2017年のニュース

オンコセルカ症について (ファクトシート)

2017年9月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

オンコセルカ症は、河川盲目症としてもよく知られており、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)という寄生虫によって引き起こされます。
オンコセルカ症は、寄生虫を保ったブユ(Simulium属)に人が繰り返し刺されることで伝播します。
症状には、激しい掻痒、外観を損なう皮膚の変化、永久失明を含む視覚障害などがあります。
感染者の99%以上がアフリカの31か国で暮らしていますが、ラテンアメリカやイエメンの一部地域にも感染者がいます。
アフリカでは、イベルメクチンを用いた地域主導型治療を行うことがオンコセルカ症を撲滅するための中核的な戦略となっています。アメリカ大陸では、イベルメクチンを用いた大規模な年2回の治療が撲滅のための戦略となっています。
2016年7月に、数10年にわたり撲滅活動を実施したことによって、グアテマラが、コロンビア(2013)、エクアドル(2014)、メキシコ(2015)に続いて、オンコセルカ症の撲滅が確認された世界で4番目の国となりました。

概要

 オンコセルカ症―河川盲目症―は、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)が感染する寄生虫症で、ブユ(Simulium spp.)に繰り返し刺されることで伝播します。ブユは、流れの速い河川で繁殖し、農業を営む人が多く肥沃な土地が近くにある村々と密接な関係があります。

 回旋糸状虫の成虫は、人の体内でミクロフィラリア(被鞘幼虫)を産みます。ミクロフィラリアは、皮膚、眼、その他の臓器に移行します。メスのブユは、感染した人の血を吸う際に、ミクロフィラリアを同時に吸い込み、体内で回旋糸状虫を成長させ、次に刺した際に人に伝播させます。

所見と症状

 オンコセルカ症は眼と皮膚の疾患です。症状はミクロフィラリアによって引き起こされます。ミクロフィラリアが皮下組織に移行して炎症を起こし、それらが死滅したときに激しい炎症反応を誘発します。感染した人の皮膚には激しい掻痒や様々な変化が症状として現われます。感染した人の中には、視覚障害や永久失明に繋がる眼の領域で病変が起こることもあります。ほとんどの場合、皮下の成虫の周りに小結節を形成します。

地理的分布

 オンコセルカ症は主に熱帯地域で発生しています。感染者の99%以上は、以下に示すサハラ以南のアフリカにある31か国で発生しています。

 アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ共和国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニア・ビサウ、ケニア、リベリア、マラウイ、マリ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、南スーダン、スーダン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア

 オンコセルカ症は、イエメンやアメリカ大陸でも発生しています。2016年7月20日現在、オンコセルカの寄生虫の感染伝播は、ブラジルとベネズエラでも続いています。

予防、感染制御、撲滅計画

 回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)の感染を予防するワクチンや医薬品はありません。

 1974年から2002年にかけて、オンコセルカ症によって引き起こされる病気は、西アフリカでは、オンコセルカ症感染制御計画(Onchocerciasis Control Program; OCP)の活動によって感染制御下に置かれていました。主に、ヘリコプターや航空機でブユの幼虫に対して殺虫剤を散布するというベクター・コントロール(媒介昆虫の駆除)の対策を行っていました。1989年以降は、大規模にイベルメクチンの配布も行われてきました。

 OCPによって、4,000万人の感染が予防され、60万人の失明が防がれ、1,800万人の小児が疾患と失明の脅威に晒されずに済みました。また、2,500万ヘクタールの土地が開墾され、人が居住し、農業生産を行えるようになり、1年間に1,700万人の食事を賄えるようになりました。

 1995年に、オンコセルカ症が常在する国でのオンコセルカ症の感染制御を目的として、アフリカ・オンコセルカ症対策計画(the African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)が開始されました。この計画は、オンコセルカ症の撲滅への変化が出始めたことで、2015年末をもって終了となりました。その計画の主な戦略は、イベルメクチンを用いて地域社会で地域主導型治療(community-directed treatment with ivermectin; CDTI)を確立させ、環境にも安全な方法で適切に媒介昆虫を駆除することでした。APOCの最終年度には、1億1900万を超える人々に治療が行われ、多くの国でオンコセルカに関連した病気の罹患率を大幅に減少させました。ウガンダでは80万を超える人々が、スーダンでは12万を超える人々が、APOCの終了までにイベルメクチンを必要としなくなりました。

 2016年には、地域主導型治療が行われたアフリカの1億2900万を超える人々に治療が行われました。これは、世界で治療を必要とする人々の約65.3%に達しています。APOCに代わって、アフリカで顧みられない熱帯病(NTDs)の撲滅のための特別拡大計画(ESPEN)が開始されました。この計画では、初めて、いくつかの国に、オンコセルカ症の(撲滅)計画を含めた顧みられない熱帯病(NTDs)に対し優先的に支援することに焦点が当てられ、全ての加盟国から技術支援が提供できる(窓口となる)専門家の準備組織が創設されることとなりました。ESPENは、OCPやAPOCと同様に、WHOアフリカ地域事務局内に置かれています。

 アメリカ・オンコセルカ症撲滅計画(the Onchocerciasis Elimination Program of the Americans; OEPA)は、2015年までにアメリカ大陸全域で眼に対する罹患をなくし感染伝播を阻止することを目的に、1992年から開始されました。イベルメクチンによる年2回の治療が大規模に実施されてきました。2006年には全13地域における85%以上の人々が治療を受け、2017年末までに13地域のうち11地域で感染伝播が止まりました。現在、撲滅に向けた取り組みは、ブラジルとベネズエラに住むヤノマミ族に焦点が当てられています。

 2013年4月5日、WHO事務局長は、コロンビアがオンコセルカ症の撲滅を達成したことを認証する公式文書を発行しました。コロンビアは、WHOによってオンコセルカ症の撲滅が認証され宣言された世界で最初の国となりました。2014年9月にはエクアドル、2015年7月にはメキシコが、2016年7月にはグアテマラが、これに続きました。(いまでは)アメリカ大陸の50万を超える人々がイベルメクチンを必要としなくなりました。

治療

 WHOは、オンコセルカ症の治療として、約10年から15年の間、イベルメクチンを少なくとも年1回投与することを推奨しています。回旋糸状虫とともにロアロア(Loa loa)という別の糸状虫が常在している場合には、治療戦略を調整する必要があります。ロアロアは、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、南スーダンに常在する回旋糸状虫です。血液中に高濃度にロアロアが生息する患者の治療では、重篤な有害事象を生じることがあります。感染が発生している国では、メクチザン(イベルメクチン)の専門家会議(the Mectizan Expert Committee; MEC)/APOCが推奨する使用方法にしたがって、重篤な有害事象の管理を行うことが勧められます。

WHOの取り組み

 WHO本部は、オンコセルカ症が感染伝播する3つの地域で、行政管理、技術および運営面での調査・研究を支援しています。

 WHOアフリカ地域事務局は、1975年から2002年までオンコセルカ症感染制御計画(Onchocerciasis Control Program; OCP)と、1995年から2015年までアフリカ・オンコセルカ症対策計画(the African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)に対して、全体的な指揮を取ってきました。現在は、顧みられない熱帯病(NTD)の感染制御と撲滅活動の調整に重要な役割を担うESPENを指揮しています。

 WHOは、アメリカ・オンコセルカ症撲滅計画(OEPA)を通して、国際的な支援組織や感染症常在国と協調しながら、WHOアメリカ大陸地域での活動に取り組んでいます。WHO東部地中海地域においては、合同で活動するための公式な特別計画はありませんが、地域内の2つの国が合同で撲滅活動に取り組んでいます。

出典

WHO. Fact sheet, Media centre. Updated September 2017
Onchocerciasis
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs374/en/