2017年04月04日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新10)

2017年4月3日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2017年第1週から第13週までに、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、スリナムでは黄熱の疑い患者と確定患者が報告されました。

ブラジルから、次のように発生状況が報告されています。

ブラジルでは、2016年12月始めの流行発生以降、2017年3月29日までに、黄熱患者1,987人(確定患者574人、破棄926人、疑い患者および検査中の患者487人)が報告されました。このうち、282人(確定患者187人、破棄24人、検査中71人)が死亡していました。死亡率(CFR)は、確定患者で33%でした。

感染する可能性が高い地域として、330の行政地区から患者が報告されました。このうち、確定患者は5州(エスピリト・サント州、ミナス・ジェライス州、パラ州、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州)101行政地区に分布していました。

確定診断された死亡者と感染の可能性が高かった死亡者は、ミナス・ジェライス州が137人、サンパウロ州が4人、エスピリト・サント州が43人、パラ州が2人、リオ・デ・ジャネイロ州が1人でした。疑い患者と確定患者を合わせた死亡率は、高い順に、パラ州で100%、サンパウロ州で80%、ミナス・ジェライス州で32%、リオ・デ・ジャネイロ州で31%、エスピリト・サント州で17%でした。

ミナス・ジェライス州とエスピリト・サント州では、5週連続して疑い患者と確定患者の減少傾向がみられました。一方、リオ・デ・ジャネイロ州では、3月9日から15日にかけて増加の傾向がみられました。この傾向がこれからの数週間も続くかどうか、見極める必要があります。リオ・デ・ジャネイロ州では、Casimiro de Abreu地区において現地で感染した6人の患者が報告されました。ここは、リオ・デ・ジャネイロの市街から136km離れています。また、第13週には、パラ州Alenquer地区でも現地で感染した黄熱患者2人が確認されました。パラ州では2014年7月から2016年5月にかけて2人の患者が確認されており、黄熱の感染リスクがあると考えられる地域とされていました。

これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。しかし、エスピリト・サント州Vitori(ビトリア)、バイーア州Salvador(サルバドール)といった大都市でも動物での集団感染の発生が確認されており、感染伝播サイクルの変化に対するリスクが高まりをみせています。

前回から2017年3月29日までに更新された黄熱に関する疫学情報では、人以外の霊長目による動物での集団感染の発生が、新たに1,484件報告されました。流行の開始以降、3月29日まででは、人以外の霊長目による動物での集団感染が合計で2,712件報告されました。このうち466個体で黄熱への感染が確認され、896個体で検査が行われています。74個体では、診断が棄却されました。

人以外の霊長目による集団感染は、連邦直轄地区と、アラゴアス州、アマゾナス州、バイーア州、ゴイアス州、エスピリト・サント州、マット・グロッソ州、マット・グロッソ・ド・スール州、ミナス・ジェライス州、パラ州、パライバ州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、リオグランデ・ド・スール州、リオ・デ・ジャネイロ州、ロンドニア州、サンタ・カタリーナ州、サンパウロ州、セルジッペ州、トカンティンス州から報告されています。

(コロンビア、ペルー、ベネズエラと国境を接する)アマゾナス州、(ボリビア、パラグアイと国境を接する)マットグロッソ・ド・スール州、(ガイアナ、スリナムと接する)パラ州、(アルゼンチン、パラグアイと接する)パラナ州、ウルグアイとアルゼンチンと国境を接する)リオグランデ・ド・スール州、(ボリビアと接する)ロンドニア州、(ガイアナ、ベネズエラと接する)ロライマ州、(アルゼンチンと国境を接する)サンタ・カタリーナ州、では、人以外の霊長目による集団感染の発生が報告され、現在も調査が行われており、これらは、国境を接する国々、特に共通の生態系をもっている地域に、ウイルスが拡がるリスクのあることを示しています。

PAHOからの勧告事項

PAHO / WHOは、現在のブラジルでの黄熱の発生状況、および数年間は患者が発見されて来なかった地域で患者が発生していることを踏まえ、黄熱患者を発見し、確認し、速やかにかつ適切に治療するための取り組みを続けることを、加盟国に促しています。この目的のために、医療従事者は常に最新の情報を把握し、特にウイルスの伝播が確認されている領域においては、患者を発見し、治療するためにトレーニングしておくことが必要です。

PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを求めています。

黄熱ワクチンの接種について
黄熱への最も重要な予防対策は、ワクチン接種です。ワクチン接種は、小児期の定期的な予防接種や発生リスク地域でワクチンの接種率を高めるために行う独自の集団接種キャンペーンを通じて、実施されています。また、リスク地域を旅行する者へのワクチン接種も行われています。

黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80~100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。

入手できるワクチンの量には限りがあるため、各国の担当部局は、黄熱の感染リスク地域におけるワクチン接種率を評価し、ワクチンの分配に重点を置くことが求められます。また、流行が発生する可能性に備えて、国のレベルでワクチンの在庫量を維持することが求められます。

次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•一般の健康人で急性の発熱性疾患を患っている人
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対する過敏症の既往歴のある人
•妊娠中の女性(緊急事態や規制当局からの明白な勧告がある場合を除く)
•重度の免疫不全(例、がん、白血病、AIDSなど)のある人
•6か月未満の乳児
•胸腺に関連する疾患を有する人(年齢は問わない)

高齢者でのワクチン接種に対する注意事項
•ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に感染したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。

出典

PAHO.Epidemiological Update. 3 April 2017
Yellow Fever
http://www2.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=38966&lang=en