2017年08月09日更新 イエメンのコレラ流行の視察後の声明の要約-WHO事務局長

 WHO事務局長Tedros Adhanom Ghebreysus氏は、UNICEF、WFPとともにイエメンを視察後、8月4日に、加盟国に対して、声明の要約を掲載しました。

声明の要旨

 今日、イエメンでの私の最も新しい任務とその地での健康問題の発生状況について、簡単にお伝えする機会をいただいたことに、傑出した大使であり代表者もあるAli Mohamed Saeed Majawar大使に、感謝します。

 WHOの国別プログラムにおいてし、私の最初の任務がイエメンとなったのは偶然ではありません。イエメンの悲惨な状況は、私がリーダーシップをとるべき優先事項です。私たちは、最も(環境変化に)脆く、複雑な環境で、医療支援の普及に努めていかなければなりません。医療体制が確実に計画外の出来事や計画外の状況を認識し対応できるようにしなければなりません。特に、感染からの危険に対しては、WHOの国事務所が主導できる能力と卓越した技術をもち、確実に、責任をもって、予測できて、専門的に対処して行かなければなりません。

 この合同でのミッション(UNICEF、WFP、WHO事務局長の合同での訪問)は、この種の最初の(行動)となりました。この行動は、3つの組織の事務局長が、非常に複雑で壊れやすい環境の中で、必要なことに自暴自棄になりがちな人々に対して、主要な社会サービスを確実に提供するために、私たちがどのように対処能力を結集し(支援を)強化できるかを、自分たちの目で確かめに行くことでした。私たちは病院を訪れ、病気の人、その家族、そして、彼らの治療にあたる医療従事者と話を重ねました。

 2年間の紛争は国民の日常生活を荒廃させ、最低限の医療さえも利用できない環境に約1,500万の人々を置きました。1,700万の人々が飢餓の危機に瀕しています。1,600万人は、ロンドンとニューヨークを合わせた人口に等しく、この規模の人たちが清潔な水や衛生環境を得られていません。子どもたちや、その他にも感染に弱い人たちは、ほとんどが常に苦しんでいます。イエメンの子どもたちの80%近くが、直ぐにでも人道上の援助を受ける必要があります。この1年間に、少なくとも子どもたち1万人が予防できる病気で死亡し、200万を超える人々が栄養失調に陥っています。栄養失調を悪化させるコレラなどの病気にも罹りやすくなっています。

 特に懸念されるのは、医療保健の体制が脆弱であることです。現在も続くコレラの流行は、この体制の弱体化の症状を示しています。また、コレラは弱体化した医療体制の下で増加します。私たちは、2016年10月に始まった流行のうち、第2の流行の波を目の当たりにしています。4月27日から8月1日までに、1,921人の死亡者と44万3,000人を超える疑い患者が記録されました。この国に23ある行政区画のうち22区画で感染が発生しています。この数週間は、コレラ患者数は減少傾向でしたが、発生状況は悲惨なままであり、雨期に入ったために、患者がさらに増える可能性があります。

 私たちは、UNICEFとともに、1,000を超える下痢症治療センターと経口補水液の補給コーナーを設置しました。重要な生活基盤(病院、地域医療センター、上下水道の設備のネットワークなどの復興など)の再建として、救急車を含め、栄養補助剤、点滴用の輸液およびその他必要となる医療品の分配が続けられています。WHOとユニセフは、支援者とともに、約16,000人の地域ボランティアが1軒ずつ家庭を訪問して、下痢やコレラから自分自身で身を守る方法について説明する啓発キャンペーンを展開しています。また、私たちは、水源でのコレラ対策に取り組み、清潔な水を利用できる環境を大幅に拡大することにも努めています。コレラが疑われる病気となり、医療サービスを利用できた人の99%以上は生存しており、私たちは、(共同での取り組みで)結果を上げてきています。

 同時に、イエメンでは、病気の人たちの治療を行う医師や看護を行う看護師が不足しています。一部の人は国を逃れてしまいました。しかし、多くの人々が10か月以上も給与の支払いを受けていなくても、仕事を続けています。この間に、彼らを支援するために、WHOとUNICEFは、私たちができる時と場所で、報奨金、旅費、残業代、その他の諸手当などを支払っています。けれども、それはいつまでも続けられる解決策ではありません。その他にも、全医療施設のうち55%を超える施設が閉鎖、もしくは一部しか機能しておらず、333地区のうち49地区には医師もおらず、輸入と物流の制限によって物資の供給の連鎖が妨げられ、全体としての組織の支援や資金調達の実施も限られていることなどが、課題となっています。そして、最も貧しい人々への支援の分配は、イエメンの人道支援対策における大きな課題となっています。

 多くの課題はありますが、私は、献身的で士気の高い人々が24時間体制で懸命に働き、支援を提供し、最も(社会から)弱い人々に手を差し伸べることに気付かされました。また、サービスの崩壊を回避するための栄養補給と健康維持のために、世界銀行が2億ドル以上の資金を拠出し、対処能力と生活基盤を再建することに早くから連携してくれたことで、イエメンではWHO、ユニセフ、WFPが合同で社会サービスの提供を支援することに取り組めたことを、私は初めて知りました。

 私は、緊急事態に対して国内および国際的な取り組みを主導し、調整を図る国家緊急対策センター(EOC)を訪れました。国家緊急対策センターでは、WHO、ユニセフ、およびWFPが、人的・物的資源を確保しながら、最大の影響力を発揮できるように、それらを使う最良の方法についての合意形成を図っています。私たちは、活動が最も難しい地域でも、全国から集うことのできるEOCを設立しています。イエメン保健当局は、この新しい方法での取り組みと、国内および国際的に人道上並びに医療上の支援組織の取り組みの調整を図ることとは、現実には違いがあることを私たちに伝えました。彼らは、現在、個々の支援機関で活動しているのではなく、統一された人道上の対策への取り組みの中で(活動する)存在であることを意識できています、と。

 私たちの合同ミッションでは、合同で取り組み、対話するために主な4つの優先事項を決めました。

 第一に、この紛争を即座に終わらせ、平和への行程を加速させ、人々が生き残るだけでなく、繁栄できるようにすること。WHO、UNICEF、そして支援組織は、いのちを救い、医療体制を支援するために、我々ができる全てのことをやっていきます。しかし、平和が来なければ、人々の苦しみが終わることはありません。イエメンの指導者たちと、Adenn(アデン)とSana'a(サナア)で会ったとき、私たちは、人道支援で活動する人々にも、内戦が発生している地域に行ける環境を確保することを、彼らに要請しました。また、内戦に対して平和的で政治的な解決策を見つけることを、彼らに促しました。

 第二に、紛争が続く地域でも、上下水道などの衛生設備や医療施設などの民間による生活基盤が、国際人道法に則って、常に保護されるようにすること。アデンとサナアで、私たちは国際人道法を尊重し、民間による生活基盤への攻撃を控えるように、この加盟国(イエメン)に求めました。

 第三に、支援提供者は4月にイエメンで高いレベルでの出来事として決められた誓約を果たすとともに、もっと柔軟な方法で、この危機に対して資金を提供する必要があること。医療従事者に確実に報酬が支払われ、彼らがその地位に留まり、地域社会で活動を続けるための奨励金が支給されるべきこと。WHOの人道的な復興計画の構成要素は、比較的、資金に恵まれています。しかし全体的に訴える力がありません。

 最後に、長期的な復興と発展のために、政治的、財政的、技術的支援を提供すること。世界銀行、UNICEF、WHOとの間で、医療部門を活性化しながらサービスを提供する連携協定は有用なモデルとなります。私たちは、この国の保健衛生の体制を再構築することが必要です。そうすることで、将来への健康リスクを防ぎ、よりよく抑えていくことができます。

 本日、私は、この国の悲惨な現状を終息させるために、イエメンの人々と一致団結して、最大限の努力を行うことをあなた方全員に要請します。脆い状態が失敗した状態に終わることは許されません。私たちは人道上、それを許すことはできません。私たちは、公衆衛生の目標として、それを許してはいけません。また、健康保証において私たちの一致した目標として、許すこともできません。あなたがたの助けを借りることで、私たちはイエメンの人たちの健康と福祉を長年にわたって護ることができます。

出典

WHO. Director-General's Office. 4 August 2017
Yemen and joint mission with UNICEF and World Food Programme
http://www.who.int/dg/speeches/2017/yemen-joint-mission/en/