2018年02月28日更新 チクングニア熱の発生- ケニア

2018年2月26日にWHOから公表された情報によりますと、ケニアのモンバザでチクングニア熱が流行しています。

チクングニア熱の発生状況

2017年12月中旬から2018年2月3日にかけて、ケニア保健省には、モンバサ・カウンティ(海岸州)から、チクングニア熱患者453人が報告されました。ここには、検査確定患者32人と疑い患者421人が含まれています。

この感染の発生は、モンバサ・カウンティで高熱、関節痛、全身倦怠感を伴い医療施設を訪れる患者の数が増えたことから、確認されました。

2017年12月13日に、2つの民間病院から検体8本が採取され、ナイロビにあるケニア中央医学研究所(KEMRI)アルボ・ウイルス研究室に送られました。PCR法検査によって、検体8本のうち4本がチクングニア熱に対して陽性と判明し、4検体がデング熱に陽性と判明しました。さらに2018年1月4日には、疑い患者から検体32本が採取され、ケニア中央医学研究所に送られました。PCR法検査によって、このうちの27本がチクングニア熱に対して陽性、5本が陰性と判明しました。

多くの割合を占める約70%の患者で、激しい関節痛と高熱がみられました。感染者の間では医療施設への受診行動を取るレベルが低く(なるため)、患者報告数からは、この感染発生の規模が小さく見積もられている可能性があります。感染の発生している地域では、大規模な蚊の繁殖地があり、媒介する蚊の制御体制が不十分のため、伝播が拡大するたくさんの要因があります。

現地の医療施設からの報告に基づけば、この流行は、モンバサ・カウンティ下の6つの地区(Changamwe, Jomvu, Kisauni, Likoni, Mvita, Nyali)とKilifi(キリフィ)・カウンティ下の1つの地区に拡がっています。疑い患者の多くは、モンバサ市MvitaとLikoniから報告されています。

公衆衛生上の取り組み

公衆衛生上、次のような取り組みが行われています。
・WHOは、保健省がモンバサ・カウンティでのチクングニア熱への対策の草案を作成することを支援しています。
・WHOは、データ分析と発生状況の報告書の作成によって、国の緊急対策センターを支援しています。
・蚊の繁殖地の除去、室内外への殺虫剤の散布などで、媒介する蚊を制御する活動を行っています。
・感染の発生している地域では、民間病院を含めた全ての医療施設に対して、チクングニア熱の流行警報の発令とファクトシート(情報を記載した報告書)の発行が行われました。
・(感染についての)情報、教育、(状況の)情報普及に向けた資料が作成され、各地域の健康ボランティアによって、戸別に(資料が)配布されました。

WHOによるリスク評価

現在、入手できている情報に基づく限り、感染が発生している地域での感染伝播が続き、感染のない地域へと拡散するリスクは除外できません。

モンバサ市は、人口が約120万人のケニア第2の大都市です。この都市は、急激に人口が増えており、いくつもの地区で、過密状態、たくさんのむき出し状態のゴミの集積地、設備の不十分な下水道、澱んだ水(溜まり)、溢れる程の蚊の繁殖地がみられます。これらの要因は、モンバサの街から蚊が媒介する病気から防ぐ力を弱めています。モンバサ・カウンティは旅行者に人気の街でもあります。この地域のルワンダ、タンザニア、エチオピアとの交通の要所となっています。モンバサでチクングニア熱の活発な流行が検査確認されたのは、これが初めてです。このため、よりよく対処するには、さらに、ここで流行するウイルスの遺伝子配列を確認し、疫学上の現在の発生状況を評価することが必要となります。

WHOからのアドバイス

個々人による予防
基本的な予防対策が、住民とモンバサを旅行する人々の間で取られることが求められます。これらの予防対策には、虫除け剤の使用、長袖、長ズボンの衣服の着用などがあります。また、蚊の侵入を防ぐために、部屋の網戸の合わせ目を確認しておくことも含まれます。

日中の蚊刺しに対して皮膚の露出部分を最小限に抑える衣服の着用が勧められます。厳格に製品の指示に従えば、虫除け剤を露出した皮膚や衣服に使用することもできます。虫除け剤には、DEET(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、IR3535(3-[N-アセチル-N-ブチル]アミノプロピオン酸エチルエステル)、icaridin(1-ピペリジンカルボン酸、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル)などが含まれています。室内での蚊刺しを防止するには、エアコン、窓用の網戸、蚊取り線香、その他の気化性殺虫剤剤の使用、および、睡眠は日中でも蚊帳の中で取ることが勧められます。

媒介する蚊の制御
(感染の)予防と制御は、蚊の繁殖地となる自然や生活環境の中で水の溜まる容器など、生息場所の数を減らすことに大きく左右されます。これには、感染の発生した地域での活動員の取り組みや、(感染)制御対策の効果を評価するための昆虫モニタリング調査の強化、誤った理解や誤った噂を避けるために、必要に応じて追加の管理を実施することが必要となります。

WHOは、この事態について入手できている最新の情報に基づく限り、ケニアへの旅行や貿易に関して如何なる制限を適応も行わないでいることを助言しています。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 27February2018
Chikungunya- Mombasa, Kenya
http://www.who.int/csr/don/27-february-2018-chikungunya-kenya/en/