2017年01月10日更新 ペストの発生報告-マダガスカル

2017年1月9日に公表されたWHOの情報によりますと、マダガスカルの保健省は2016年12月6日に、南東部Atsimo Atsinanana(アチモ・アチナナナ)地方Befotaka地区でペストの集団発生が疑われることをWHOに緊急報告しました。この地区は、マダガスカルの中でもペストが風土病とされる地域外にあります。1950年以降、この地域でペスト患者は報告されていませんでした。

発生の詳細

2016年12月27日までに、死亡者26人(患者の死亡率42%)を含む患者62人(確定患者6人、可能性の高い患者5人、疑い患者51人)が、国内の隣り合う地方の隣接する2地区で報告されました。死亡者10人を含む患者28人がアチモ・アチナナナ地方Befotaka地区から、また、死亡者16人を含む患者34人がIhorombe(イオロンべ)地方Iakora地区から、報告されました。

採取された11検体のうち、5検体が迅速簡易検査で陽性でした。また、6検体がパスツール研究所で確定診断されています。報告された患者のうち、5人が肺ペスト、残る患者は腺ペストに分類されました。
これらの2地区で行われたこれまでの調査から、この集団発生は2016年8月中旬に始まった可能性が高いことが示されました。12月29日に、Befotaka地区の最初の感染発生地から25km以内で実行された調査で、3人の死亡者が報告されました。さらに、この集団感染とつながる可能性について調査が行われています。
感染の発生した地域はかなりの遠隔地で、現地への到達が難しく、あまり安全を保障できない地域(地元の盗賊団による危険地帯に分類)に位置しています。地元の自治体とともに整備してはいますが、治安の悪さは現地調査と感染対策の活動を遅らせています。また、ヘリコプターが利用できますが、悪天候や財政上の制約からヘリコプターの使用が制限されてきました。

公衆衛生上の対策

12月6日に、公衆衛生学の専門家、疫学研究者、昆虫学者および検査の専門家などで構成される多分野専門チーム15人が保健省から集められ、疫学調査および感染対策の活動のために発生地域に入りました。

次のような鍵となる対策活動が既に始められています。

  • 患者の早期発見と迅速診断テストを含む疫学調査
  • 地域ベースでの調査活動と患者の早期発見に関する地元の保健医療従事者への訓練
  • 疑い患者の臨床上の管理
  • 接触者の特定、健康監視、予防投与
  • Kartmanボックス(密閉式のプラスチック容器)の使用による媒介・保菌動物の制御
  • 住民への注意喚起
  • 地域ベースの調査活動の強化
  • マラリアなど、診断された他疾患に対する治療費の無料化
  • 近隣地区での早期発見の強化
  • 検査施設での確定診断

WHOのリスクアセスメント

これまで入手された情報に基づけば、感染が特に遠隔地で発生していることから、国際的に拡がるリスクは低いと思われます。しかし、感染地域に到達するのが難しく、早期の調査活動が妨げられているために、現時点では実際の発生規模が確定されておらず、地域でさらに感染が拡がることのリスクや感染が持続することを公式には排除できません。WHOは、調査の継続と対策活動を引き続き支援しています。

WHOからのアドバイス

長期的な調査活動および感染管理の対策を行うためには、1950年以降には発生が報告されていない地域でのペストの集団発生を解明するためのさらなる生態学的調査が必要です。
この集団感染の発生は、遠隔の地にあり医療サービスの利用環境が整わない農村地域に衝撃を与えています。保健省から派遣された職員は、マダガスカルのパスツール研究所によって支援されています。しかし、現地の状況から、その実施は複雑なものとなっています。
感染が発生した地域が遠隔地であることとこの病気への感染の条件により、現在、この集団感染は旅行者にとって重大なリスクではありません。

感染症情報

ペスト

出典

WHO. Disease outbreak news, Global Alert and Response (GAR). 9 January 2017
Plague-Madagascar
http://www.who.int/csr/don/09-january-2017-plague-mdg/en/