ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(ファクトシート)

2017年12月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

  • 少なくとも世界人口の半数は、依然として、必要とされる保健医療サービスを十分に受けることができていません。
  • 約1億人が医療費の支払いを強いられることで「極度の貧困」(1日当たり1.90ドル以下で生活している状態)に追い込まれています。
  • 8億を超える人々(世界人口のほぼ12%)が、家庭収入の10%以上を医療費に費やしてきました。
  • すべての国連加盟国は、持続可能な発展目標のひとつとして、2030年までにUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:すべての人およびすべての地域社会が、財政の困難に遭うことなく必要な医療保険サービスを受けられること)を達成できるよう努めることで合意しました。

概要

UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とは、すべての人およびすべての地域社会が、財政の困難に遭うことなく必要な医療保険サービスを受けられることを表しています。健康の増進から、予防・治療・リハビリ・緩和ケアまで、必要とされる質の高い医療保険サービスのすべての領域が含まれています。

UHCは、すべての人々が最も重要な病気と死亡の原因に取り組むためのサービスの利用環境を整え、これらのサービスの質がこれを利用する人々の健康の向上にとって十分に良いものとなるように確実に進んでいくことです。

自分自身の経済力で医療サービスを支払うことで発生する財政危機から人を保護することができれば、人々が貧困に追い込まれるリスクを減らすことができます。予期せぬ病気は、生活を切り詰め、資産を売り、借金を作ることとなり、この人の将来、さらにはその子どもの将来を破滅させてしまいます。

UHCの(目標の)達成は、2015年に継続的に発展させていくことのゴールを採択した際に設定された世界各国の目標の1つです。UHCに向けて発展を続ける国々は、その他の医療に関連する目標に向けても、その他のゴール目標に向けても発展させていくでしょう。良好な健康状態は、子どもたちが学習すること、大人たちが働くことを可能にし、貧困から逃れることを助け、長期にわたり経済発展の基礎を築きます。

UHCの範疇には含まれていないこと、含まれること

UHCの範疇には含まれていないこともたくさんあります

  • 持続できる基盤を持ち、すべての(医療保険)サービスを無料で提供できる国はありません。そのため、UHCは、費用に関係なく、可能なすべての医療保険への介入を無料で行おうとするものではありません。
  • UHCは、単に医療保険に関する資金を調達するだけのものではありません。医療保険サービスの提供システム、医療保険関係の労働者、医療保険施設や通信ネットワーク、医療保険の技術、情報システム、品質保証の体制、行政、法律など、すべての医療保険システムの要素を網羅しています。
  • UHCは、最低限の医療保険サービスの提供を確保するだけでなく、より多くの人的・物的資源を利用することで、確実に医療保険サービスの適用範囲を拡大し財政を保護することにも取り組んでいます。
  • UHCには、個々の医療保険サービスだけでなく、公衆衛生キャンペーン、飲料水へのフッ化物の添加、蚊の繁殖地の管理などの住民の生活ベースのサービスも含まれます。
  • UHCは、健康だけを目指すものではありません。 それ以上のことを目指し、UHCが歩むステップは、平等性、発展の優先順位、社会参入と結束へと目指すステップです。

UHCに向けてどのように発展を成し遂げていくか

多くの国で、既にUHCに向けた取り組みを発展させています。すべての国が、UHCに向けてさらに活動を加速させるために、既に達成できた利益を維持するために、行動することができます。これまでにも医療保険サービスが利用可能で手頃な価格であったはずの国では、国民の健康への欲求の高まりや医療サービスのコスト増加に対して応えることが徐々に難しくなって来ています。

UHCに向かうには、すべての国で医療保険システムを強化する必要があります。頑強な資金調達体制を創ることが鍵となります。人々が自分で医療サービスの費用の大部分を払わなければならない場合、貧しい人々はしばしば必要となる多くのサービスを受け取ることができず、さらには裕福な人々でさえも重度や長期の病気となれば財源が逼迫する可能性があります。強制的に調達資金となる基金から資金の拠出(強制保険からの拠出など)を行えば、人々に横たわる病気の経済上のリスクを分散させることができます。

健康保健サービスの向上と健康への成果は、利便性、利用環境、そして質の高い人々に集約して医療支援を提供する医療従事者の対応能力に依存します。直接の医療保険関係者への投資が、本質となる医療保険サービスの利用環境の平等性を向上させることに、最も必要とされ、投資に見合ったものとなります。また、健全な運営管理、健全な医薬品の調達・供給および医療技術の体制、健康情報システムが、もうひとつの重要な要素となります。

UHCは、どんなサービスが対象となるかだけでなく、どのように資金を提供し、管理し、提供するためであると強調しています。サービスが集約され、人々や地域社会の欲求に焦点が当てられるように、サービスの提供も基本的に変化していくことが必要となります。これには、医療保険サービスの見直しも含まれます。見直しにより、外来患者と入院患者の医療の適切なバランスや医療支援の協力体制の強化を行いながら、最適な環境で医療支援が提供されることを確保します。これまでの医療サービスや補完的な医療サービスを含めて医療保健サービスは、人々や地域社会の包括的な欲求と期待に沿って整備され、自分たちが自分の健康と医療保健体制において、より積極的に役割を果たすことを助けます。

UHCで図られていることは何か

  • UHCへの進捗状況の監視は2つのことに焦点を当てています。
    • 実質的に医療保険サービスを利用できる人々の割合。
    • 世帯収入の大部分を健康維持に費やしている人々の割合。

WHOは、世界銀行とともに、離れた農村地域に住む貧しい人々など、そこに住むすべての人々にサービスの普及と財政的保護を提供することで、UHC全体の水準とUHCが公平であることの両方を考慮しながら、UHCの進捗状況を追跡しできる枠組みを策定しています。

WHOは、国における普及レベルと公平性を測る指標として、重要な4つのカテゴリーの医療保険サービス16項目を使用しています。

  • 家族、妊婦、新生児および子どもの健康:
    • 家族での計画
    • 出産および出産の医療支援
    • 子どもへの十分な予防接種
    • 肺炎に対する受診行動
  • 感染症:
    • 結核治療
    • HIV抗レトロウイルス治療
    • マラリア予防のための殺虫剤処理済みの蚊帳の普及
    • 適正な衛生環境
  • 非感染性疾患(生活習慣病):
    • 血圧の上昇への予防および治療
    • 血糖の上昇への予防および治療
    • 子宮頸癌スクリーニング検査
    • タバコの使用および禁煙
  • サービスの対応能力と利用環境
    • 基本的な病院の利用環境
    • 医療従事者の就業密度
    • 必要薬が利用できる環境
    • 健康保障:国際保健規則の遵守。

各国は独立しており、それぞれの国がさまざまな分野に焦点を当て、UHCへの推進の状況を測定する独自の方法を作成することができます。しかし、国際的に認知された標準尺度もあります。これは、国境を越え、時間の経過とともに比較を可能にする国際的な評価方法にも価値があるためです。

WHOの取り組み

UHCは、世界保健機関憲章(1948)に基づいています。憲章では、健康が基本的人権であることを宣言し、すべての人に達成できる最高の水準を確保することが約束されています。

WHOは、UHCに向けて活動し、維持するための健康システムを発展させるために各国を支援し、進展を見守っています。しかし、これはWHOだけで進めるのではなく、WHOは世界各地でUHCを推進するために、さまざまな状況や多くの異なる目的に対し支援組織と協力しながら活動を進めています。

WHOの支援組織には、以下のものがあります。

  • UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)2030
  • 医療政策とシステム研究のための同盟
  • 医療の提供(P4H)
  • 欧州連合 - ルクセンブルク - UHCのためのWHOパートナーシップ
  • Primary Health Care Performance Initiative

医療保険サービスの普及を拡大し、医療保健サービスの支払いが関係する貧困を減らすことで、すべての国は今まで以上に医療への成果を向上させ貧困に取り組むことができます。

出典

WHO.Fact sheet, Media centre.Updated December2017
Universal health coverage(UHC)
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs395/en/