2017年のニュース

ヘビ毒の抗毒素について(ファクトシート)

2017年9月 WHO (原文[英語]へのリンク)

要点

・ヘビの咬傷の正確な数は不明ですが、毎年、約540万人がヘビに咬まれ、270万人がヘビの毒(の被害)を受けています。
・毎年、81,000〜130,000人がヘビの咬傷で死亡し、その約3倍の人々が、切断やその他にも永久的な身体障害を、ヘビの咬傷によって引き起こされています。
・毒ヘビからの咬傷は、呼吸筋の麻痺、致死的な出血となる血液障害、不可逆性の腎不全、永久的な身体障害や四肢の切断を引き起こす組織の損傷などをもたらします。
・農業従事者と子どもでの発生が最も多くなっています。子どもは、体重が大人よりも少ないために、しばしば深刻な(ヘビ毒の)の影響に苦しめられます。

世界の(ヘビ咬傷)の発生状況

 ヘビの咬傷は、熱帯および亜熱帯の国々において、公衆衛生上、顧みられることのない問題です。毎年、約540万人がヘビに咬まれ、ヘビ毒による患者が180万から270万人も発生しています。毎年、81,410〜731,880人がヘビの咬傷で死亡し、その約3倍の人々が、(ヘビの咬傷によって)切断やその他にも永久的な身体障害を起こしています。

 これらのほとんどは、アフリカ、アジア、ラテン・アメリカで発生しています。 アジアでは、毎年200万人がヘビ毒の被害を受けており、アフリカでは、年間435,000〜580,000件もの治療を要するヘビからの咬傷が発生しています。(ヘビ)毒は、低所得国や中所得国の貧しい農村地域に暮らす女性、子ども、農民に発生しています。医療体制が著しく弱く、医療の人的・物的資源が少ない国々では、(この問題は)最大級の負担となっています。

 毒ヘビによる咬傷は、呼吸に障害を起こす重度の麻痺、致死的な出血となる血液障害、不可逆性の腎不全、永久的な身体障害や四肢の切断を引き起こす重度の局所組織の破壊などをもたらします。子どもは、体重が大人よりも少ないために、しばしば深刻な(ヘビ毒の)の影響に苦しめられ、その影響も早く現れます。

 (ヘビ毒)以外がもつ多くの深刻な健康危機とは対照的に、(ヘビ毒には)非常に効果的な治療法があります。ヘビの咬傷による死亡や深刻な結末は、ほとんどが有効かる安全な抗毒素(血清)がより広い地域で入手可能となり、利用できる環境を整えられれば、完全に予防することができます。ヘビの咬傷による毒素の影響の多くを防ぎ、回復させるためには、品質の高いヘビ抗毒素(血清)が、唯一、有効な治療法となります。これらは、WHOの必須医薬品リストにも含まれており、ヘビの咬傷が発生する地域では、どんな場合でも最重要の医療体制における整備の一部でなければなりません。

抗毒素(血清)を生産することへの課題

 抗毒素の生産における大きな課題は、(ヘビ毒の)に正確に合った免疫抗原の準備です。現在、抗毒素(血清)の製造に適した品質のヘビ毒を生産することのできる国はほとんどなく、多くの製造業者が一般的な商業的ベースの供給源に依存しています。これら(のヘビ毒の免疫抗原)は、地理的にさまざまな分布をもつ幅広い種類からの毒素を反映していない可能性があります。また、ヘビの咬傷に深刻な問題を抱える国でも、抗毒素(血清)の管理能力が不足していれば、抗毒素(血清)の品質と適合性を評価できないこともあります。

 数々の要因が組み合わさって、現在の危機につながっています。ヘビの咬傷の人数や種類に関するデータは十分でないため、必要性を見積もることが困難です。さらに、流通政策を欠くことで、製造者が生産を停止したり、抗毒素の価格を上げたりすること原因ともなっています。貧弱な管理体制と適正を欠いた低品質の抗毒素の販売も、現場の医師、健康指導者、患者からは抗毒素の利用への信頼性を失わせ、需要を落ち込ませています。

弱い保健衛生体制と不足するデータ

 ヘビの咬傷が日常的な国のほとんどの保健衛生体制は、問題についての正確な統計データを集めるための基盤整備も人的・物的資源も不足しています。真の影響度を評価についても、多くの犠牲者が初期の医療施設に辿り着くことさえなく、そのために報告もされないことから、診療所や病院から保健省に報告される患者が実際の脅威の僅かな割合でしかないという現実があり、かなり複雑なものとなります。これは、多くの犠牲者が病院での治療よりも伝統的な経験に基づく処置を選んでいることから、社会・経済的および文化的な要因も、治療を受けることへの行動に影響を与えています。

 ヘビの咬傷の発生率および死亡率の報告の低さは、日常的です。例えば、ネパールでは、国民の90%が農村部に住んでおり、保健省には2000年に死亡者22人を含む480人のヘビ咬傷が報告されました。しかし、同年に、同じ地域(ネパール東部)の研究に基づいて集められた数値では、ヘビの咬傷が4,078件、死亡者が396人と詳述されました。同様に、2005年にインドで実施されたヘビの咬傷による死亡率に関する地域レベルの調査では、インド政府の公式統計よりも30倍も高い45,900人(99%CI:40,900-50,900)人の死者が真の推定値とされました。スリランカのある地区の病院で記録された死亡者数と(公的)記録部局からの死亡者数のデータとを比較すると、ヘビ毒により死亡した人のうち、病院のデータの62.5%(の人)が報告されていないことが明らかとなりました。

 ヘビの咬傷による毒素に関するデータが貧弱な状況では、抗毒素の必要度を正確に決めることは難しくなります。このことは、国の保健当局による抗毒素(血清)の必要度を過小評価へと導きます。そのことは、保健当局が、製造業者に抗毒素の生産を下げさせ、いくつかの業者には市場から撤退させることにもつながります。有効な製剤の不足は、抗毒素(血清)を評価し管理する専門家を不足させ、各国で(製品の)入手と分配が不適正になることの原因となります。

低い抗毒素の生産性

 需要が低いことから、過去20年の間に、いくつもの製造業者が生産を中止し、いくつかの抗毒素製剤の価格が急激に上昇しました。そのため、治療を必要としている多くの人々には余裕をもって支払いができなくなりました。また、価格の上昇は、需要を抑えこむことで抗毒素(血清)の利用可能な状況を大幅に低下させることとなり、一部の地域では利用できなくさせました。適正のない、検査もされていない、または偽薬の抗毒素製剤が市場に出回り、全般的に抗毒素(血清)による治療の信頼性を損なうことにもなりました。

 もし、速やかに強力かつ決定力のある行動が取られなければ、アフリカやアジアの一部の国では、抗毒素製剤の供給不足が差し迫ってくる、と多くの人が確信しています。

WHOの取り組み

 WHOは、この問題に関して保健当局と政策立案者の意識を高めるための措置を取り始めました。2015年12月には、サハラ以南のアフリカの国々での使用を想定した現在の抗毒素(血清)の安全性と有効性を評価するプログラムが、WHOによって開始されました。この技術上・検査上の評価の詳しい結果は、2018年早々にも公表される予定です。WHOは、いくつもの国連加盟各国からの要請を受けて、2017年6月に顧みられない熱帯病の最優先順位に蛇の咬傷を列挙しました。

 WHOは、規制当局、生産者、研究者、臨床医、全国および地域の保健担当局、国際機関および地域の活動組織に対して、ヘビの咬傷、抗毒素(血清)の管理規制の状況、各国の政策の浸透状況の分布に関して、信頼できる疫学データの利用環境を向上させるべく取り組むことを、各国に要請しています。

 適正な抗毒素の開発への指針となる2つのツールが公表されました。

・ヘビ抗毒素の免疫グロブリンの産生、管理、規制のためのガイドライン
Guidelines for the production, control and regulation of snake antivenoms immunoglobulins

・毒蛇の分布のデータベース
Venomous snake distribution database

 これらのツールは、以下のことを支援しています
・公衆衛生部局が、自国で何の抗毒素(血清)が必要かを確認し、国の公衆衛生政策のうち関係するものを策定することへ
・国の規制当局が、登録する抗毒素(血清)の優先順位を決定し、国民の公衆衛生上の必要度に合わせて、抗毒素の安全性、品質、有効性を評価することへ
・(抗毒素血清の)調達機関が、国内での治療の必要度に応じて適切な抗毒素(血清)を選定することへ
・抗毒素(血清)の製造者が、適正な抗毒素(血清)を生産・販売する計画を立てることへ
・現場の臨床医および保健医療の専門家が、蛇の咬傷の治療に当たることへ
・全国民が、自分たちが住む地域に生息する毒蛇に関する知識をもち、識別できるようにすることへ

出典

WHO. Fact Sheet, Mediacentre. Updated September 2017
Snake antivenoms
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs337/en/