2017年02月27日更新 黄熱の発生報告 - ブラジル(更新2)

2017年2月24日にWHOから公表された情報によりますと、ブラジル保健省は2017年1月24日に、黄熱の発生状況の更新情報をPAHO(汎米保健機構)/WHOに報告しました。

2016年12月1日から2017年2月22日までに、黄熱患者は1,336人(確定患者292人、疑い患者920人、診断棄却124人)となりました。そのうち、215人(確定患者101人、疑い患者109人、診断棄却5人)が死亡していました。黄熱患者が確認されたのは6州で、バイーア州、エスピリト・サント州、ミナス・ジェライス州、リオ・グランテ・ノルテ州、サンパウロ州、トカンティンス州となっています。死亡率は、確定患者で35%、疑い患者で12%でした。これまでに確認された患者の大半(86%)が男性で、21歳から60歳までで81%を占めていました。

2016年12月1日から2017年2月22日までに、人以外の動物での集団感染が883件報告されました。このうちの337個体で、黄熱への感染もしくは疫学上の関連性が確認されました。動物での集団感染は、アラゴアス州、バイーア州、ゴイアス州、エスピリト・サント州、マットグロッソ・ド・スール州、ミナス・ジェライス州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、リオグランデ・ド・スール州、サンタ・カタリーナ州、サンパウロ州、セルジッペ州、トカンティンス州から報告されています。

ブラジルおよびアメリカ大陸のその他の国における黄熱の発生状況に関する情報は、汎米保健機関/世界保健機関(PAHO / WHO)の以下のリンクで毎週掲載されています。
PAHO yellow fever updates

公衆衛生上の取り組み

ブラジルでは、連邦、州、および地方行政レベルの保健担当部局が、流行の発生に対していくつもの対策を実施しています。

・ブラジル保健省は、州、および地方行政レベルの保健担当部局が、医療保健サービスを強化し、リスクへの情報伝達を速やかに行うために、人、媒介する蚊、集団感染する動物への調査活動を支援しています
・衛生環境の整備および殺虫剤の噴霧など、媒介する蚊の駆除活動が行われています。これと平行して、Larval Index Rapid Aedes Assay(ヤブカの幼虫の迅速分析器:LIRAa)を用いて、ヤブカ、特に(ネッタイシマカを含む)シマカ属での感染率を評価するための調査を行っています。
・パラ州ベレンにあるEvandro Chagas研究所、リオ・デ・ジャネイロ州にあるFioCruz研究所など、国立の中央研究センターは、人および人以外の動物での集団感染の確認検査、および媒介する蚊の調査の現地調査を支援しています。
・感染リスクのある地域の地方行政当局は、個別に自宅をまわり、免疫力を強化するための予防接種キャンペーンを行っています。
・合計で1,250万回分の黄熱ワクチンが、ミナス・ジェライス州(550万回分)、エスピリト・サント州(250万回分)、サンパウロ州(275万回分)、バイーア州(90万回分)、リオ・デ・ジャネイロ州(85万回分)の保健当局に配分されました。

ブラジル保健当局の感染対策への取り組みを支援するために、PAHOは、流行発生の事態に対して専門の運用組織を立ち上げました。そこでは、WHO事務局とともに取り組みを行っています。また、PAHO事務局およびPAHOブラジル事務所からは、技術・専門者らが運営業務の調整、疫学調査、データの収集、情報管理などを支援するために派遣されています。

WHOのリスクアセスメント

報告される患者数の増加、新たな州での黄熱の伝播の確認、および、これまでは黄熱の伝播のリスクがあるとは考えられていなかった地域での動物の集団感染の発生など、これらは発生地域が地理的に拡大していることを示しています。ブラジル保健当局は、感染の発生を制御するために、大規模な予防接種キャンペーンを含めた一連の公衆衛生上の対策を速やかに実施していますが、感染の発生した住民のほとんどが点在しており、離れた場所で暮らしているために、(対策が)リスクのあるいくつもの地域で適切な範囲にまで到達するには時間がかかりそうです。したがって、今後も、引き続き新たな患者が見つかることが予想されています。

これまでのところ、黄熱患者が確認されている3つの州でネッタイシマカにより伝播している証拠はありません。しかし、昆虫学上、これら3つの州の都心部では、2016年後半にデング熱、チクングニヤ熱、ジカウイルス感染症の流行発生が記録されていることから、アルボウイルスの感染伝播を十分に維持できる高い能力をもっていることが示されています。

アルゼンチン、パラグアイ、およびボリビアと国境を接する州では、農村部で動物の集団感染の発生が疑われる報告があり、これらの地域は、黄熱の感染伝播に適した条件にある上に、ワクチンの接種率が十分なレベルではないことから、複数の国で感染が拡がることへの懸念要因となっています。これらの国にウイルスが侵入すれば、黄熱の大流行が起きる可能性があります。

発生状況の進展の視点からからみれば、今後の数週間に行われるカーニバルへの旅行者が主要都市以外へも旅行する可能性があることを考えると、ブラジル国内でさらに(感染が)拡大することは排除できません。また、国際に(感染が)拡大するリスクも公式には排除できません。しかし、このリスクは現実的には低く、ワクチン接種を受けていない旅行者が感染の発生した地域から帰国したときに限られます。ウイルスを保持した帰国者には、感染伝播を起こす能力のある蚊が生息するほとんどの地域で、黄熱を地元で地域循環させることの確立へのリスクがあります。

WHOは、入手できる最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視し、リスクアセスメントを実施しています。

WHOからのアドバイス

ブラジルで黄熱の伝播のリスクのある地域を訪れる予定の旅行者へのアドバイスとして、黄熱の予防接種は旅行の少なくとも10日前から含めること、蚊刺しを避ける対策をよくみておくこと、黄熱の自他覚症状に注意を払うこと、黄熱が伝播する地域の旅行中および帰宅後、特に、黄熱を媒介できる蚊が国内に生息する国に帰国した後にも、素早く医療施設を受診できるようにしておくこと、が挙げられます。

IHRの補足7に書かれているように、黄熱ワクチンを1回接種すれば、十分に、黄熱に対して免疫応答が維持され、生涯にわたり予防することができます。免疫力の増強のために黄熱ワクチンを追加接種する必要はありません。もしも、医学的な理由で、旅行者が黄熱の予防接種を受けることができないならば、そのときには、IHRの補足6と補足7にしたがって、関係する保健当局からの証明書を取得しなければなりません。

WHO事務局は、現在、入手できている情報に基づく限り、ブラジルへの旅行および貿易の制限を推奨はしていません。

出典

WHO.Disease outbreak news, Global Alert and Response(GAR). 24February2017
Yellow fever- Brazil
http://www.who.int/csr/don/24-february-2017-yellow-fever-brazil/en/