2017年のニュース

土壌伝播蠕虫感染症について (ファクトシート)

2017年9月 WHO ( 原文[英語]へのリンク)

要点

土壌伝播蠕虫感染症は、さまざまな種類の寄生虫によって引き起こされます。
土壌伝播蠕虫感染症は、人の糞便に含まれる虫卵によって伝播します。その糞便は衛生環境が整わない地域で土壌を汚染します。
世界で、およそ15億人が土壌伝播蠕虫に感染しています。
感染した子どもは、栄養障害や身体的障害を負います。
感染制御は、以下のことが基本となります。
ⅰ. 感染寄生虫を撲滅するための定期的な駆虫
ⅱ. 再感染を防ぐための健康教育
ⅲ. 虫卵をもつ土壌の汚染を減らすための衛生環境の改善
感染を制御するために、安全かつ有効な薬剤を使用できます。

概観

 土壌伝播蠕虫感染症は、世界で最もありふれた感染症のひとつです。それらは最も貧しく最も恵まれない地域に発生しています。土壌伝播蠕虫感染病は、人の糞便中に含まれる虫卵によって運ばれます。その糞便は、衛生環境が整わない地域で次々に土壌を汚染します。主に人に感染する種類は、回虫 (Ascaris lumbricoides)、鞭虫(Trichuris trichiura)、鉤虫 (Necator americanus及びAncylostoma duodenale)です。

世界における分布と罹患率

 世界中で15億人以上の人々、あるいは世界人口の24%が土壌伝播蠕虫に感染しています。感染症は熱帯と亜熱帯地域に広く分布し、その大多数がサハラ以南のアフリカ、アメリカ、中国、東アジアで発生しています。

 2億6,700万人を超える就学前の子どもと5億6,800万人を超える就学期の子どもが、これらの寄生虫の多く伝播する地域に住んでおり、治療と予防的介入を必要としています。

感染経路

 土壌伝播蠕虫感染症は、感染者の糞便を通して、虫卵によって伝播します。成虫は腸内に寄生し、毎日何千個もの虫卵を産みます。十分な衛生環境の整わない地域では、これらの虫卵が土壌を汚染します。これが、いくつもの感染経路を作ります。
•野菜が十分に料理、洗浄、皮むきをされていない場合に、野菜に付着した虫卵が取り込まれます。
•虫卵は、汚染された水源からも取り込まれます。
•子どもが汚染された土で遊んだ後、手を洗わず口に入れた場合に虫卵が取り込まれます。

 また、鉤虫の虫卵は土の中で孵化して、能動的に皮膚に侵入できる形態の幼虫に成長します。人は、裸足で汚染された土の上を歩くことによって鉤虫に感染します。

 糞便から出された虫卵は、感染性を持つまでに土の中でおよそ3週間の成熟期間が必要となるので、人から人への直接感染あるいは新鮮な糞便からの感染はありません。これらの蠕虫類は、人の体内では増殖しないため、(一度、体外に排出され)環境内で感染できる段階に(成長した)幼虫に接触したときにのみ、再びの感染が成立します。

栄養状態への影響

 土壌から伝播する蠕虫感染症は、あらゆる経路で感染した人の栄養状態に障害を与えます。
•蟯虫は、血液などの感染宿主の組織を栄養源とし、鉄分や蛋白の欠乏を起こします。
•また、鉤虫は、慢性的に腸管の血液不足を引き起こし、貧血の原因となります。
•蟯虫は、栄養の吸収障害を助長させます。さらに、回虫は腸管でのビタミンAを(宿主よりも)先に取り込む可能性があります。
•土壌から伝播する蠕虫感染症は、食欲不振も引き起こし、栄養吸収力や身体の適応度を低下させます。特に、鞭虫は、血性を含むあらゆる下痢症を引き起こします。

罹患率と症状

 罹患率は、寄生する蟯虫の数と関係します。通常、感染数が僅かな人は無症状です。感染が重度になると、消化器症状(下痢、腹痛)、栄養障害、全身倦怠感や脱力、成長障害や身体の発達障害などの様々な症状を起こします。

 極めて重度の感染になると、手術治療が必要となる消化管障害を引き起こすこともあります。

感染制御のためのWHOの戦略

 2001年に、世界保健総会の評議員らは、真剣に寄生虫症に取り組み、特に、住血吸虫症と土壌伝播蠕虫症への取り組みに着手することを流行国に促す決議(WHA 54.19)を行い、全会一致で採択しました。

 土壌伝播蠕虫感染症を制御するための戦略は、感染の常在する地域に住みリスクのある人々を定期的に治療することで罹患率を制御します。

 リスクのある人々とは、次のような人々です。
•就学前の子ども
•就学期の子ども
•出産可能年齢の女性 (妊娠第2期、3期の妊婦および授乳中の女性を含む)
•茶摘みや鉱山労働者のように、特にリスクの高い職業の成人

 WHOは、前以て個別に診断することなく、感染が常在する地域に住みリスクのある人々には全員に、定期的に薬物療法(駆虫)を行うことを勧めています。治療は、土壌伝播蠕虫感染症の罹患率が20%を超える地域で年1回、罹患率が50%を超える地域で年2回行われるべきです。この介入は、感染虫体数を減らすことで罹患率を減らします。

 加えて、次のことを勧めています。
•健康と衛生への教育は感染伝播を減らし、健康によい行動を促すことで再感染を減らします。
•これは財源の乏しい状況で常にできることではありませんが、適切な衛生設備の供給にも重視します。

 定期的な治療は、腸の感染症を減らし、(その状態を)維持して、リスクのある人々を感染の罹患から護ることを目的としています。

 蠕虫の駆除は、簡単に就学前の子どもに対する子どもの健康の日や栄養補充プログラムとの合流、あるいは学校保健プログラムなどと合わせて行うことで簡単に実施できます。2016年に、感染の常在国では、3億8,500万人を超える就学期の子どもが駆虫薬での治療を受けました。これは、リスクのあるすべての子どもの68%に相当します。

 学校は、手洗いの推進や衛生環境の改善といった健康や保健衛生の教育の構成要素を簡単に準備できるため、駆虫活動にとって、特に優れた介入の場となります。

 2017年には、WHOが腸内寄生虫(土壌伝播蠕虫感染症)に対する住民の定期的かつ大規模な治療(介入)を科学的根拠に基づき実施するガイドラインの情報更新を行い、公表しました。ガイドラインでは、疾患を引き起こす主な3種類の寄生虫に対して、感染が常在する地域での現在の実施方法が支持されています。

WHOが推薦する薬剤

 WHOから推薦される薬 -アルベンダゾール(400 mg)とメベンダゾール(500 mg)- は、効果が高く、安価で、非医療関係者(例えば教師)でも簡単に投与できます。これらの薬剤は(これまでに)大規模な安全性試験を経て、何百万もの人々に使用されてきており、副反応がほとんどなく、あっても軽いものでした。

 アルベンダゾールとメベンダゾールは、ともに、就学期の子どもの治療のために、WHOを通じてそれぞれの国の保健当局へ寄付されています。

世界における目標

 世界における目標は、2020年までに子どもたちにおける土壌伝播蠕虫による感染をなくすことです。これは、感染が常在する地域の子どもたちの少なくとも(2016年で推定8億3,600万人の)75%が定期的に治療を受ければ達成できます。

出典

WHO. Fact sheet. Updated September 2017
Soli-transmitted helminth infections
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs366/en/