2017年11月29日更新 ペストの発生報告 - マダガスカル(更新8)

2017年11月27日付けでWHOより、マダガスカルで発生しているペストについての状況が公表されました。

ペストの発生状況

マダガスカル保健省より、2017年8月1日から11月22日までに、確定患者、可能性の高い患者、疑い患者を合わせて2,348人がWHOに報告されました。死亡者は202人となりました(致死率8.6%)。患者は1,791人が臨床的に肺ペストに分類されました。(患者の割合は)確定患者が22%、感染の可能性の高い患者が34%、疑い患者が44%でした。これらの肺ペスト患者に加えて、腺ペスト341人、ペスト敗血症1人、未分類の患者215人も報告されました。医療従事者81名がペストに一致する症状を発現しました。(幸いにも)死亡者はでていません。

流行が始まって以来、肺ペストと腺ペストの患者が、ペストの非常在地域や大都市部を含めて、全国114県のうちの55県(48%)で確認されました。Analamang(アナラマンガ)地域圏での発生が最も多く、報告された累積患者のうちの68%となっています。

この流行中に確認された接触者(7,289人)全員で予防投与薬の服用を完了しました。(このうち)接触者11人だけは、ペストに一致する(何らかの)症状を発現したことから、疑い患者となりました。すべての接触者は健康監視を終えています。

パスツール・マダガスカル研究所は(これまでに)ペスト菌(Yersinia pestis)33株が分離培養されました。すべてのペスト菌は、感染制御に向けた国の計画で推奨されている抗生物質に感受性がありました。

マダガスカルの一部の地域には、ペストが常在していることから、2018年4月までの通常の流行期が終わるまでは、さらにペスト患者が発生する可能性があります。そのため、ペストの流行期が終わる迄は、感染制御の対策を続けることが重要です。

公衆衛生上の取り組み

マダガスカル公衆衛生省は、WHO、パスツール・マダガスカル研究所、その他の政府関係機関、関係団体や支援組織などの協力を得て、感染対策を主導しています。

マダガスカル公衆衛生省は、Antananarivo(首都アンタナナリボ)とToamasina(トアマシナ)で危機管理チームを立ち上げ、流行への対策の取り組みを主導しています。

すべての患者と接触者には、治療薬および予防投与の抗生物質が無償で提供されました。

公衆衛生上の対策としては、次のことが行われています。
・感染の発生したすべての県での疫学調査と患者の発見への強化
・新たな患者の速やかな調査
・検体の採取と、検査依頼および検査
・すべての肺炎患者の隔離と治療、並びに腺ペスト患者の治療
・積極的な接触者の発見・追跡・監視、および予防投与薬としての抗生物質の無償提供
・感染制御へのげっ歯類と媒介昆虫(ノミ)の駆除活動
・腺ペストや肺ペストの予防に対する国民への意識の向上
・医療従事者の間での意識の向上と、患者の発見、感染の制御対策、感染からの予防(の対処能力)を向上させるための情報の提供
・埋葬儀式の際の感染対策についての情報の提供

WHOは、流行への対策を支援するために、GOARN(地球規模の感染症への警戒と対応に向けたネットワーク)の中から地域および世界の支援者を動員し、調整を図るとともに、確実に必要とされる対策への支援をさらに迅速に行うために支援団体との協力を続けています。

WHO、GOARN、この他の支援組織は、合同で、接触者の追跡のために1,800人を超える現地の保健医療従事者と接触者の追跡を統括するとして約300人の医師を訓練しました。そして、患者発見のための緊急対策チームを設立しました。国際赤十字社(IFRC)、ユニセフ、米国国際開発庁(USAID)は、ペスト治療センターの設立などで、患者の管理を支援してきました。ペスト患者の検査確認は、パスツール・マダガスカル研究所(IPM)で行われています。WHOとIPMは、検査と判定のための対処能力を強化するために、検体を採取し、周辺地域からIPM検査施設に検査を依頼する体制を確立させました。

アンタナナリボとノシベ(Nocibé)の国際空港では、肺ペストの国際的な拡大を避けるために、出国時スクリーニング検査の強化対策が実施されています。

この対策には、次のことが含まれます。
・空港で特別(に準備された)出発フォームを記入すること(リスクのある乗客を特定するため)
・出国する乗客の体温のスクリーニング検査、さらに、発熱する乗客へは空港での医師の診察への誘導
・肺ペストに症状が合致する乗客の空港での速やかな隔離、迅速診断検査の実施、並びに緊急対策プロトコールに基づいた通知

(何らかの)症状のある乗客は旅行が許可されません。

WHOとGOARN合同チーム(米国疾病対策予防センター(CDC)、L'Institut de veille sanitaire(全国疾病モニタリング機構)/Santépublique France(フランス国立/公衆衛生局)[InVS / SPF])により編成)は、空港での手続きなどへの支援を提供しています。WHOと支援組織は、保健省が出国時スクリーニング検査を継続することの必要性を再検討できるように支援し、適切な勧告を実施して行きます。

アフリカ地域の9つの国および領土(コモロ、エチオピア、ケニア、モーリシャス、モザンビーク、レユニオン島(フランス海外県)、セーシェル諸島、南アフリカ共和国、タンザニア)は、マダガスカルと貿易や旅行者との結びつきが強いため、ペストに対する備えと管理体制の準備を行うための重要国とされています。これらの国々では、ペストに対する全国民への意識の向上、特に、入国地点での疾病調査の強化や(感染への)装備や必要物品の事前準備などを実施しています。WHOは、これらの国々が、多角的な視点からの危険性への全体的な備えと管理体制の準備にペストへの備えと管理体制の準備を組み込むことを支援しています。

WHOのリスク・アセスメント

2017年11月8日以降に新たな腺ペスト確定患者は報告されておらず、11月14日以降に肺ペスト確定患者も報告されていません。すべての接触者は、11月19日に経過観察(期間)を終えました。しかし、マダガスカルはペストの流行期であり、WHOは新たな患者の報告を予想しています。そのため、保健省、WHO、および支援組織には、2018年4月まで予防と対策への取り組みを続けることが重要となります。ペストの予防、備え、管理の準備には、さらに長期的な戦略が必要となります。

現在の疫学上の発生状況と対応能力を踏まえ、WHOは国レベルでのペストのリスクは中程度と見ています。(アフリカ)地域レベルおよび世界レベルでのリスクは低い状況です。

WHOからの旅行者へのアドバイス

これまでのところ、国際旅行に関係した患者は報告されていません。WHOは、マダガスカルに対し旅行や貿易に関していかなる制限も掛けないよう助言しています。肺ペストの発生が封じ込められていることを踏まえて、WHOは、この流行に関連して近隣諸国が実施している旅行への(対応)措置を中止することを勧めています。

マダガスカルに入国する旅行者には、マダガスカルにペストが常在することと、現在のペストの発生状況について知らされている必要があります。旅行者は、ノミの咬傷から身を守り、死んだ動物や感染した組織および物体との接触を避け、肺ペストの患者との濃厚接触を避けることが必要です。発熱、悪寒、痛みを伴うリンパ節の炎症、咳や血痰を伴う息切れなどが急に症状として現れた場合、旅行者はすぐに医療機関を受診する必要があります。旅行者は、予防の場合でも、自己投薬は避けるべきです。予防的治療は、患者との濃厚な接触者や、ノミの咬傷や感染した動物の体液・組織と直接に触れた場合など、他に高い(感染)リスクのある接触者にのみ推奨されます。マダガスカルへの旅行から帰国の後には、旅行者はこれらの症状に注意を払うことが必要です。症状が現れた際には、旅行者は医療機関を受診し、マダガスカルへの旅行歴があることを医師に申告する必要があります。

世界観光機関(UNWTO)事務局長の11月3日の訪問に続いて、国連は、マダガスカルの観光への信頼を表明しました。また、WHOがマダガスカルに対して如何なる旅行や貿易への制限に反対であるとの助言を繰り返しました。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 27November2017
Plague - Madagascar
http://www.who.int/csr/don/27-november-2017-plague-madagascar/en/

参考

◆外務省海外安全ホームページ:マダガスカルにおけるペストの流行(その3)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C228.html