2017年10月26日更新 マールブルグ病の発生 - ウガンダ(更新)

 2017年10月25日に公表されたWHOからの情報によりますと、ウガンダ保健省は、ウガンダ東部Kween(クウェエン県)でマールブルグ病の発生を確認したことを、WHOに報告しました。保健省は、2017年10月19日に、公式にこの流行発生を宣言しました。

記事の詳細

 10月24日までに、患者5人が報告されました。確定患者が1人、確定患者との疫学的な関連性から感染の可能性の高い患者が1人、医療従事者2人を含めた疑い患者が3人です。

 時間の経過から、報告された感染の発端となる患者(感染の可能性の高い患者)は、30歳代の男性でした。彼は、娯楽で狩りをしており、大量のコウモリが生息する洞窟の近くで暮らしていました。9月20日に、彼は、発熱、嘔吐、下痢のために地元の医療保健施設に入院しました。その後、抗マラリア薬での治療には反応しませんでした、彼は、病態が悪化したために、隣県の中央病院に搬送されましたが、同日、彼は死亡しました。検体は採取されませんでした。彼には、伝統的な埋葬による葬儀が行われ、およそ200人が参列しました。
 感染の発端となる患者の女兄弟(確定患者)が彼を看病しており、埋葬儀式にも参列していました。彼女は、10月5日に体調が悪くなり、発熱と出血徴候が現れ、同じ医療保健施設に入院しました。その後、彼女は同様に中央病院に搬送されましたが、死亡しました。彼女にも、伝統的な埋葬による葬儀が行われました。死亡後に検体が採取され、ウガンダ・ウイルス研究施設に送られました。10月17日に、同施設でのRT-PCR法検査によって、マールブルグ・ウイルスへの感染であることが確認されたため、その結果は、直ちに、保健省に報告されました。
 3人目の患者(疑い患者)は、上記2人の患者の兄弟です。彼は、女兄弟の病院への搬送の付き添いをしていました。その後、彼は症状を発現しました。(しかし)彼は、病院への入院を拒み、集落の中に帰っていきました。現在、彼の所在は不明となっており、彼を発見するための努力が続けられています。
 確定患者との接触のあった医療従事者2人がマールブルグ病に一致する症状を発症しました。彼ら(疑い患者)には、検査が行われています。マールブルグ病を除外するための検査結果を待っているところです。

 接触者の追跡と健康監視への取り組みが始められました。10月23日までに、2つの県で、感染の発端となる患者との接触者66人と2人目の患者との接触者89人を合わせた155人の接触者名簿が作成されています。この中には、医療従事者44人も含まれています。家族構成員と集落の接触者の数は、現在も調査中となっています。

公衆衛生上の取り組み

・ウガンダ保健省は、WHOおよび支援組織の協力の下、速やかにこの感染発生への対応に取り掛かりました。発生の確認から24時間以内に、現地での緊急対策チームがこれら2県に設置されました。
・対策活動の調整を図るために、国の緊急対策室が招集され、今回の事態の担当責任者が任命されるとともに、情報管理体制(Incident Management System;IMS)の枠組みの策定、現地で緊急対策室の設立、緊急対策計画の作成などが行われました。
・感染の発生した集落地域や医療機関内での健康監視に加えて、調査活動、精力的な患者の探索、接触者の追跡、健康監視など、マールブルグ病への感染対策の取り組みが開始されました。
・感染が発生した県には、個人用保護具が配備されました。医療従事者は、高度な(感染への)警戒体制下に置かれ、感染の予防と管理(IPC)の手順と対応能力の徹底的な見直しを含め、訓練のための集会が計画されています。医療保健施設と病院には隔離施設が準備されています。
・感染が発生した県では、尊厳を保ち安全な埋葬を行うチームの訓練が行われています。
・偏見を軽減し、(患者の発見の)報告と早期受診への行動を促し、感染予防対策を受け入れられるようにするために、地域集落の関わりと意識向上へのキャンペーンが続けられています。情報、教育、伝達情報の資料や伝達事項などが一新され、届けられています。
・国際的な支援組織や関係者は、国レベルで関わり、また、国際的に、必要とされる対策のための支援と体制の補助を行うことにも関わっています。WHOは、追加スタッフとウイルス性出血熱(VHF)検査キット6セットを送りました。確実に緊急支援を実施し、対策の規模を拡げるために、WHO緊急対応基金(Contingency Fund for Emergencies)資金援助からの基金が準備されました。WHOは、GOARN(地球規模感染症に対する警戒 と対応ネットワーク)に警戒を促し、この対策の国際支援の調整を図っています。
・ユニセフは、情報の普及活動や地域集落との関わりを支援しています。
・国境なき医師団(MSF)が、治療センターの設立を支援するために派遣されました。

WHOのリスク・アセスメント

 マールブルグ病は、非常に高い致死率(致死率:23〜90%)をもって現れ、非常に毒性と流行を起こしやすい病気です。マールブルグ病の感染発生は稀です。このウイルスは、感染した人や野生動物(例えば、サルやフルーツ・コウモリ)の血液、体液および組織と直接に接触することで伝播します。

 臨床試験の可能性に向けて、候補となる実験的治療法およびワクチンについての検討が行われています。

 ウガンダは、これまでにも、マールブルグ病を含むウイルス性出血熱の再興に対する管理を行った経験があります。歴史的には、ウガンダでコウモリが生息する洞窟に入った鉱夫や旅行者での事例が報告されています。 マールブルグ病の感染発生には、次のような記録があります。
2007年:ウガンダ西部Ibanda(イバンダ県)で死亡2例を含む4例
2008年:それぞれ別々にウガンダ西部の洞窟を訪れた後、オランダと米国に帰国した旅行者2例
2012年:ウガンダ西部イバンダ県およびKabale(カバレ県)での死亡4例を含む15例
2014:ウガンダ中央部Mpigi(ムピジ県)での医療従事者1例

 10月24日までに、患者5人が確認されています。確定患者が1人、感染の可能性の高い患者が1人、疑い患者が3人です。ウガンダ保健省当局は、速やかに事態に対応しており、その発生を抑えるための対策が迅速に行われています。家族関係者の延長線上、医療施設、地域の伝統的な埋葬儀式に潜在する大量の接触者の存在は、この対策における課題です。また、入院した患者は、厳重な感染予防対策が行われることなく、一般病棟で対処されました。また、感染の可能性の高い患者が一定期間、入院を拒んでいました。

 感染の発生した県は、首都カンパラの北東約300kmのElgon(エルゴン)山・国立公園の北面に位置し、ケニアと国境を接する遠方の山間部にあります。エルゴン山の洞窟は主要な観光名所であり、宿主となるフルーツ・コウモリが洞窟に生息しています。(このコウモリは)マールブルグ・ウイルスを伝播することで知られています。また、感染地域はケニアと国境を接しており、感染の発生した地域とケニアとの間には国境を越える往来があるため、(コウモリの)生息地間でのウイルスの伝播や人への感染の可能性が、国境を越えて拡大するリスクを増大させています。
 これらの要因は、国や(この)地域のレベルで高いリスクがあることを示唆しており、国際的な支援組織の支援を得て、直ちに対策が図られる必要があります。洞窟やその周辺地域を含むエルゴン山への観光には注意が払われ、適切なアドバイスが提供され、予防対策が取られる必要があります。世界レベルでの事態に関連するリスクは低い状態です。

WHOのアドバイス

 マールブルグ・ウイルスの人から人への伝播は、主に血液や体液との直接的な接触が関連しており、適切に感染対策が取られていないときに医療処置が行われることに関連して、マールブルグ・ウイルスへの感染が報告されています。

 マールブルグ・ウイルスへの感染の疑い患者や確定患者の世話に当たる医療従事者は、血液や体液との接触や(ウイルスで)汚染された可能性のある環境と予防なしに接触すること避けるために、感染を制御するための予防対策を講じることが必要です。

 感染が発生したすべての保健医療区域内では、接触者の追跡や精力的な患者の探索などの調査活動を強化する必要があります。

 マールブルグ病の感染へのリスク要因の認識を高め、人がウイルスに接触することを減らすための予防措置が、人での感染と死亡を減らすための重要な対策となります。主な公衆衛生上の伝達事項には、次のことが挙げられます。
・フルーツ・コウモリが生息する鉱山や洞窟での長時間の滞在によって生じるコウモリから人への感染のリスクを低減させることが必要です。フルーツ・コウモリの生息地のある鉱山や洞窟での作業や研究活動、観光客が訪れる際には、手袋やその他にも適切な防護服(マスクを含む)を着用することが必要です。
・感染患者との接触、特に体液との直接接触や濃厚な接触から発生する人から人への感染リスクを低減させることが必要です。マールブルク病患者との濃厚な接触は避ける必要があります。自宅で病気の患者を世話するときには、手袋と適切な個人用保護具を着用することが必要です。家族関係者を見舞うために病院を訪れた後も、自宅で病気の患者を世話した後と同様に、きちんと手洗いをする必要があります。
・マールブルグ病が発生した地域集落は、集落内での偏見を避けるために、病気自体の特徴について住民によく周知させ、治療施設への早期の(患者の)紹介や死者の埋葬など、その他にも大流行の防止に必要な対策を促すよう努める必要があります。マールブルグ病で死亡した人は、迅速かつ安全に埋葬されることが必要です。

 WHOは、この事態で入手できている情報に基づいて、ウガンダに対し旅行や貿易に関していかなる制限も掛けないよう助言しています。エルゴン山のコウモリ洞窟を訪れる人は、コウモリと接触したり、人以外の霊長類の動物と接触したりすることを避け、可能な限り、手袋を着用し、マスクを含めて着衣で防護してください。

出典

WHO. Emergencies preparedness, response, Media centre. 25 October 2017
Marburg virus disease - Uganda
http://www.who.int/csr/don/25-october-2017-marburg-uganda/en/