2018年04月23日更新 ラッサ熱の流行- ナイジェリア(更新3)

 ラッサ熱は、西アフリカの風土病で、毎年、季節に伴う流行が12月から6月に発生します。2018年4月20日にWHOから公表された情報によりますと、ナイジェリアでの流行はかつてない規模となり、疑い患者の数は1,800人を超えました。

ラッサ熱の流行状況

 2018年1月1日から4月15日までに、疑い患者1,849人が報告されました。報告があったのは、Abia、Adamawa、Anambra、Bauchi、Benue、Delta、Ebonyi、Edo、Ekite、Federal Capital Territory、Gombe、Imo、Kaduna、Kogi、Lagos、Nasarawa、Ondo、Osun、Plateau、Rivers、Tarabaの21州です。疑い患者のうち、413人で診断がラッサ熱と確定され、9人で感染の可能性が高いとされました。患者1,422人では診断が棄却され、5人の疑い患者では、検査結果が待たれている状態です。確定患者として分類された413人と感染の可能性の高い患者9人のうち、114人が死亡しました(確定患者の致死率は25.4%、確定患者と感染の可能性の高い患者では27%)。

 2018年1月1日から4月15日までに、7州(Abia、Benue、Ebonyi、Edo、Kogi、Nasarawa、Ondo)で、27名の医療従事者が感染してしました。そのうち、8名が死亡しました。

 流行が始まった2018年1月1日から2月18日の週まで、毎週報告されるラッサ熱の患者数は10人から70人に増えました。(その後)2月末から3月初めに掛けて週毎に報告されるラッサ熱の患者数は20人以下となりました。4月15日の週に報告された新たな患者は、5人だけとなっています。

 ラッサ熱患者の治療センターが3州(Ebonyi、Edo、Ondo)で運用されています。これらのセンターで働く医療従事者には、基本的な感染の予防と管理、並びに、個人用防護具の使い方や患者の管理の仕方などの研修が行われています。また、現地チームによって、精力的に生活地域内で報告された疑い患者と死亡者についての調査が行われており、接触者への健康監視が続けられています。

 現在、Abuja、Irrua、Lagoの3か所で検査施設が稼働し、PCR法検査によってラッサ熱に対する検体の検査が行われています。2018年に発生した49検体に対して、Irruaの専門医研修病院、Bernard Nocht熱帯医学研究所(ドイツ)、アフリカ感染症ゲノム解析中央センター(ACEGID:ナイジェリア)、Redeemer's University(カナダ)によって実施されたウイルスの系統発生解析では、複数系統の独自に流入したウイルスや、これまでにナイジェリアでの流行が確認されている類似の系統のウイルスなど、さまざまなウイルスの証拠が示されました。これは、主要な感染経路がげっ歯類からの漏れ出てきているものと、限定的に人から人への感染伝播があることを強く示しています。

 WHOは、GOARN(世界規模の感染症に対する警戒と対応ネットワーク)を通して、主に調査体制の強化と患者の発見、接触者の追跡、診断能力の増強、患者の管理、個人用防護具の使用、リスク情報の普及などの領域で、引き続き、直接の流行対策への支援と国際支援の主導に当たっています。

 また、WHOは、引き続き、すべての治療センターにおける治療指針の標準化と報告と検査結果の(形式)の標準化に取り組んでいます。

 ラッサ熱は、西アフリカのガーナ、ギニア、マリ、ベナン、リベリア、シエラレオネ、トーゴ、ナイジェリアには常在しています。

公衆衛生上の取り組み

・1月22日に、政府のラッサ熱・緊急対策センターが首都アブジャで立ち上げられ、WHOや支援組織と連携しながら、引き続き、対策活動を主導しています。
・対策活動の指針を作成し、支援組織や人的・物的資源の動員での協力関係において優先分野を周知するために、全体的な感染発生への行動計画が作成されました。この計画は、現在の病気の疫学状況を考慮ながら検討され、更新されています。
・ナイジェリア疾病対策センターの(対策)チーム・スタッフとNFELTP (Nigeria Field Epidemiology & Lab Training Program: ナイジェリアCDCの疫学訓練組織)の職員が、先ず、Ebonyi、Ondo、Edoの各州での感染対策のために配置され、さらに、最近、Abia州にも配置されました。州レベルでの緊急委員会(EOC)も創設されました。
・ほとんどの感染の発生を占めるEbonyi、Ondo、Edo、3州では、ラッサ熱の治療専用病棟が作られ、確定患者にはリバビリンの点滴による治療が可能となっています。
・ナイジェリア疾病対策センターは、ALIMA(患者管理や 地域社会での教育を補助している現地の非政府機関)の協力を得ながら、OwoとIrruaで治療センターを支援しています。Abakalikiでは、国境なき医師団(MSF)による感染の予防と制御への支援(個人用防護具の指導と研修)が行われています。WHOの患者管理/感染予防対策チ​​ームは、AbakalikiとIrrruaで医療スタッフに研修を行っています。
・感染発生の激しい州では、調査活動の強化が続けられています。各州の患者リストは、随時、ウイルス性出血熱の管理システムのある政府レベルのデータベースに送られています。
・ナイジェリア疾病対策センターは、WHOの協力を得て、全ての治療センターへの個人用防護具の供給を続けています。
・Irrua専門家研修病院のスタッフは、疑い患者が受診した他の病院に臨床上の患者管理の仕方についてアドバイスを行っています。また、24時間体制で、ラッサ熱患者を管理するための電話相談窓口が開設されました。ラッサ熱を発症した患者への医療支援を向上させるために、ラッサ熱(対策)委員会がAbakalikiに設立されました。
・ナイジェリア疾病対策センターは、Edo、Ondo、Ebonyiの各州に地域密着型のチームを派遣し、個人と地域の衛生環境(の改善)、並びに速やかな医療施設への受診行動を促しています。地域社会がもつ懸念をよりよく理解し、対処するための体制が整備されてきています。

WHOによるリスク評価

 ラッサ熱は、急性ウイルス性出血熱です。ネズミの糞尿で汚れた食べ物や日用品に触れることで人に感染します。予防することなしに血液や体液に触れれば、人から人への感染や検査施設での感染も起こります。この病気の全体(無症候性および軽度の症候の患者を含む)での致死率は、約1%です。しかし、重篤な入院患者では高く20%もしくはそれ以上と報告されています。電解質の補正による早期の治療と抗ウイルス薬リバビリンの投与は生存率を向上させることができます。ハイリスクの接触者を除けば、ラッサ熱への曝露後の予防投与法としてのリバビリンの有効性を支持する科学的根拠は得られていません。ラッサ熱は、ナイジェリア、リベリア、ギニア、シエラレオネに常在することが知られており、ラッサ熱は、ベナン、ガーナ、マリ、トーゴでも報告されてきました。西アフリカの他の国にも、存在している可能性はかなり高いです。

 現在、ナイジェリアで流行しているラッサ熱は、直近の4週間に、患者数、死亡者数ともに減少傾向を示しています。(しかし)例年の経過では、まだ、激しい流行期間が終わっていないことから、この減少傾向の解釈には注意が必要となります。調査体制は、最近、強化が図られています。この流行は、これまでにナイジェリアで報告された流行のうちでも最大の規模です。

 医療従事者27人が感染したことは、予想される診断にかかわらず、すべての患者に対して、すべての医療施設が早急に感染の予防と管理の実施を強化すべきことを強く示しています。

 国内および往来の多い国境周辺のさまざまな地域で確定患者が報告されていることが、国内にも隣国にも(感染の)拡がるリスクがあることを示しています。(アフリカ)地域レベルでは、全体としてのリスクは中等度です。公衆衛生上の取り組みには、感染監視の活動、接触者の追跡、検査施設での検査、患者の管理などの活動強化を続けていくことに焦点を当てる必要があります。

WHOからのアドバイス

 ラッサ熱の予防は、ネズミが家に侵入しないように衛生環境をよくすることに左右されます。医療施設の環境では、患者に対処する際、院内感染を予防するために、関係者が標準的な感染の予防と制御のための対策を徹底する必要があります。

 稀な例ですが、ラッサ熱が常在している地域から戻った旅行者が、この病気を他の国に感染輸出することがあります。西アフリカから戻ってきた有熱者、特にラッサ熱が常在する国の農村地域や病院にいたことのある有熱者には、ラッサ熱の診断を鑑別に入れることが必要です。ラッサ熱が疑われる患者を診察する医療従事者は、速やかに地元と​​国の専門家に連絡し、アドバイスを求め、検査施設での検査を手配する必要があります。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness. 20 April 2018
Lassa Fever - Nigeria
http://www.who.int/csr/don/20-april-2018-lassa-fever-nigeria/en/