2017年07月13日更新 コレラ流行の発生- ナイジェリア

WHOは、2017年7月12日付けで、ナイジェリアで発生しているコレラについての情報を公表しました。

情報の詳細

ナイジェリアは、2017年6月7日に、Kwara(クワラ)州でコレラが発生したことをWHOに報告しました。感染は現在も続いています。2017年4月の最終週に急性水様性下痢症を伴う最初の症例が報告され、2017年5月1日以降、患者数と死亡数の急激な上昇が観察されました。しかし、最近の4週間に報告された新たな患者の数は、減ってきています。

2017年6月30日時点で、合計1,558人のコレラ疑い患者が報告されました。このうち、11人が死亡(致死率0.7%)しました。これらの患者のうち13人は検査施設での細菌培養によって確認されました。報告された疑い患者の50%が男性、49%が女性でした(疑い患者の1%は性別に関する情報が欠損していました)。この病気は、すべての年齢層で感染が発生しています。

2017年5月1日から6月30日までに、クワラ州では5つの地方自治区からコレラ疑い患者が報告されました。(内訳は)Asa(18人)、Ilorin East(450人)、Ilorin South(215人)、Ilorin West(780人)、およびMoro(50人)でした。45人は地方自治体の情報が欠損していました。

感染の発生地域でみられる粗末な衛生環境は、このコレラ流行の原因の1つとなっています。大きなリスク要因は、清潔な飲み水の利用環境の不足と衛生環境の悪さです。

公衆衛生上の取り組み

政府保健省は、ナイジェリア疾病対策センター、ナイジェリア現地疫学(調査)および検査の訓練プログラム、国立・初期保健医療・推進局:National Primary Health Care Development Agency(NPHCDA)、Ilorin大学研修病院、WHO、および支援組織などの支援を受け、流行への対策の調整を図る緊急対策センターを設立しました。そこでは、次のような対策が実施されています。

  • 技術支援を提供するために、全国から多領域にわたるチームが、クワラ州に配置されました。
  • 患者は、クワラ州の現地医療施設で管理されています。感染が発生した周辺地域では、積極的な患者の探索が行われています。これらは、上記の支援組織からの調査チームと地方自治体の疾病調査および報告のための監視員(DSNOs)で構成され、強化されました。
  • 現在、患者の照合とデータの入力が行われています。
  • 検査に基づく調査を向上させるために、指定された施設とその施設の利用に対して訓練を受けた医療スタッフに、コレラ迅速診断・検査機器が配布されています。
  • 患者の管理を改善するための取り組みが進められています。最も感染の発生した3つの地方自治区では、2017年6月15日に、臨床医がコレラ患者の管理と感染の予防および管理(IPC)についての訓練を受けました。現在のIPCの対応能力は十分でなく、安全な飲み水の利用環境も乏しく、上下水道などの衛生環境が悪いことに加えて、IPC基準を遵守するという厳しい課題もあります。取り組みは、(物資の)供給の限界と、一般的には、患者が治療費を払わなければならないという要件によって、さらに妨げられています。
  • 現地活動員の活動は、ヨルバ語のラジオ'jingles'を使って続けられています。宗教指導者は感染の発生した状況に注意を払い、(感染への)意識向上を図り、医療施設への早期受診を促してきました。家庭での水の処理と安全な飲み水を貯蔵しておくためのAquatab(錠剤試薬)の使用について、現地で1軒ごとに訪問して指導する活動が行われています。
  • 環境調査が進められていますが、水の(調査)試料(地域にある井戸や家庭の飲み水)がコレラ菌に陽性を示しています。
  • 検査施設での対策活動として、医療施設2か所での迅速診断・検査機器の事前配布と使用に関する現場での訓練が行われています。コレラ菌の感受性検査の結果は、テトラサイクリンおよびアンピシリンに対して耐性を示しています。また、迅速診断キットが追加されることになっています。
  • 多角的な解決方法の必要性が強調され、参加が促されています。これには、政府保健省による適切な医療廃棄物の管理と、水資源省による清潔な携帯用飲み水の利用環境の整備が含まれます。

WHOによるリスクアセスメント

現在の流行は、この国が深刻な人道危機に直面している状況で、大規模な髄膜炎の流行から回復している最中に、発生しています。現段階では、国全体としてのリスク・レベルで中等度です。

この流行で懸念される潜在的な問題には、進行中の雨季、流行を管理する州レベルでの対応能力の課題、および、ベニン共和国を始めとして他に5つの州と境界を接していることが挙げられます。これらの問題には、流行の悪化につながり、他州や近隣諸国に感染が拡大する可能性がありますが、この国には、この流行の発生を素早く管理する能力があります。

この流行に対して、如何なる感染拡大の可能性も早期に容易に発見するために、隣接する州では、監視体制を強化する必要があります。

WHOからのアドバイス

WHOは、医療施設レベルで、新たな患者の発見と記録保持およびデータ管理能力の向上を図るために調査活動の強化を勧めています。WHOは、適切な物品が配備され、必要な医療品が確保されるために、最も感染の発生した地域にコレラ治療センターを緊急配備することを勧めています。この流行に上手く対処していくには、たくさんの部門からの解決方法の確立が必要です。

WHOは、現在の状況において入手できている情報に基づく限り、ナイジェリアに対して渡航や貿易に制限を加えることは勧めてはいません。

出典

WHO.Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 12 July 2017
Cholera - Nigeria
http://www.who.int/csr/don/12-july-2017-cholera-nigeria/en/