2017年05月10日更新 ヨーロッパでの麻しん流行のアメリカ大陸への影響

 2017年5月4日付で、汎米保健機関(PAHO)より、ヨーロッパでの麻しん患者の報告が増加していることを踏まえて、(アメリカ大陸地域でも)人々を麻しんと風しんから防ぐために、調査活動の体制を強化し、適切な対策を実施することと、アメリカ大陸地域でこれらの病気が既にゼロである状態を維持することに努めることを、加盟国に要請しました。 ここでは、公表された注意喚起情報のうち、発生状況についての要旨を紹介いたします。

アメリカおよびその他の地域における発生状況の概要

 2016年には、アメリカ大陸の3か国で麻しん確定患者93人が報告されました。これは、アメリカ大陸史上で最も低い発生率(0.093/1,000,000人)でした。しかし、この年、疑い患者の報告率が大幅に低下し、人口10万人あたり1.9と最も低い水準に達していました。麻しんおよび風しんの疑いのある患者に対する高い報告率を維持することで、感染輸入される患者は(初めて)速やかに発見されることが可能となります。

 2017年第1週から第17週までの間に、アメリカ大陸地域の3か国から患者84人、アルゼンチン(2人)、カナダ(39人)、アメリカ合衆国(43人)が、報告されました。2016年と2017年に確認された患者すべてが、世界の他の地域から感染輸入されたもの、もしくは、感染輸入に関連したもの、または、感染源が不明なものでした。入手できている情報に基づく2017年にアメリカ大陸地域で報告された確定患者の主な特徴は、次のとおりです。
ワクチン接種については、接種を受けた人が47%(37人)、ワクチン接種を受けていない人が40%(31人)、ワクチン接種歴が不明な人が12%(10人)でした。患者6人については、ワクチン接種歴に関する情報がありませんでした。
年齢に関する情報のあった患者76人のうち、15〜39歳の青年および成人が49%(37人)でした。
性別について得られた情報では、患者73人のうちの59%(43人)が男性でした。
感染した可能性のある国について情報が得られた患者は46人で、このうち57%(26人)がインドからでした。
確認された遺伝子型は、アルゼンチンではD8、カナダではB3とD8、米国ではD8、B3、H1でした。

 2016年1月初めから2017年5月1日までに、ヨーロッパ37か国から合計で麻しん患者7,847人が報告されました。2017年に報告された患者は、このうちの34%でした。患者の大半は、ルーマニア(3,181例)およびイタリア(1,549例)から報告されました。入手できている情報によ基づく2016-2017年にヨーロッパで報告された(麻しん)流行の主な特徴は、次のとおりです。
ワクチン接種歴について得られた情報では、患者4,646人のうち87%がワクチン接種を受けていませんでした。
年齢層について得られた患者5,101人からの情報では、1〜4歳の子どもが31%、20歳以上の成人が27%でした。
入手できたデータに基づき確認された遺伝子型は、D8(669人)、B3(323人)、H1(28人)およびD4(2人)でした。

 また、同じ時期に報告されたすべての患者のうちのヨーロッパ4か国で、死亡者が25人(ポルトガルで1人、ルーマニアで22人、スイスで1人、イギリスで1人)報告されています。

 この他の大陸では、2016年から2017年にかけて、中国、エチオピア、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、フィリピン、ナイジェリア、スリランカ、スーダン、タイ、ベトナムなどで、麻しんの流行が報告されました。

 南北アメリカ地域は、国際専門家会議(IEC)が2015年に風しんに対して、2016年に麻しんに対して、それぞれにゼロとなったことを宣言した最初の地域でした。このため、これらの排除達成を維持するための取り組みを続けていくことが重要です。これらのウイルスの侵入および拡散を防ぐための軸となる対策は、感染し易い人々へのワクチン接種と、麻しん疑い患者と風しん疑い患者をどんな場合でも速やかに発見できる感知度を備えた質の高い調査体制になります。

 他の大陸では(現在も)麻しんウイルスと風しんウイルスの感染伝播が続いていることを踏まえると、 南米(7%)と中米(6%)を中心に、2016年に国際旅行でアメリカ大陸に降り立った人が4%増加していることや、北半球の国々ではホリデー・シーズン(夏期休暇シーズン)が近づいていることなどから、ワクチン未接種の旅行者の中から患者が発生することが予想されます。

出典

PAHO. Epidemiological Alert. 4 May 2017
Measles outbreak in Europe: implications for the Americas
http://www2.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=39836&lang=en