2017年のニュース

節足動物媒介感染症について(ファクトシート)

2017年10月 WHO (原文[英語]へのリンク)

要点

・節足動物が媒介する感染症は全感染症の17%以上を占め、年間70万を超える死亡者を出しています。
・デング熱だけでも、128か国以上で39億を超える人々が感染のリスクにさらされ、年間9,600万人が感染しているとみられています。
・マラリアは世界中で毎年40万人を超える人々を死に至らせます。そのほとんどは5歳未満の子どもです。
・シャーガス病、リーシュマニア症、住血吸虫症など、この他の疾患にも、世界で何億もの人々が感染しています。
・これらの疾患の多くは予防方法を知ることで防ぐことができます。

主なベクター(媒介生物)と媒介される疾患

 ベクター(媒介生物)は、生物であり、人と人との間、または動物から人へと感染症を伝播させます。これらの媒介生物の多くは吸血性の昆虫で、感染した宿主(人または動物)から吸血する時に疾患を起こす微生物を取り込みます。その後、新しい宿主で吸血する時に、その微生物を注入して感染させます。
蚊は最もよく知られている媒介昆虫です。他には、ダニ、ハエ、サシチョウバエ、ノミ、サシガメ、淡水に生息する巻貝などがあります。


Aedes (ヤブカ。特に伝染性をもつのはヤブカ属の中でもシマカと呼ばれる蚊です)
・デング熱
・リフトバレー熱
・黄熱
・チクングニア熱
・ジカウイルス感染症
Anopheles(ハマダラカ)
・マラリア
・リンパ系フィラリア症
Culex(イエカ)
・日本脳炎
・リンパ系フィラリア症
・ウエストナイル熱
サシチョウバエ
・リーシュマニア症
・サシチョウバエ熱(phelebotomus fever)
ダニ
・クリミア・コンゴ出血熱
・ライム病
・回帰熱(ボレリア症)
・リケッチア症(紅斑熱とQ熱)
・ダニ媒介性脳炎
・野兎病
サシガメ
・シャーガス病(アメリカトリパノソーマ症)
ツェツェバエ
・睡眠病(アフリカトリパノソーマ症)
ノミ
・ペスト(ノミがネズミから人へ伝播します)
・リケッチア症
ブユ
・オンコセルカ症(河川盲目症)
淡水巻貝
・住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫症)
シラミ
・シラミ媒介性発疹チフス

節足動物媒介感染症

 節足動物媒介感染症は、蚊、サシチョウバエ、サシガメ、ブユ、マダニ、ツェツェバエ、ダニ、カタツムリ、シラミから伝播される寄生虫、ウイルス、細菌などによって人に起こる疾患です。毎年、マラリア、デング熱、住血吸虫症、ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症、リーシュマニア症、シャーガス病、黄熱、日本脳炎、オンコセルカ症などの感染症によって、世界中で毎年、70万人以上が死亡しています。
 節足動物媒介感染症はすべての感染症疾患の17%以上を占めます。これらの疾患の脅威は、熱帯と亜熱帯地域で最も大きく、これらは、不平等なことに、最も貧困な人々に影響を与えます。2014年以降、デング熱、マラリア、チクングニア熱、黄熱、ジカウイルス感染症などの発生が、多くの国で人々を苦しめ、命を奪い、医療制度を打ち負かしています。
 節足動物媒介感染症の分布は、複雑な住民構成、環境および社会因子によって決定されます。国際渡航や世界貿易、無計画な都市化、気候変動など環境の問題は、病原体の伝播に影響を及ぼし、流行期を長引かせたり、より強くしたり、以前は知られていなかった国で病気を引き起こしたりすることがあります。
 気温や降水量の変化による農業形態の変化は、節足動物媒介感染症の伝播に影響することがあります。都市のスラム化、安心できる水道水の配管や適切な固形廃棄物の管理の欠如などは、街や都市で大量の住民に蚊によって広がるウイルス性疾患のリスクをもたらす可能性があります。これらの要因は、ともに、媒介する昆虫の活動の到達範囲と疾患を引き起こす病原体の感染経路のパターンに影響を及ぼします。

WHOの取り組み

 2017年の世界保健総会で承認された世界の節足動物媒介感染症の感染制御と対策2017-2030(The Global vector control response;GVCR)では、疾患を予防するための基本的な方策および流行の発生への対策として、媒介昆虫の制御への緊急強化に向けた戦略ガイドラインが各国および開発を支援する組織に示されています。これを達成するには、増強される計画推進能力、向上する整備基盤、疾病の監視と調査への体制強化、増大する地域住民の活動性などによって支えられながら、媒介昆虫を制御する計画の再編集が必要となります。最終的に、この計画は、疾患の特異性に合わせた各国と世界の目標達成を実現させ、持続可能な発展への目標とUniversal Health Coverage(すべての人およびすべての地域社会が、財政の困難に遭うことなく 必要な医療保険サービスを受けられること)の達成に貢献するために、媒介昆虫の制御の包括的な手順での実施への支援をすることになります。

 WHO事務局は、GVCRに基づいて、疾病の予防と感染発生への基本的な方策として、媒介昆虫の制御を強化するために、戦略的、規範的、技術的なガイダンスを各国や開発支援組織に提供しています。具体的に、WHOは、次のような方法で節足動物媒介感染症に対応しています。
・媒介昆虫の制御と感染からの人を防御することへの最良のエビデンスを提供する
・各国に技術的支援と対策方針を提供し、それにより効果的に疾患と感染の集団発生を管理できるようにする
・報告システムを改良し、各国が疾患の本当の脅威を理解するために支援する
・世界中に数ある協力センターとともに、臨床管理、診断、媒介昆虫の制御に関する訓練の場を提供する
・媒介昆虫を制御するためや疾患を取り扱うための新しいツール、例えば殺虫剤製品や散布技術のようなツールを開発する

 節足動物媒介感染症において重要な要素は、行動様式の変容です。住民が、蚊、ダニ、昆虫、ハエ、その他の媒介昆虫などから自分自身や地域を防御する方法を理解するために、WHOは加盟国と連携ながら、教育を提供し、注意意識が向上するように働きかけています。
 WHOは、シャーガス病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症のような多くの疾患に対して、寄付や助成された薬剤を使い、感染制御プログラムを開始しています。
 水や衛生設備の利用環境は、疾患の制御と撲滅において非常に重要な要素です。WHOはこれらの疾患を制御するために、政府のさまざまな担当部門と数多くの連携を行っています。

出典

WHO. Fact Sheet, Mediacentre. October 2017
Vector-borne diseases
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs387/en/