2017年11月30日更新 HIV/AIDSについての10個の事実(ファクト・ファイル)

12月1日は、世界エイズ・デーです。HIV /AIDSに関するファクト・ファイルが更新されました。

10個の事実(ファクト・ファイル)

HIV /AIDSは、世界で最も大きな公衆衛生上の課題のひとつです。特に、低所得国および中所得国では大きな課題です。

最近は、抗レトロウイルス療法(ART)の利用環境が向上したことにより、HIV感染者は以前よりも長くより健康に暮らしています。また、ARTがHIVの感染を予防することも確認されています。

2017年半ばまでに、世界で2,090万人がHIVへの治療を受けるようになりました。(しかし)2016年の時点ではHIV感染者3,670万人のうちの53%しかARTを受けていませんでした。

母子感染の予防と撲滅、母親の生存の維持にも進展が見られました。2016年には、HIVに感染する妊娠女性10人中8人(110万人の女性)が抗レトロウイルス薬(ARV)を受けました。

WHOは、一連の基準となるガイドラインを発表し、各国で必要とされるすべての人々にHIVの予防、治療、医療支援および生活支援のサービスを向上させるとともに、規模を拡大させるための政策と策定した計画を実施できるように各国を支援しています。

このファクト・ファイルは、この病気に関する最新のデータ、および病気の予防法や治療法などの情報を提供しています。

事実1:HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫系の細胞に感染します。
感染は、免疫系を持続的に悪化させ、感染や他の病気から身体を守る能力を破壊します。AIDS(後天性免疫不全症候群)は、HIVへの感染の最も進行した段階であり、20を超える日和見感染症(のひとつ)または関連する癌の発生によって定義されます。

事実2:HIVにはいくつもの感染経路で伝播します。
・HIVは以下のような経路で伝播します。
・予防対策を行わない性交渉(膣または肛門)や感染者とのオーラルセックス
・ウイルスで汚染された血液の輸血や血液製剤の投与、ウイルスで汚染された組織の移植
・ウイルスで汚染された注射器材(針、シリンジ)および溶液、入れ墨の器材
・ウイルスで汚染された外科用器材やその他の鋭利な器具の使用
・妊娠、出産、授乳中の母親からその赤ちゃんへの感染伝播

事実3:HIV感染を予防するにはいくつかの方法があります。
HIV感染を防ぐ主要な方法は以下のとおりです。
・コンドームの使用などで安全に性交渉を行う。
・HIVなどの平行感染を予防するために、性行為感染症の検査と治療を受ける。
・薬物注射を使用しない。もし使用するとしても、常に無菌の注射針とシリンジを使用する。
・必要とされる如何なる血液や血液製剤もHIV検査を受けていることを確認する。
・もし、男性包茎手術への介入を促進している14か国のいずれかに住んでいるときには、自発的にこの処置を利用する。
・自分自身の健康や、性交渉の相手、薬物を使用しているパートナー、(妊娠中や授乳中の場合には)胎児や乳児にHIVが感染することを予防するために、できるだけ早くHIVの抗レトロウイルス療法を開始する。
・ハイリスクの行動に関わる前には曝露前の予防投与を行い、職場環境の内外を問わずHIV感染と接触した可能性がある場合には、曝露後の予防投与を要求する。

事実4:世界中で3,670万の人々がHIVに感染しながら生活しています。
2015年に、世界では約3,670万人(3,400~3,980万人)のHIV感染者が生活しています。そのうちの180万人(150~200万人)が子どもでした。HIV感染者の大半は、低所得国や中所得国で暮らしています。2015年に、新たにHIVに感染した人は約210万人(180~240万人)でした。これまでに、HIV関連の原因で約3,500万人が死亡しており、2015年には110万人(94~130万人)が死亡しました。

事実5:抗レトロウイルス薬の多剤併用療法(ART)は、HIVが体内で増殖するのを防ぎます。
HIVの産生が止まると、体内の免疫細胞が長く生きられるため、感染から身体を守ることができます。有効なARTは、体内のウイルス量が与えるウイルス負荷を減少させ、ウイルスを性的パートナーに伝播させるリスクを大幅に低下させます。HIV陽性パートナーをもつカップルがARTを受けている場合、HIV陰性パートナーへの性交渉による感染の可能性は96%も低下させることができます。HIV治療の適応範囲を拡大させることは、HIV予防への取り組みに貢献しています。

事実6:2016年半ばまでに、世界で1,820万の人々がARTを受けました。
ARTを受けているもののうち、1,600万を超える人々が低所得国と中所得国で暮らしていました。2016年に、WHOは、「HIV感染症の治療と予防のための抗レトロウイルス薬の使用に関する統合ガイドライン」の第2版を公表しました。このガイドラインには、CD4細胞数にかかわらず診断後はできるだけ早く、すべての妊娠女性および授乳中の女性を含めて、HIVに感染しているすべての子供、青少年、成人に生涯にわたるARTに提供するなど、いくつもの新しい推奨事項を示しています。また、WHOは、HIVに感染するリスクが高いとされる特殊な環境の人々に対し、初めてHIV薬曝露前予防策(PrEP)を提供することの勧告にも言及しました。代替治療の一次治療レジメンも勧告されています。

事実7:HIV検査は、必要とされる人々に確実に治療を行うことに役立ちます。

2030年までにエイズを終息させるという目標を達成するためには、HIV検査や医薬品の利用環境が今まで以上に劇的に改善されることが必要です。HIV検査を受ける人の範囲は、依然として限られています。HIV感染者の約40%(1,400万人)を超える人々が、診断を受けておらず、 彼らは感染の状態を知りません。WHOは、診断を受けていない人々でのHIV検査の利用を増やすために画期的なHIV自己検査機器と、パートナーへの通知方法を示しています。

事実8:約180万人の子どもたちがHIVに感染しながら生活しています。
2015年には、サハラ以南のアフリカで暮らす(子どもたちが)、妊娠、出産、授乳中にHIV陽性の母親からウイルスを伝播され、感染しています。 2015年には、約150,000人の子どもたち(110,000-190,000人)が、新たにHIVに感染しました。

事実9:母子感染の撲滅は現実味を帯びてきています。
多くの低所得国や中所得国では、予防への介入を利用できる環境が限られています。しかし、母子感染の予防や母親の生存など、いくつかの分野では、進展がみられています。2015年には、世界でHIVに感染している妊娠女性10人のうち8人(女性110万人)に抗レトロウイルス剤が投与されました。2015年に、キューバは、WHOが母親から子どもへのHIVと梅毒の伝播を撲滅させたことを宣言した最初の国となりました。2016年6月には、アルメニア、ベラルーシ、タイの3か国も、HIVの母子感染の撲滅が認証されました。

事実10:HIVは、活動性結核を発症させる最大の危険因子です。
2015年に、世界で結核を発症した1、040万人のうち120万人(11%)がHIV陽性でした。 また、同年、HIVに感染しながら生活している人のうち約390,000人が結核で死亡しました。WHOアフリカ地域事務局内で、HIV関連の結核死亡者数が、推定で約75%を占めました。

出典

WHO.Fact files, Media centre.Updated November2017
10facts on HIV/AIDS
http://www.who.int/features/factfiles/hiv/en