2018年03月13日更新 黄熱の発生状況 - ブラジル(更新2)

 2018年3月9日に、WHOからブラジルにおける黄熱の発生状況の更新情報が公開されました。黄熱の患者の増加に伴い、黄熱に対する対応策を強化している国がありますので、最新の情報に留意しておいてください。

記事の詳細

 ブラジルでは、2017年7月1日から2018年2月28日までに、黄熱の確定患者が723人報告されており、死亡者は237人に上りました。この数値は、この数字は、2016/2017年の同じ期間(確定患者576人、死亡者184人を含む)に報告された数値よりも多くなっています。この増加は、最も人口が集中し、これまでは黄熱ワクチンの接種が推奨されていなかった国内の一部地域で黄熱ウイルスが伝播している可能性が高いためです。

 確定患者は、多い順に、ミナス・ジェライス州(患者314人、死亡者103人を含む)、サン・パウロ州(同307人、95人)、リオ・デ・ジャネイロ州(同96人、38人)、エスピリト・サント州(同5人)、連邦直轄区(死亡者1人)から報告されました。
 サン・パウロ州では、確定患者の39.7%がMairiporã行政地区(サン・パウロ市の北15kmに位置する農村地帯の行政地区)で感染しているようです。リオ・デ・ジャネイロ州では、確定患者の46.8%が、Angra dos Reis(患者18人、死亡者7人)、Valença(同15人、5人)とTeresópolis(同12人、6人)行政地区の住民でした。これらの行政地区は、リオ・デ・ジャネイロ市から96kmから162キロメートルの範囲に位置しています。ミナス・ジェライス州では、確定患者の28.3%がBelo Horizonte市の南東および南東に位置する行政地区で暮らしていました。ここでは、前年2016/2017シーズンの流行時には、患者が確認されていませんでした。全ての確定患者が感染した可能性のある場所は、人以外の霊長目で黄熱の集団感染が記録された地域に一致していました。
 また、ワクチン未接種の旅行者における確定患者数が、以前に報告された7人(フランス人とオランダ人が各1人、アルゼンチン人2人、チリ人3人)から、10人に増えました。新たな3人は、アルゼンチン人(1人)と、直近のルーマニア人(1人)とスイス人(1人)の旅行者の報告でした。これらの患者が感染の可能性の高い地域についての調査が行われています。可能性の高い地域は、Angra do Reis(アングラ・ドス・レイス)市のMairiporã/ Atibaia(1人)、Ilha Grande、Angra do Reis(8人)とミナス・ジェライス州のBrumadinho(1人)です。

 2017年7月1日から2018年2月28日までに、人以外の霊長目での黄熱の集団感染が4,161件報告され、うち554件は検査確認されました。また、1,347件で調査が続けられており、1,478件は分類不能でした。782件は診断が棄却されました。動物の集団感染は国内27連邦州のうち23州から報告されています。人以外の霊長目の黄熱の循環が確認された動物の集団感染が、6州(エスピリト・サント州、マット・グロッソ州、ミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジャネイロ州、サン・パウロ州、トカンティンス州)で報告されました。サン・パウロは、動物の集団感染全体の40%を占めていました。

 2018年1月25日から2月28日に実施された大規模な予防接種キャンペーン中に、予防接種後の有害事象(AEFI)の調査が実施され、リオ・デ・ジャネイロ州(197人)とサン・パウロ州(205人)で標準用量の黄熱ワクチンを受けた402人に有害事象が発現しました。このうち81人(20.1%)が重篤な有害事象に相当していました。ワクチン分割投与量については、同じキャンペーン中に、リオ・デ・ジャネイロ州(45人)とサン・パウロ州(170人)で215人に有害事象が報告されました。このうち14人は重篤な有害事象でした。有害事象には調査中の報告が含まれており、その数値は、変わる可能性があります。

公衆衛生上の取り組み

 2017年9月以降、サン・パウロ州で黄熱患者と人以外の霊長類での集団感染が確認されてから、政府担当当局による大規模なキャンペーンと戸別訪問でのワクチン接種を通して、ワクチン接種への取り組みを強化してきました。また、州および行政地区の保健当局は、患者管理のための医療サービスを強化し、(感染)リスクの情報伝達への活動を行ってきました。

 2018年1月25日に、ブラジル政府の保健当局は、リオ・デ・ジャネイロ州(15地区)とサン・パウロ州(54地区)、バイーア州(8地区)の77行政地区を対象とした予防接種キャンペーンを開始しました。
 2018年2月28日現在、ブラジルの保健当局が実施した大規模な黄熱の予防接種キャンペーンの予備調査の結果では、5,525,080人(分割用量で5,031,089人、標準用量で493,991人)に黄熱ワクチンが接種されたことが示されています。この数字は、2州でのワクチン接種対象者23,812,288人の23%に当たります。

 強力な予防接種への取り組みが行われていますが、一部の行政地区では予防接種率が低いままとなっています。保健当局は、さらに、この接種率を上げるためにCatch-up(巻き返し)「d-Day」キャンペーンなどの広告戦略を展開しています。

 ブラジルでは、現在の流行状況に対応するために、一部の行政地区には黄熱ワクチンの分割用量が使用されています。数々の研究によれば、通常の5分の1の投与量でも黄熱ワクチンは、少なくとも12か月間、この病気に対して十分な免疫効果を与え、(効果は)より長く持続している可能性があることが示されています。分割投与は、人口密集地域での流行を抑制しながらもワクチンの供給不足を避けるために推奨されている戦略です。

WHOによるリスク・アセスメント

 2018年1月と2月での患者と動物の集団感染でみられる指数関数的な増加は、リスクの高い地域や新たな都市、特にサン・パウロやリオ・デ・ジャネイロなど、大都市の近郊での(流行)拡大や、これまでは黄熱のリスクがないと考えられていた行政地区での高度なウイルスの循環の維持によることが懸念されています。

 サン・パウロとリオ・デ・ジャネイロでの大規模な予防接種キャンペーンの予備調査の結果からは、予防接種率が低いことが示されており、これはかなりの数の人々に感染リスクがあり、リスクの高い住民の間でのリスクの情報交換を強化していく必要があることを示唆しています。
 大部分の住民に予防接種を行うために大きな力が注がれてきたにもかかわらず、患者数が増え、人以外の霊長類の集団感染の持続や地理的に拡がっていることは、ブラジル国内で今までは(感染)リスクがあると見られてはおらず、そのため予防接種率が低かった新たな地域にさらにリスクが拡大する可能性のあることが示されています。また、感染が森林型黄熱の伝播に最も好条件の時期に発生しているため、季節性についても考慮する必要があります。

 これまでのところ、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)が感染の伝播に関わっていることは報告されていません。森林型黄熱ウイルスは、Haemagogus属やSabethes属のような森林に生息する蚊によってサルに伝播しています。2016/2017年に感染の発生した州の一部で行われた昆虫学的調査では、主に森林型黄熱を伝播するHaemagogus属の蚊で陽性が示されました。さらに最近、ブラジル保健省から報告されたEvandro Chagas研究所(パラ州ベレン)の調査によれば、2017年にミナス・ジェライス州ItuêtaとAlvarengaの2つの行政地区の農村部で捕獲されたヒトスジシマカ(Aedes albopictus)から、黄熱ウイルスが検出されたことが明らかとなりました。この知見には、さらに調査が必要となります。ブラジルで最後に都市型黄熱の発生が記録されているのは、1942年のことでした。

 WHOは疫学的な発生状況への監視を行い、入手できる最新の情報に基づいて、リスク評価を繰り返し検討しています。

WHOからのアドバイス

 国際保健規則(2005年)の附則7 に則り、各国には(感染)リスクの情報やワクチン接種などの予防対策の情報を旅行者に十分に知らせることの維持に必要な行動、管轄地域内で指定された特別なワクチンの接種センターの情報を旅行者に知らせるために必要な行動全てを取っていくように要請しています。また、旅行者が黄熱の自他覚症状について注意し、症状が現れたときには速やかに医学上のアドバイスを求められるようすることも必要です。ウイルス血症を伴い帰国した旅行者は、(黄熱を伝播できる)媒介能力のある蚊が生息する地域では、局所的な黄熱の循環系を確立できるリスクを保っています。

 黄熱は予防接種で簡単に予防することができます。WHOが承認している黄熱ワクチンは、旅行前少なくとも10日間投与されれば、1回の投与で、生涯にわたり十分にこの病気からの免疫と保護を受けられ、ワクチンの追加投与の必要はありません。

 WHOはブラジルに行く外国人旅行者には予防接種を勧めています。黄熱の感染リスクのある地域に関する最新情報および国際的な旅行者への予防接種に関する関連する勧告は、2018年1月16日にWHOによって更新されました。WHOのITHウェブサイトでは、リスクと黄熱予防接種に関する推奨事項の改訂版の地図を入手できます。
 Yellow fever vaccination recommendations in the Americas, 2018

 WHOは、この事態について入手できている最新の情報に基づく限り、ブラジルへの旅行や貿易に関して如何なる制限を加えることも推奨していません。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 9 March 2018
Yellow fever - Brazil
http://www.who.int/csr/don/09-march-2018-yellow-fever-brazil/en/