2017年のニュース

ペストについて (ファクトシート)

2017年10月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

ペストは、ペスト菌(Yersinia Pestis)による人畜共通の感染症で、通常、小動物やそのノミから発見されます。
人がペストに感染すると、ほとんどは1-7日の潜伏期間を経て症状が現われます。
ペストには、大きくは2つの形態(原文どおりに記載)があります。腺ペストと肺ペストです。腺ペストは最も多くみられる形態で、有痛性リンパ節腫脹「横痃(おうげん:リンパ節の腫脹)」が現れます。
ペストは、動物と人との間では感染したノミが刺すことで、また、感染組織に直接触れたり、細菌を含んだ呼吸飛沫を吸い込んだりすることで伝播します。
ペストは、人に極めて深刻な病態を引き起こし、腺ペストでは死亡率が30%-60%にもなります。もし、治療しなければ、肺ペストは確実に死亡します。
2010年〜2015年には世界で3,248人の患者が報告され、このうち584人が死亡しました。
現在、最も流行している国は、マダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルーの3か国です。

概要

 ペストはペスト菌(Yersinia Pestis)による人畜共通の感染症であり、ペスト菌は通常、小さな哺乳動物やそのノミから発見されます。ノミを介して動物の間で感染が伝播します。人には、次のような経路で感染が伝播します。
・感染した媒介ノミによる咬刺
・感染力のある体液や細菌の付着した物に無防備に触れること
・肺ペスト患者の呼吸飛沫を吸い込むこと

 ペストは、人々に極めて深刻な病態を引き起こします。特に、敗血症(血液を介して細菌が全身に回る感染状態)や肺炎の病態では、治療しなければ、死亡率が30%-100%になります。肺ペストの場合、早期に治療しなければ致命的となることは避けられません。(このときの患者は)特に感染力が強く、空気中への飛沫を介して人から人へと拡がり、深刻な流行の引き金となります。

 2010年-2015年には世界で3,248人の患者が報告され、このうち584人が死亡しました。

 歴史的に、ペストは死亡率が高く、広範な地域でパンデミックを起こしていました。14世紀には「黒死病」として知られ、ヨーロッパでは5,000万を超える人々が死亡する原因となりました。今日では、ペストは抗生物質で簡単に治療され、感染の成立を防ぐために標準防護服の使用で対処されています。

感染徴候と症状

 人がペストに感染すると、通常1-7日の潜伏期間を経て非特異的な全身症状を伴う急性の発熱を呈します。その症状は、突然に発症する発熱、悪寒、頭痛や体幹痛、全身虚弱、嘔吐や嘔気などです。

 ペストには、感染の病態の違いから、腺ペスト、ペスト敗血症、肺ペストの3つがあります。
腺ペストは、ペストの最も一般的な病態で、感染しているノミに咬刺されることによって起こります。ペスト桿菌Y. pestisは、咬傷口から侵入し、リンパ管を通って移動して、最も近いリンパ節で増殖します。そのリンパ節は炎症を起こし、腫れて、疼痛を発します。これは、「横痃」と呼ばれています。炎症が進行すると、炎症を起こしたリンパ節が化膿し、穿破することがあります。
ペスト敗血症は、治療していない腺ペストに続いて、感染が血流を介して(全身に)広がったときに起こります。もしくは、初期の感染症状が顕在化してきます。出血した組織は(黒く変色し)壊死し、ショック状態を起こします。
肺ペスト(または肺を基にしたペスト)は、稀ですが、ペストの中で最悪の病態です。潜伏期間は24時間と短いこともあります。通常、肺炎型は腺ペストが進行して肺に広がることで起こります。しかし、肺ペストの患者は、飛沫を介して他の人にペストを伝播させることができます。もし、診断も治療されなければ、未治療の肺ペストは、すべて死に至ります。

ペスト発生地

 動物がもつ病気としては、ペストはオセアニアを除くすべての大陸で発見されています。 ペストは自然の中に一体の感染源(細菌、動物宿主、媒介昆虫)が存在し、人とも共存しています。

 自然界でペストの感染源が分布する地域(2016年3月現在)
 Global distribution of natural plague foci as of March 2016 pdf, 48kb

 ペストの流行は、アフリカ、アジア、南アメリカで発生してきましたが、1990年以降、ほとんどの患者はアフリカで発生しています。現在、(ペストが)最も流行している国は、コンゴ民主共和国、マダガスカル、ペルーの3か国です。マダガスカルでは、ほぼ毎年、9月から4月の流行シーズンに、腺ペストが報告されています。

ペストの診断

 ペストの確定診断には検査施設での検査が必要です。患者がペストであることを確定する最も確実な方法は、横痃の膿からの検体、または、血液や喀痰の検体でペスト菌を確認することです。(ペストに)特異的なY.pestis抗原は、いくつもの違った方法によって検出できます。そのうちの1つが、迅速ディップ・スティク・テストです。この方法は現場で実証されており、いまではWHOの支援を受けて、アフリカと南米で広く使われています。

治療

 肺ペストは、治療しなければ、急速に死に至るため、早期診断と治療が救命と合併症の抑制には不可欠です。抗生剤と支持療法は、患者の診断が間に合えば、ペストに有効です。肺ペストは、治療されなければ、病気の発症から18時間から24時間で致命的な状態に至ります。しかし、エンテロバクター科(グラム陰性桿菌)の細菌に有効な抗生物質が有効で、早期に投与できれば、病気から回復もします。

予防

 ペストの予防には、動物でペストが確認されたときに人々に(それを)周知し、ノミの咬刺への予防対策を取り、死んだ動物に触らないようアドバイスすることなどがあります。常識的に、人々には、感染した組織や細菌を含んだ体液に直接に触ることのないようにアドバイスが行われるべきです。感染している患者に触れる可能性のあるときや、検体を採取するときには、標準とされる予防対策を行うべきです。

予防接種

 WHOは、高リスク群(例えば、常に病原体に曝される危険のある検査室の従事者と医療従事者)を除けば、ワクチンを勧めていません。

ペスト流行の感染制御

感染源の発見および感染源の封じ込め:患者が(ペスト菌と)接触した地域で、最も可能性の高い感染源を特定してください。通常、大量の小動物の死亡個体が集団発生した地域を調査します。適正な感染の予防と制御の手順を制定します。媒介するノミを駆除し、げっ歯類を制御する手順も制定します。媒介するノミを駆除する前にげっ歯類を駆除しようとしても、ノミが新たな宿主に飛び移る原因を作ることになるため、これは避けるべきです。
医療従事者の保護:感染の予防と管理について医療従事者に周知してください。肺ペスト患者と直接接触する従事者は、個人用の防護具を着用し、接触機会があったときには最低限できるだけ長く、また7日間は抗生物質の予防投与を受けてください。
正しい治療の確実な実行:患者が適切な抗生物質による治療を受けられ、地域への抗生物質の供給量が十分であることを確認してください。
肺ペスト患者の隔離:肺ペスト患者は、空気中の飛沫によって他の人が感染しないように隔離してください。肺ペスト患者のマスクの着用は、飛沫の飛散量を減らすことができます。
調査活動:肺ペスト患者との濃厚接触者を確認し、健康状態を監視し、該当者には7日間の化学的予防投与を実施してください。腺ペスト患者の家族にも、化学的予防投与薬を提供してください。
適正な感染の予防および制御のための手順に従って、検査のために検査施設に送る検体標本を慎重に採取してください。
殺菌:石鹸と水での定期的な手洗い又はアルコールを手に擦りつけての消毒が推奨されます。範囲が広い場合には、家庭用漂白剤を10%に薄めて使用(毎日、新しくすることが必要です)することで、消毒が可能です。
安全で確実な埋葬を実施してください。肺ペストが疑われる遺体の顔や胸からの飛散物は防がなければなりません。その部位は、殺菌剤で濡らした布もしくは吸収性のある物質で被うことが必要です。

調査活動と感染制御

 調査活動と感染制御には、各地域において、ペストのサイクルに関与する動物とノミの種類を調査することと、人畜共通感染症としてこの病気の自然の中でのサイクルを理解し拡散を防ぐための環境管理プログラムを作成することが必要です。動物における速やかな対策と組み合わせ、動物の感染巣の調査活動を精力的に実施することが、人でのペスト感染の発生数を首尾良く減らすことに繋がります。

 有効かつ効率的にペストの感染発生を管理するためには、速やかな診断と感染した患者の管理、リスク要因の確認、継続的な調査活動の実施、媒介するノミと宿主の制御、検査施設での診断確認の実施、相応しい担当当局による知見の情報伝達を行い、周知された、隙のない医療活動室(と地域活動の場)を作ることが重要です。

WHOの取り組み

 WHOは、調査体制を維持し、リスクのある国の備えを支援することで、ペストの感染発生を防止することを目指しています。宿主動物の種類は地域毎に異なり、人への感染のリスクや感染の状況に影響を与えるため、WHOは、インド亜大陸、南米、およびサハラ以南アフリカに向けて、具体的なガイドラインを策定しました。

 WHOは、流行に直面している国が現地で感染制御の活動を行うことを支援するために、(その国の)保健省とともに活動しています。

出典

WHO Fact sheet, Media Centre. Updated October 2017
Plague
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs267/en/