。
 この疾患の臨床経過は非常に多彩です。そのため、感染者からこの疾患を発見することは困難です。しかし、地域社会でこの疾患が確認された時には、速やかな患者隔離、感染からの適切な保護および感染予防措置の実行、厳重な接触者の追跡で、流行を阻止します。
 ラッサ熱は、(2014年11月に初めて診断された)ベナン、(2011年10月に初めて診断された)ガーナ、ギニア、リベリア、(2009月2月に初めて診断された)マリ、シエラレオネ、ナイジェリアで風土病として知られています。おそらく、同様に他の西アフリカ諸国にも存在しています。

ラッサ熱の症状

 ラッサ熱の潜伏期間は6-21日間です。この疾患を発症すると、症状は、通常ゆっくりと、発熱、脱力感、全身倦怠感で始まります。数日後には、頭痛、咽頭痛、筋肉痛、胸痛、嘔気、嘔吐、下痢、咳および腹痛が続きます。重症例になると、顔の浮腫、胸水の貯留、口、鼻、陰部や消化管からの出血が起こり、血圧低下が進行します。
 タンパク尿が出ることもあります。その後の段階では、ショック、痙攣発作、振戦、見当識障害、昏睡などがみられます。この疾患から回復した患者のうち、難聴が25%で発生します。これらの患者の半数は1-3か月後に聴力の一部が回復します。回復中に、一時的な脱毛や歩行障害が現れることがあります。
 通常、致死的な症例での死亡は発症から14日以内に起こります。この疾患は、特に妊娠後期に重症化することが多く、第3期の妊婦患者の80%以上で死亡および/または胎児死亡が起こります。

感染経路

 通常、人は感染したマストミスラットの尿または糞と接触することによってラッサ・ウイルスに感染します。ラッサ・ウイルスは、ラッサ熱感染者の血液、尿、糞便、その他の分泌物に直接触れることでも、人から人へと拡がります。人と人との間で飛沫感染を裏付ける疫学的証拠はありません。人から人への感染は、ウイルスが地域社会においても医療施設内でも発生します。そこでは、注射針の再使用のように汚染された医療器具によって感染が拡大します。ラッサ・ウイルスは性行為でも感染することが報告されています。
 ラッサ熱は、男女ともすべての年齢層で発生します。日常的にマストミスが発見される農村地域に住む人、特に衛生設備が不十分で密集した生活条件の地域環境に住む人は、リスクが最も高くなります。医療従事者が、適切な防護仕切りを使った看護も感染予防措置の実践も欠いた環境でラッサ熱患者の治療に当たるならば、感染の危険は高くなります。

診断

 ラッサ熱の症状は非常に多彩で特徴がないので、臨床診断、特に臨床経過の初期段階での診断は、しばしば困難となります。ラッサ熱は、エボラ出血熱並びにその他のウイルス性出血熱と区別することができません。マラリア、細菌性赤痢、腸チフス、黄熱などの発熱性疾患との鑑別も困難です。
 確定診断には、基準認定検査施設でのみ検査できるようにすることが必要です。検査施設における検体は非常に危険であり、細心の注意を持って取り扱われる必要があります。ラッサ・ウイルス感染症は、検査施設で下記の診断法を用いたときにのみ確定診断が可能です。
リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法
酵素結合免疫吸着法(ELISA)
抗原検出検査
培養細胞によるウイルス分離

治療と予防投与

 抗ウイルス薬リバビリンは、臨床経過の早い段階で投与されれば、ラッサ熱に対して有効と思われます。ラッサ熱に対する暴露後予防薬としてのリバビリンの有効性を支持する証拠はありません。
 現在、ラッサ熱に対して有効なワクチンはありません。

感染の予防と制御

 ラッサ熱の予防は、家庭に侵入するげっ歯類を阻止するために、適切な「地域社会での衛生環境づくり」を推進することに依存します。効果的な対策には、ネズミ対策容器での穀物やその他食材の保管、住居から遠く離れた場所でのごみの処分、清潔な家庭環境の維持、猫の飼育があります。マストミスは流行地域では非常に数が多いので、それらを完全に環境内から駆除することはできません。病人を看病している間は、家族は常に血液や体液との接触を避けるように注意を払う必要があります。
 予想される診断にかかわらず、医療施設で患者の治療に当たるときに、医療スタッフは常に標準的な感染予防・制御措置を取る必要があります。これらには、基本的な手洗いの衛生環境、呼吸器に対する衛生環境、個人保護具の使用(飛沫や感染した他の物品との接触を断ち切るため)、安全な取り扱いでの注射の実施と安全な埋葬の実践などが含まれます。
 ラッサ熱が疑われた又は確定した患者の治療に当たる医療従事者は、患者の血液や体液さらには衣類や寝具などのウイルスで汚染された表面物または物品との接触を避けるために、追加の感染予防・制御処置を取る必要があります。ラッサ熱患者(1メートル以内)に近づく場合、医療従事者は、顔の保護(顔面シールドまたは医療用マスクとゴーグル)、清潔で長袖のガウン(滅菌までは不要)、手袋を着用しなければなりません(清潔な手袋についてはいくつかの操作手順が必要)。
 検査施設での検査技師には(感染の)リスクがあります。ラッサ・ウイルス感染の研究調査のために人や動物から採取した検体は、訓練を受けた技師が扱い、設置基準を満たした検査施設で、手順にしたがって処理されるべきものです。
 稀なことですが、ラッサ熱が流行している地域からやって来た渡航者が、他国に疾患を感染輸出することがあります。マラリア、腸チフス、及びその他多くの熱帯感染症の方がはるかに一般的ですが、ラッサ熱の診断は、西アフリカから帰国した有熱者、特にラッサ熱の風土病が知られている国で農村地域や病院で(ウイルスと)接触機会があったならば、その患者では(この疾患の診断が)念頭に置かれるべきです。ラッサ熱が疑われる患者を診る医療従事者は、速やかに地元および国の専門家に連絡し、助言を求め、検査施設での検査を手配すべきです。

WHOの取り組み

 ギニア、リベリア、シエラレオネの各保健省、WHO、米国の外国災害援助事務局、国連、及びその他の支援者らは、マノ川同盟ラッサ熱ネットワークを設立するために、ともに取り組んできました。この計画は、3か国による国家の感染予防戦略を作成し、ラッサ熱やその他の危険性のある疾患の検査診断を向上させる取り組みを支援しています。支援には、検査診断の訓練、臨床の管理、および環境の予防処置などがあります。

出典

WHO. Media centre. Fact sheet. Reviewed July 2017
Lassa fever
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs179/en/