2017年02月21日更新 ハンタウイルス(ソウルウイルス)の発生報告-米国とカナダ

 2017年1月24日に、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、健康情報ネットワーク(Health Alert Network, HAN)からの公表を通して、ウィスコンシン州(2人)とイリノイ州(6人)でソウルウイルス(ハンタウイルスの1種)の感染者8人を報告しました。最初の患者2人は、2016年12月初めに報告されました。2人はウィスコンシン州に住み、家で飼うペットとしてのラットを商業飼育する中で、急性の発熱で発症し、後に、ソウルウイルスへの感染であることが確認されました。いくつもの施設のラット(Rattus norvegicus:ドブネズミ種)がソウルウイルスに陽性であることも判明しました。人へのソウルウイルスの感染はアメリカ合衆国で日常的に起きているものではありません。(しかし、)このウイルスは、アメリカ合衆国で最も日常的に病気を起こすハンタウイルス属の1種Sin Nombre virus(シンノンブレ・ウイルス)に属しています。これは、アメリカ合衆国でペット用ラットから感染の発生が確認された最初の例となります。
 [注:ここでのラットは、ドブネズミやクマネズミがペット用に改良されたものを指します。]

 これまでに、ウィスコンシン州、イリノイ州、コロラド州で合計11人の患者が感染していました。このうち、2人が入院しました。ソウルウイルスは、ウィスコンシン州で飼育されていたペットのラットの中からも確認されました。追跡調査では、アラバマ州、アーカンソー州、コロラド州、イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、ルイジアナ州、ミシガン州、ミネソタ州、ミズーリ州、ノースダコタ州、サウスカロライナ州、テネシー州、ユタ州、ウィスコンシン州に配布され、感染したラットが受けとられた可能性が示されています。これまでのところ、感染が発生した飼育施設はこのペット用ラットの取引に限られていることが、すべての調査で示されています。これらのラットは、いずれも研究施設には供給されて(または供給されてしまって)はいません。

 また、米国CDCとカナダ公衆衛生当局による追跡調査から、このラットが米国とカナダの間で交換されていたことが明らかとなっています。カナダIHR国家担当者からの2017年2月10日の報告によれば、カナダのラット飼育施設が、調査中にアメリカ合衆国に向けてラットを輸出しており、同時にアメリカ合衆国の施設からもラットを輸入していました。2017年2月10日までに、ソウルウイルス、ハンタンウイルス、プュマラウイルス、ドブラバウイルスを含む腎症候性出血熱(HFRS)ハンタウイルス群が血清学的に患者3人で陽性と確認されています。これらの患者からは重篤な病態は報告されていません。患者のうち2人はラットを繁殖させており、もう1人はラットとの接触機会がありました。さらなる検査とウイルスの特徴の評価が行われています。また、ラットの疫学調査や、ラットに対する検査も計画されています。

公衆衛生上の取り組み
 米国とカナダの保健当局は、感染の発生に対処するために、次のことを実施しています。

カナダ
・人の感染におけるソウルウイルスとの接触機会を確認するためのさらなる検査とウイルスの特徴の評価。
・関係するペット用ラットの飼育施設の評価。
・さらなる疫学調査とラットの検査。

アメリカ合衆国
・米国CDCと各州の保健当局との連携による感染発生への調査。
・いくつもの感染が発生したラット群で行われた個体の間引き。
・感染の発生が確認される前に輸出入されたラットに関する調査。

ソウルウイルスに関する情報
 
ソウルウイルスは、空気中に飛散した尿や糞便、さらには、感染した齧歯類の唾液からの飛沫との接触によって、また、ラットの巣や寝床からの粉塵との接触によって、ラットから人に感染伝播するハンタウイルスの一種です。感染の伝播は、ラットによる咬傷や、皮膚の断片や粘膜に直接触れたことでウイルスに汚染された物体と接触することでも起こり得ます。ソウルウイルスの場合、自然宿主はドブネズミ(Rattus norvegicus)とクマネズミ(Rattus rattus)です。このウイルスは、世界中のペット用ラットおよび野生に群生するドブネズミやクマネズミから発見されています。潜伏期間は1週間から8週間までさまざまです。しかし、ほとんどの患者は、接触から1〜2週間で症状を発現します。ソウルウイルスの症状には、軽症から重症まで幅があります。重症の病態では、この疾患は腎症候性出血熱を起こすことがあります。不顕性の感染も起こります。ソウルウイルスは人から人には感染しません。ソウルウイルスへの感染に有効な治療法はありません。

WHOのリスクアセスメント
 
腎症候性出血熱(HFRS)は、ソウルウイルスによる重症感染の病態です。ソウルウイルスを原因してHFRSを発症する感染者の致死率(CFR)は、1〜2%の範囲にあります。これまでに米国で報告された11例のうち2例は入院しましたが、いずれも死に至ることはありませんでした。

 カナダにおけるHFRS患者3人については、現在も調査中ですが、アメリカ合衆国でのソウルウイルスの感染発生には疫学的な関連性を示す証拠があります。

 米国とカナダ以外に感染したラットがさらに配布されたこと関しては、現在、利用できる情報はありません。ラットはソウルウイルスに感染しても病気を発症しません。一度感染すると、ラットは他のラットや人に感染させることができるウイルスを、生きている限りばらまき続けることができます。米国CDCは、アメリカ合衆国や他の国の保健省と協力して、ソウルウイルスの感染に関するペット用ラットや人での疫学調査や、ソウルウイルスに感染したラットの出荷や輸送の追跡などを行っています。これは、このウイルスが、どのようにペット取引所に入ってきたを解明し、他のラットや人へのソウルウイルスの感染を阻止するためのものです。

 ソウルウイルス感染症への治療法は、現在のところありません。そのため、人での感染を予防することが重要です。

 感染したげっ歯類が現地に棲むラットの個体群と接触する機会をもつと、ソウルウイルスが、感染していないげっ歯類にまで広がり、結果として、げっ歯類にも人にもこの人畜共通の感染症を拡大させる可能性ができます。

WHOのアドバイス
 
国際的にペット取引が、拡大し、人に対して病気が新興または再興する可能性ができています。WHOは、加盟国に対し、同様の事例を発見し、報告する対処能力を発展させ、維持することを促しています。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 20 February 2017
Seoul virus - United States of America and Canada
http://www.who.int/csr/don/20-february-2017-seoulvirus-usa-and-canada/en/