2017年11月17日更新 オンコセルカ症―撲滅に向けた調査活動への移行

 2016年11月12日に、WHOはオンコセルカ症に対して、予防から撲滅に向けた調査活動へ移行される状況に来ていることの記事を掲載しました。この移行の背景には、日本人でノーベル賞を受賞した大村博士のイベルメクチンの発見が大きく貢献しています。

オンコセルカ症(河川盲目症)―予防から撲滅に向けた調査活動への移行

 世界は、オンコセルカ症(河川盲目症)を撲滅するために、村の人たちやボランティアを中心に、何年もの取り組みを重ねてきました。この寄生虫(による感染症)は、流れの速い河川に生息するブユに繰り返し刺されることで感染伝播します。この寄生虫への感染は、失明、視力障害、皮膚疾患などの原因となり、その患者すべてに障害を残します。

 この寄生虫を感染伝播させることが可能な地域はアフリカ地域、アメリカ大陸地域および東部地中海地域のWHOが管轄する3つの地域で、推定1億9,800万人が暮らしています。

 2016年には、オンコセルカ症のリスクのある地域で暮らす1億3,300万人が治療を受けました。2005年には、(治療を受けたのは)4,600万人でした。

アフリカ地域

 この地域では(感染対策が)進展してきているものの、撲滅には地域全体(100%)をカバーする必要があります。進展を妨げる障害には、政情の不安定やオンコセルカ症の撲滅プログラムを支援することの政策への意志の欠如があります。

 「アフリカ地域における治療者数は、2015年には1億1,900万人、2016年には1億3,300万人に増えました。」とWHOの世界オンコセルカ症撲滅プログラムを担当するPaul Cantey博士は述べています。

 これまでの感染制御へのプログラムが優れた成果を上げたことにより、このキャンペーン活動が、予防から撲滅へと移行してきました。最近に組織された顧みられない熱帯病の撲滅に向けた特別プロジェクト(ESPEN)は、2016年以降、オンコセルカの撲滅に加えて、その他の4つの顧みられない熱帯病と戦うために、予防的治療として始められたイベルメクチンの地域住民への配布を強化することで、支援組織、資金支援者、保健医療関係者と関わってきています。ESPENの優先する事項は、次の4つです。
・アフリカ全土で、感染が常在するすべての区域で地理的に完全な範囲での(薬剤の)配布を達成する
・大規模な(住民への)治療を中止できるように、疾患毎に特異性のあるデータを収集する
・科学的根拠に基づく意思決定を強化し、撲滅への進展を図るための情報システムを強化する
・寄贈された医薬品の配布、必要物品の流通管理、在庫状況の報告(体制)を向上させる

 ESPENは、戦略の作成に影響を与えるプログラムの評価への支援を続けています。支援は、感染伝播の低い地域でのオンコセルカ症の感染伝播に対する分布地図の作成や、大規模な住民への治療の中止を判断するために、血清学的評価で優先順位付けできる地域を確認することへの手助けとなる昆虫学的評価に向けられています。

新たな対策
 WHOのガイドライン2016年版でのオンコセルカ症の撲滅への重要なステップは、プログラムからのデータの外部での評価を提供してもらうために、国の主導で各国のオンコセルカ症プログラムから独立した専門委員会を設立し、保健省に助言を提供できるようにすることにあると規定しています。

 各国のプログラムとその支援組織は、目標を感染制御から感染伝播の撲滅へと移行させることの支援が必要であることを認識し、そのような委員会の設立に取り組んでいます。

 2017年10月現在、この地域の14か国で委員会が設立され、少なくとも1回は会議が開かれました。また、5か国では、2018年初旬に会議が開催される予定です。11か国では、まだ第1回目の会議が計画されていませんが、会議が開催されてきていることは大きな進展を示しています。

 「専門家委員会からの恩恵は、国を越えて拡大しています。多くの経験をもつ委員会が、各地域で問題に取り組むために必要となる国境を越えた協力体制を設立できるように、新たな委員会を支援しています。」「いくつもの委員会が(各国の)プログラムに評価結果を公表することを要請しています。これらのことは、他の国で得られた教訓を共有し、特定のプログラムへの取り組みの支援に科学的根拠をもって進めることを可能にします。」とPaul Cantey博士は述べています。

東地中海地域

 この地域でも進展が続けられていますが、スーダンとイエメンへのプログラムの取り組みは政情の不安定という課題があります。適切な場所で撲滅の分布地図の作成を実施し、治療活動を拡げるために、人的にも物的にも資源を導入する必要があります。これらの困難はありますが、イエメンでは、感染の可能性のある地域の地図の作成が続けられ、昔から感染伝播が知られていた地域以外の場所の特定が始められています。

アメリカ大陸地域

 この地域では、オンコセルカ症の撲滅に向けた目標とする年を2022年と定めています。WHOは、コロンビア(2013年)、エクアドル(2014年)、メキシコ(2015年)、グアテマラ(2016年)の4か国では、既に人におけるオンコセルカ症が撲滅されたことを確認しました。さらに最近は、WHOのガイドライン2016年版にも記載されているように、ベネズエラの北東部に注目が集まり、(ここは)治療後の調査活動の完了要件を満たしたと言われています。

 一方、大規模な住民への投薬(MDA)が、ブラジルとベネズエラの国境に跨るYanomami地域の2つ区域で続けられています。これまでに、アメリカ大陸ではオンコセルカ症への感染リスクに曝されているのは、30,561人だけとなっています。

 アフリカ地域と東地中海地域では、撲滅への移行に伴い大幅な進展が見られましたが、課題が残っています。現存する課題を克服するために、WHOは、運用するオンコセルカ症の研究的戦略を新たに組織するための体制整備・諮問のための小グループを設立しました。ここは、プログラムが科学的根拠に基づいたプログラムの(方針)決定を下せることを目的としています。

 昆虫学は早急に注意を払う必要のあるもうひとつの重要な問題であるにもかかわらず、訓練を受けた昆虫学者は不足しています。

 多くの課題はありますが、国および地域でのオンコセルカ症プログラムは進展を続けています。南北アメリカ地域では、4が国で感染が撲滅されたことが確認されており、アフリカ地域のいくつかの区域では局所的に感染の遮断が示されています。

 アフリカ全土での感染の遮断が手に届くところにあるという楽観的な見方もあります。まだ、障害は克服されていませんが、各国のプログラムと(そこへの)たくさんの支援組織が、ひとつずつ、これらに取り組んでいます。

出典

WHO. Neglected tropical diseases. 12 November 2017
River blindness: shifting from prevention to surveillance and elimination
http://www.who.int/neglected_diseases/news/shifting_from_prevention_to_surveillance_elimination/en/