2016年06月28日更新 WHO声明:緊急時には低用量で黄熱ワクチンの使用が可能です

 2016年6月17日、WHOは黄熱ワクチンの不足する備蓄量に対処するために、次のような声明を出しました。

 黄熱ワクチンは、ワクチンの備蓄量が不足している場合には、感染制御に対し、通常の1/5用量での投与が使用可能です。

 アンゴラとコンゴ民主共和国での流行発生により備蓄する黄熱ワクチンが不足する可能性があることを踏まえて、専門家たちはWHOによって招集された委員会で出されたこの提案に同意しました。

 WHOの予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts: SAGE)は、標準用量の1/5の使用量でも12か月間以上にわたり感染から保護できることが示されていることの科学的根拠について検討を始めました。

短期対策としての分割投与

 分割投与として知られるこの投与方法が、緊急時にワクチンの備蓄量が不足する可能性のある現況において、緊急的な使い方として検討されています。この方法は、より低用量での接種が十分用量でのワクチン接種が産生する免疫と同等に生涯にわたり感染から保護することを示すためには、まだ得られているデータが十分ではないことから、定期予防接種としては提案されていません。

 予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会(SAGE)の委員長を努めるJon Abramson(ジョン・エイブラムソン氏)は、次のように述べています。「アンゴラ、コンゴ民主共和国、ウガンダにおける黄熱の流行は、この病気の拡大を制御するために必要な緊急予防接種キャンペーンでのワクチンの供給に対して、前例のない程の量を必要としています。」

 「現在、これ以上に拡大することがなければ、我々には発生中の大流行に対処するために十分なワクチンが世界に備蓄されています。しかし、アンゴラでのこの病気の拡大や、コンゴ民主共和国のキンシャサ市内で感染の制御を失う可能性を考えて、WHOおよび加盟国は、大規模な予防接種キャンペーンを通して感染伝播を防ぐために、現在の用量を節約して使用する戦略を真剣に検討しています。」

都市部での大流行で不足するワクチン

 5月19日にWHO事務局長によって招集された黄熱に関する緊急委員会からの要請で、WHO事務局は、緊急時に必要となった場合のワクチン供給力を向上させる方法における選択肢を、現存の科学的根拠に基づき模索してきました。

 SAGEは、その科学的根拠とWHOから示された選択肢を確認することを要請されました。SAGEによる、より低用量での黄熱ワクチン使用に関する正式な評価と提言が、2016年10月に予定されています。

 この間に、SAGEは、ワクチンが不足する緊急の状態において、標準量の1/5量(0.5mlの代わりに0.1ml)で行う黄熱ワクチンの分割投与法が都市部での大流行を制御するための集団予防接種キャンペーンで安全かつ有効な選択肢となり得ると十分に判断できるとする利用可能な科学的根拠から見つけだしました。

 分割用量での投与が黄熱ワクチン免疫応答の弱い集団、即ち、幼児への対策として有効であることを見極めるためには、さらに多くの研究が必要とされます。

 減量した投与法を管理する上では、実用的な問題として、投与法に見合った注射器の必要量の供給を求めることなど、さらなる調査が必要です。

 国際保健規則では、旅行者に対して完全用量での接種を要求しています

 黄熱は、各国の入国の条件として、旅行者からのワクチンの接種証明書を要求する可能性のある国際保健規則(IHR)で指定された唯一の疾患です。 IHRは、2014年に改正され、ワクチンの1回投与量が生涯免疫を獲得するために十分であることを示しました。これにより、ワクチンを接種した人の予防接種証明書の有効期限が生涯へと延長されました。この新しい改正が発効される2016年7月11日からは、すべての国が、これを遵守することになります。

 分割量で投与された黄熱ワクチンには、IHRの要件の下での黄熱ワクチン接種証明書は適格とはなりません。旅行者が適格な黄熱の証明書を得るには全用量のワクチンを接種する必要があります。

世界での供給量

 WHOは、4つのワクチン製造業者に年間に約8,000万から9,000万回分の黄熱ワクチンを製造する認可を与えています。認可のための事前審査は、ワクチンと医薬品がWHOの高い基準での品質、安全性および有効性を満たしていることを意味します。

 GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)によって準備される世界の備蓄量は、非常時のために600万回分を有していましたが、今年2月以降、既に2回枯渇しています。これまでに、WHOおよび加盟国は、現在の流行発生を制御するための緊急時使用として、アンゴラ、コンゴ民主共和国、ウガンダに約1,800万回分のワクチンを出荷しました。

 分割による投与法に加えて、WHOのSAGEグループは、黄熱が常在する国で小児に定期予防接種することの改善と合わせて、集団予防接種の完全実施キャンペーンを強化することによる長期的な黄熱の流行を防ぐための方法を検討しています。

 調査活動とリスク評価、予防接種、地域活動員の総員とリスク情報の伝達、媒介昆虫の駆除・制御など、現在続いている大流行へのWHOの感染対策には、5つの領域での支援組織との共同での活動が必要となります。

出典

WHO. WHO statement, Media Centre. 17 June 2016
Lower doses of yellow fever vaccine could be used in emergencies
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/yellow-fever-vaccine/en/