ポリオウイルスの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第14回会議でのWHO声明

2017年8月3日 WHO (原文[英語]へのリンク

国際保健規則[IHR(2005)]に基づき、ポリオの国際的感染拡大に関する第14回緊急委員会が、事務局長の要請によって委員会委員、アドバイザー、招集された加盟国の代表者らが招集され、2017年8月3日にテレビ会議によって開かれました。

緊急委員会では、野生型ポリオウイルス1型(WPV1)とワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の感染伝播についての資料が検討されました。事務局は、感染の発生しているIHR加盟国での一時勧告の実施状況について報告書を提出しました。また、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、パキスタン、シリアのIHR各加盟国からは、前回2017年4月24日に開かれた委員会以降の一時勧告の実施状況についての更新情報が提出されました。

野生型ポリオ

全体の状況として、委員会は、野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の感染が発生している3か国、パキスタンとアフガニスタン、ナイジェリアで、引き続き着実な進展がみられていること、世界で(ポリオ)患者数が低下し、この3か月に国際的に新たに(感染の)拡大が見つかった国のなかったことに安堵の意を示しました。これら3か国における感染伝播の減少は、国際的な(感染の)拡散リスクを低下させています。しかし、一方で、万が一にも拡大が発生すれば、根絶は深刻な後戻りを示し、公衆衛生上のリスクとなることを示しています。

委員会は、2017年に患者数がこれまでに僅か3人にまで減ったパキスタンの取り組みを評価しました。しかし、国内での環境調査が強化され、前年よりも検出される確率が高くなっていることで、現在は(検出数が)高くなっているであろうとはいえ、地図の分布上では、野生型ポリオウイルス1型(WPV1)が環境調査での検出されており、拡がり続けています。委員会は、(ワクチン接種の)利用環境が大幅に改善され、補完的な予防接種活動(SIA)の質が着実に向上していることを話題に上げました。

委員会は、アフガニスタンで(ワクチン接種を)利用できない子どもの数が減少していることを歓迎しました。しかし、前回の委員会で、新たに野生型ポリオウイルスに感染した患者がKandahar(カンダハ-ル州)とHilmand(へルマンド州)で発生したことから、アフガニスタンの南部地域には、ポリオ(根絶)計画(の援助)が到達しておらず、慢性的に(ワクチン接種を)見過ごされている子どもたちによるポケット状態の場所があることが明らかとなりました。

両国の国境に沿った協力のレベルは非常に良い状態です。ここでの主な課題は、両国の間で共有されているポリオウイルスの保菌者がいることです。ここには、遊牧民、国境を跨いで暮らす地元住民、季節労働者やその家族、(公式と非公式の)難民からの帰還民、疎開して暮らす子どもたち(国境を越えて親戚と一緒に暮らす子どもたち)といった、感染リスクの高い、移動する人々がいます。これは、根絶を達成するには連携と調整が絶対的に不可欠であることを示唆しています。委員会は、両国に2国間でのポリオ根絶活動を継続し、高めていくことを求めました。

委員会は、2016年8月以降、ナイジェリアで野生型ポリオウイルス1型(WPV1)患者が確認されていないことを議題として上げました。しかし、Borno(ボルノ)州には、完全に又は部分的に立ち入ることのできない地域があり、(そこには)依然として約25万人の子どもたちを含む住民が暮らしています、これらの住民が暮らす地域に入ることはポリオ根絶の活動にとって非常に重要ではありますが、ポリオ根絶のために働く人々やボランティアに危険をもたらす可能性があります。そこには治安上の大きな危険があると認識されています。ナイジェリア政府は、既に、この問題に対して革新的かつ多面的な(解決への)アプローチを行っています。このような革新的(取り組み)が続けられることが必要です。また、ナイジェリアは、(空港を含む)国境、この他にも経由地、国内避難民(IDP)キャンプ、および遊牧民が暮らすその他の地域などで、引き続き、着実に予防接種を行うための取り組みを行っていることを報告しました。それでも、(ワクチン接種が)可能なところではどこでも恒常的に国境での予防接種を行うための役職を置いておくなど、こういった取り組みがさらに強化されることが必要です。

チャド湖盆地の周辺地域では、国内避難民(IDP)や難民が集まり、(医療)サービスが不足することにともない、政情が不安定なことの影響を受けているすべての国で(感染への)懸念が続いています。ナイジェリアから、チャド湖盆地の周辺地域、さらには遠く離れたアフリカ・サハラ以南の地域にかけて、(感染が)国際的に広がる危険性は依然として高い状態です。(このため)委員会は、ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェール、中央アフリカ共和国(CAR)を含めたチャド湖盆地の周辺諸国が、引き続き、予防接種と調査活動への地域間の協力体制に関わることを要請しました。しかし、ボルノ州と国境を接する地域にあるこれらの国のいくつかの地区では、住民の免疫応答に著しい格差が存在します。

ワクチン由来ポリオウイルス

委員会は、コンゴ民主共和国とシリアでのワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の新たな感染が発生したことに大きな懸念をいだきました。これらの感染の発生は、紛争や地理的に遠隔の地にあるために、ワクチンを接種できない地域で、感染に罹りやすく免疫の備わっていない人々が存在することが明らかとなりました。さらに、しばしば紛争や混乱に関連して、これらの感染発生の発見に遅れが出ることは、世界のさまざまな地域で、調査活動が(実際の)医療体制に対して深刻な解離のあることを示しました。

感染の発生地域を取り巻く国々、特に、レバノン、ヨルダン、トルコでのシリア難民からの感染輸入を防ぐために、シリアでの流行への対策が行われています。委員会は、シリア難民、特に、Deir Ez-ZorとRaqqaから来た難民を受け入れているすべての国に、確実にポリオワクチン、使用可能であれば不活化ポリオワクチンを接種することを要請しました。(一方)コンゴ民主共和国では、調査活動と(実態と)の解離に、包括的かつ継続可能な対策に取り組むことが必要です。

国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に対する結論

委員会は、ポリオの国際的な感染拡大が、現在も国際的な懸念に関する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)にあることに全会一致で合意し、さらに3か月間一時勧告を延長することを勧めました。委員会は、この結論に達する中で以下の点について議論しています。

●住民の移動により(感染)拡大のリスクは潜在していること。リスクは、家族的、社会的、文化的な理由、政情不安により移ってきた移住民、帰還する避難民の状況、遊牧民、に潜在し、これらのリスクに取り組むための国際協力の必要性、特に、アフガニスタンとパキスタン、ナイジェリアとチャド湖周辺諸国、シリア周辺の国々の間での協力の必要性となります。
●2017年に記録された野生型ポリオウイルス1型(WPV1)患者の発生は、これまでで最も少なく、今まで以上にポリオ根絶に近づいた歴史上かつてない特別な状況にあること。
●世界で、最も深刻な病態を起こす疾患のひとつでありながら、ワクチンでの予防が可能な疾患の一つを地球上から根絶する、そのことに失敗したときに生じるリスクは、結果としての莫大な費用につながること。世界規模での野生型ポリオウイルス1型(WPV1)の感染伝播は劇的に減少し、国際的に拡大する可能性が低下しているものの、(一旦)国際的な拡大が起これば、その結果と衝撃は重大ものとなり、根絶の達成は大きく後退します。
●ポリオ患者数が減り続け、根絶が現実に迫ってきたことで、世界で自己満足が起こる危険性があること。
●ナイジェリアでの野生型ポリオウイルス1型(WPV1)(およびワクチン由来ポリオウイルス)の感染発生は、(医療支援への)利用環境がなく、調査活動にも妥協が余儀なくされ、数年間も野生型ポリオウイルスの感染伝播が発見されない状況にある高いリスクの地域が存在することが明らかにされたこと。チャド湖周辺地域は感染伝播のリスクが高いと思われます。
●紛争や複雑な緊張状態によって予防接種体制が弱体化し崩壊した国が増えると、国際的な感染へのさらなる拡大に深刻な社会的影響をもたらすこと。これらの政情不安定な地域に住む人々は、ポリオに集団感染しやすくなっています。政情不安定な地域での感染の発生は感染の制御を極めて難しくさせ、最終局面で、世界からポリオを根絶することの完結を脅かします。
●たくさんのポリオの国際的な拡大が国境を越えて発生してきたため、広域での感染対策の推進と国境での協力体制の強化が重要となること。一方で、ポリオの感染伝播が活発な地域から遠隔地にも、感染が国際的に拡大するリスクがあることへの認識が必要なこと。
●さらに、ワクチン由来のポリオウイルスに関して以下の点について議論しています。
・ワクチン由来のポリオウイルス(cVDPVs)は国際的に拡大するリスクを保っており、適切な措置と緊急の対策を講じなければ、特に、既に述べられたような感染しやすい人々には脅威となること
・紛争を逃れるために住民が移動を続けている状況において、イラクとの国境に近いシリアの狭い地域で短時間に、たくさんの患者が発生したことは、国際的な拡大へのリスクを相当に高めていること
・ナイジェリア、パキスタン、シリア、コンゴ民主共和国で(発生が)続いているワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の感染伝播は、ポリオ(根絶)の最終段階における重要な時期にも、人々の免疫応答能にある大きな解離の存在を示していること
・2016年4月に2型の経口ポリオワクチンを世界同時に撤退させたことで、ワクチン由来のポリオウイルス2型(cVDPV2)への予防には引き続き緊急性があること
・政情の不安定やその他の緊急事態からの影響を受けている地域では、定期予防接種を向上させる取り組みを継続させるべきこと
・世界中での不活化ポリオワクチンの不足は、ワクチン由来ポリオの新たな脅威となること

リスクの分類

委員会は、リスク分類に基づいて、野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来のポリオウイルスの国際的拡大のリスクを軽減することを目的とした以下の助言を事務局長に提出しました。
●国際的に(感染が)拡大する潜在的リスクに基づき、野生型ポリオウイルス1型、または、ワクチン由来ポリオウイルス1型か3型の感染が発生している国
●ワクチン由来ポリオウイルス2型の感染が発生しており、国際的にリスクが拡大する可能性のある国
●もはや野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していないが、野生型ポリオウイルス又はワクチン由来ポリオウイルスへの感染に脆弱な国

野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していない国の評価基準
●ポリオウイルス感染者:最新の感染輸出による最初の症例が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月、もしくは、最新の感染輸入により発生した直近の患者から12か月以内に発症し報告された急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対し検査され、新たに感染輸入された野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、最初の患者から12か月以内に集められた環境サンプルも陰性となり、何れもがさらに長く続いているとき。
●感染輸出された野生型ポリオウイルス1型もしくはワクチン由来ポリオウイルス(ポリオウイルス患者を除く)の環境下からの分離:新たに感染輸出を受けた国の環境下での最初の陽性検体の採取に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。
●これらの判断基準は、厳格さを増した調査活動での評価(例えば、ボルノ州)が必要とされる(感染の)常在国では変わることもあります。

これらの判定基準で、もはや感染がないとの基準を満たす国は、さらに12か月間は、(感染に対し)脆弱であるとみなされます。この期間を経た後に、最終報告書に基づき、委員会が懸念はないと判断すれば、以後、その国は一時勧告に従う必要がなくなります。

一時勧告について

国際的に(感染が)拡大する潜在的リスクに基づき、野生型ポリオウイルス1型、または、ワクチン由来ポリオウイルス1型か3型の感染が発生している国

(現在は、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリア)

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
●もし、宣言がなされていないならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急事態であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急事態の状態が維持されるべきです。
●全ての年齢を対象に、全ての住民および4週間以上の長期滞在者は国際渡航の12か月前から4週間前までに2価の経口生ポリオワクチン(bOPV)又は不活化ポリオワクチン(IPV)の接種1回を受けていることを確認すべきです
●4週間以内に急な旅行を行う人々で、12か月前から4週間前までに経口生ポリオワクチンもしくは不活化ポリオワクチンを接種していない人には、出発までに1度はポリオワクチンを接種していることを確認すべきです。これでも、有益性があります。特に、これは頻繁に旅行する人に当てはまります。
●そのような渡航者には、ポリオワクチンの接種記録として、IHR(2005)別添6で明記された国際予防接種証明書または予防接種の証明書が発行されていることを確認すべきです。
●適切なポリオ予防接種の書類を欠いたままでは、いかなる人にも出発の時点で海外渡航を制限すべきです。これらの勧告は、渡航の手段(例えば、陸、空、海)に関係なく、すべての出発地から海外渡航する者に適用されるべきです。
●これらの国は、国境を越える旅行者や国境周辺に住むハイリスクの人々へのワクチンの接種率を大幅に高めるために、国、地域、地方レベルで連携して大きく(環境を)向上させることによって、国境を越えた取り組みをさらに強化する必要があります。国境での連携の向上には、国境通過の際にワクチン接種の状況を確認するための管理を強化するとともに、国境を越えた後にワクチン未接種が確認された旅行者の割合を追跡することなどが含まれている必要があります。
●これらの対策は以下の基準が達成されるまで継続されるべきです。(i)新たな感染輸出がなく、少なくとも6か月を経過すること、(ii)すべての感染地域やハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施されたことの証拠となる書類が作成されていること、そのような書類がない場合には、その国がもはや感染がないことを評価する上記の基準を満たすまで、これらの対策が継続されること。
●海外旅行に関する一時勧告の実施状況の報告書を事務局長に提供する必要があります。

ワクチン由来ポリオウイルス2型の感染が発生しており、国際的にリスクが拡大する可能性のある国

(現在は、コンゴ民主共和国、パキスタン、ナイジェリア、シリア)

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
●ポリオウイルス2型への感染に対応するためには、(他の対策から)切り離した体制が必要であることに留意して、2型単価の経口生ポリオワクチンに対する諮問グループの勧告に基づき、世界規模で備蓄中の2型単価の経口生ポリオワクチンの要請を検討する必要があります。
●もし宣言していなければ、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急事態であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急事態の状態が維持されるべきです。
●全ての住民と4週間以上の長期滞在者は(もし国内での使用が可能ならば)海外渡航の12か月前から4週間前までに不活化ポリオワクチン(IPV)の接種1回を受けることを推奨すべきです。4週間以内に急な旅行を行う人々でも、出発までに1回は(ポリオワクチンを)接種することを推奨すべきです。
●そのようなワクチン接種を受けた渡航者がポリオワクチンを接種している状況の記録を示す適切な文書を所有していることを確認すべきです。
●諮問グループからの助言に基づき、ポリオウイルスの早期発見のための調査活動を強化し、難民、旅行者、国境を越える人々にワクチンを接種するために、国境を越えた地域協力の体制を強化することが必要です。
●これらの対策は以下のような基準が達成されるまで継続されるべきです:(i)少なくとも6か月間、国内のどのような検査検体からもワクチン由来ポリオウイルス2型の感染伝播が検出さずに経過すること、(ii)すべての発生地域とハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施された証拠となる書類が作成されていること。そのような書類がない場合には、その国が「もはや感染がない国」を評価する基準を満たすまで、これらの対策は継続されること。
●感染伝播の証拠なく12か月間を終えたときには、一時勧告を実行するために取られた対策の報告書を事務局長に提供する必要があります。

もはや野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していないが、野生型ポリオウイルス又はワクチン由来ポリオウイルスへの感染に脆弱な国

野生型ポリオウイルス1型
・カメルーン(最後の感染発生は2014年7月9日)
・ニジェール(最後の感染発生は2012年11月15日)
・チャド(最後の感染発生は2012年6月14日)
・中央アフリカ共和国(最後の感染発生は2011年12月8日)

ワクチン由来ポリオウイルス
・ウクライナ (最後の感染発生は2015年7月7日)
・マダガスカル(最後の感染発生は2015年8月22日)
・ミャンマー (最後の感染発生は2015年10月5日)
・ギニア (最後の感染発生は2015年12月14日)
・ラオス(最後の感染発生は2016年1月11日)

これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
●人々の免疫応答能を増強するために、定期予防接種を早急に強化すること。
●検出されなかった野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来ポリオウイルスが伝播するリスク、特にリスクの高い移動民と感染に脆弱な人々のリスクを下げるために、調査活動の質を向上させること。
●移動する人々、国境を越える人々、国内避難民、難民やその他の感染に罹りやすい人々へのワクチン接種を確実に実施する取り組みを強化すること。
●野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来ポリオウイルスの速やかな発見とハイリスクの集団へのワクチン接種を確実に実施するために、地域協力と国境を越えた連携を強化すること。
●質の高い調査活動とワクチン接種活動へ全体を通した手順書を作成し、これらの対策を維持すること。
●野生型ポリオウイルス1型または新たに出現し伝播するワクチン由来ポリオウイルスの再侵入の痕跡なく12か月が経過したときには、一時勧告を実施するために講じた対策について事務局長に報告書を提出すること。

*チャド湖周辺の国々では、野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルス2型に最後に感染した患者のうち、いずれか最も新しい患者発生から12か月後になる予定です。最後の患者(上記)に基づき、報告書は、ミャンマーからは2017年11月に、マダガスカルからは2017年9月に、ギニアからは2017年1月に、ラオスからは2018年2月に提出される予定です。ウクライナの事例では、委員会は、最終報告書が提出されたものの、この報告書が、予防接種率が低いことが大きく影響し、野生型ポリオウイルスの感染輸入やワクチン由来ポリオウイルスの感染輸入もしくは出現のリスクが高いことが示されたことに懸念があり、議論が行われました。(その結果)委員会は、この国をこの分類に留めることを決定し、次回の委員会会議でその状況を再び検討することを要求しました。

その他の検討事項

事務局長Tedros博士は、緊急委員会に出席し、委員会からの勧告を聞きました。彼は、委員会の各委員やアドバイザーがくれた助言に謝意を示し、ポリオ根絶への状況を踏まえて、ポリオ患者は1例(の発生)でも緊急事態として扱うべきであることを議題に上げました。彼は、この委員会で委員によって検討されたすべての地図上の地域において、その地域下や多国間で連携しながらの対策が成功の機会を大幅に向上させていることを取り上げ、最終目標として患者ゼロを達成するために、世界がさらに積極的に対策に取り組む必要があると述べました。彼自身は、委員会による勧告でポリオの国際的な拡大を低下させるために必要なあらゆる支援を提供するために、事務局長として任命されたことを自認しました。

委員会は、ポリオ根絶の途中にある世界中の加盟国に対して、IHRに基づく一時勧告の実施に向けたポリオ根絶計画の重大な局面にあるすべての感染の発生している国および感染に脆弱な国、並びに、これまでに一時勧告の対象となっていたすべての国(ソマリア、エチオピア、イラク、イスラエル、赤道ギニア)に向けて、適切な支援を拠出することを強く要請しました。

委員会は、すべての国に、ポリオの再興につながる可能性のある自己満足を避けることを要請しました。特に、調査活動では、いかなる新しい感染伝播も速やかに発見するために慎重を重ねることが必要とされ、政情の不安定や調査できない場所の影響を注意深く評価する必要があります。同様に、事務局に対して、ワクチン接種が行き届いていないために、高い割合で接種を受けていない子どもがいる地域の住民と追跡調査し、次回の会議でこの問題に関する報告を含めることを要請しました。

野生型ポリオウイルス1型およびワクチン由来ポリオウイルスに関する現状と、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、パキスタン、シリアによって作成された報告書に基づき、事務局長は、委員会の評価を受け入れ、2017年8月3日に、ポリオウイルスに関する状況が、引き続き、野生型ポリオウイルス1型とワクチン由来ポリオウイルスの両方に対して、国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に該当すると決定しました。事務局長は、「国際的に(感染が)拡大する潜在的リスクに基づき、野生型ポリオウイルス1型、または、ワクチン由来ポリオウイルス1型か3型の感染が発生している国」、「ワクチン由来ポリオウイルス2型の感染が発生しており、国際的にリスクが拡大する可能性のある国」、そして「もはや野生型ポリオウイルス1型の感染もワクチン由来ポリオウイルスの感染も発生していないが、野生型ポリオウイルス又はワクチン由来ポリオウイルスへの感染に脆弱な国」の定義に合致する国に対する委員会の勧告に署名しました。そして、事務局長は、2017年8月3日から有効となるポリオウイルスの国際的な拡大のリスクを低下させるためのIHRの下での一時勧告を延長しました。

出典

WHO.Media center news.WHO Statements. 3 August 2017
Statement on the14th IHR Emergency Committee meeting regarding the international spread of poliovirus.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2017/14th-ihr-polio/en/