マラリア
M a l a r i a
マラリアは、熱帯・亜熱帯地域に広く分布する感染症で、世界100ヶ国以上の国で流行しています。 全世界で、1年間に100万人以上の死亡者があり、そのほとんどはサハラ以南のアフリカであると報告されています。 また、海外旅行者の発症も年間で1万〜3万人程度いるといわれています。
日本でも、かつてはマラリアの流行がありましたが、1959年を最後に国内発生の報告はありません。 現在では、海外で感染した患者が、毎年100名前後報告されています。
マラリアの中でも、特に、熱帯熱マラリアは緊急対応が必要な病気です。 流行地から帰国後、発熱などの症状が出たら、速やかに医療機関を受診し、渡航先を告げた上で医師の診察を受けてください。
1 病原体と感染経路
マラリアは、マラリア原虫による感染症です。 マラリア原虫を持つ蚊(ハマダラカ)に吸血されることで感染します。 原虫の種類によって、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵型マラリアの4種類に分類されます。
2 症状
1週間以上の潜伏期間の後、悪寒、震えと共に体温が上昇し、1〜2時間続きます。その後、悪寒は消えますが、体温は更に上昇し、顔面紅潮、呼吸切迫、結膜充血、嘔吐、頭痛、筋肉痛などが起こり、これが4〜5時間続くと発汗と共に解熱します。 これを熱発作と呼びます。 この熱発作の間隔は、感染するマラリアの種類によって異なり、三日熱、卵型マラリアは48時間、四日熱マラリアは72時間ごとに起こりますが、感染初期では発熱が持続する傾向が多いようです。
一般に熱帯熱マラリアは、他のマラリアと異なり高熱が持続する傾向があり、平熱まで下がることはほとんどありません。 また、症状も重く治療が遅れると意識障害、腎不全などを起こし、死亡することもまれではありません。
3 治療方法
抗マラリア薬を投与します。 感染した地域によって、マラリア原虫の薬剤耐性が異なるので、その地域性を考慮した薬剤が選択されます。
4 予防方法
○蚊に刺されないようにしましょう
蚊に刺されないようにすることが第一ですので、防虫スプレーや蚊取線香の使用をお勧めします。また、厚手の服 (長袖、長ズボン)の着用、蚊帳も効果があります。
○予防薬
日本でマラリアの予防薬として認可されているのはメフロキン(商品名メファキン)のみです。 しかし海外ではアトバコン/プログアニル合剤(商品名マラロン)、ドキシサイクリン、クロロキン、クロロキンとプログアニルの併用などが使われます。 クロロキンに耐性の熱帯熱マラリア原虫が増えていますので、中近東や中米の一部などで耐性マラリア原虫がいないとわかっている地域以外では、メフロキン、マラロン、ドキシサイクリンの使用が勧められます。 子供、妊婦、持病によっては使用できない薬剤もあるので、専門の医師と個別に相談して下さい。 タイ・ミャンマー国境地帯、タイ・カンボジア国境地帯ではメフロキンに耐性の熱帯熱マラリア原虫がいるので、医師とよく相談して下さい。 マラロンはマラリア流行地を離れて7日間、それ以外は4週間薬剤を飲み続けなければいけません。 容量、用法は医師の指示に従って下さい。 予防薬を服用していてもマラリアを発症することがあります。
参考に海外での予防薬の主な商品名を薬剤ごとにあげます。
1.メフロキン(Mefloquine)
| 商品名 |
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アラレン |
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(Aralen) |
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メファキン |
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(Mephaquin) |
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| 副作用: |
胃腸障害(悪心、嘔吐、腹痛など)めまい、平衡感覚障害。 |
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2.アトバコン/プログアニル合剤(Atovaquone/proguanil)
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| 副作用: |
胃腸障害(腹痛、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振)、頭痛、脱力感、めまい |
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3.ドキシサイクリン(Doxycycline)
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| 副作用: |
胃や肝臓に障害などが生じることがありますが、詳しいことは不明です。 |
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クロロキンに耐性の熱帯熱マラリア原虫がよくみられるアフリカ、アマゾン、南アジア、東南アジア等ではあまり勧められない薬剤
4.クロロキン(Chloroquine)
| 商品名 |
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アラレン |
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(Aralen) |
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アブロクロール |
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(Avlochlor) |
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ニバキン |
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(Nivaquine) |
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レゾシン |
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(Resochin) |
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| 副作用: |
胃腸障害(悪心、嘔吐、腹痛など)頭痛、めまいなど |
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※ 肝臓や腎臓に障害のある人は服用できません。網膜症を起こす場合があります。 |
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5.プログアニル(Proguanil)
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| 副作用: |
胃腸障害(悪心、嘔吐、腹痛など) |
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※ 妊婦、新生児は服用できません。 |
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日本では、2001年11月からメフロキンの販売が行われるようになりました。取り扱っている医療機関については、検疫所まで問い合わせ下さい。
国内での入手先が少ないことや渡航先で流行している耐性マラリアの情報が少ないことから現地で購入も考えて下さい。また、予防薬は規則的に服用しないと発症は防げません。そのため、帰国してからも4〜6週間は飲み続けなければなりません。
5 マラリアの流行地域
〈アジア・欧州〉
中国南部、フィリピン、ベトナム、ラオス、タイ、カンボジア、ミャンマー、ネパール、インド、スリランカ、パキスタン、インドネシア、マレーシア、バングラデシュ、ブータン、東ティモール、タジキスタンで発生していますが、一般に都市周辺部やリゾート地では危険性が少なく、森林、山岳地帯に多く流行しています。また、クロロキン耐性のマラリアが数多く報告されています。
シンガポール、マレーシア、タイとミャンマーの国境、フィリピン、中国の雲南省では猿のマラリア(プラスモディウム・ノウレシ)の人への感染例が報告されています。
〈大洋州〉
ソロモン諸島、バヌアツ、パプアニューギニアで発生しています。
〈アフリカ〉
北緯20°〜南緯25°までの広範な地域に流行しており、アジア地域と比較しても、その流行は規模が大きく、都市部であっても感染する可能性があります。また、東アフリカ、西アフリカ沿岸ではクロロキン耐性マラリアが報告されています。
〈中東〉
イラン、イラク、サウジアラビア、イエメン、トルコで発生しています。
〈中南米〉
グアテマラ、ホンジュラス、パナマ、コロンビア、エクアドル、ペル−、ガイアナ、ドミニカ共和国、仏領ギアナ、スリナム、ハイチ、ニカラグア、メキシコ、パラグアイ、ベネズエラ各国の平野部や森林地帯および低山岳地帯(標高1500m以下)、ブラジルのアマゾン全域、ボリビアの平野部に流行しています。一般に1500m以上の高原地帯や山岳地帯での発生はないとされていますが、1800mの高地でも流行したとの報告もあります。また、クロロキン耐性マラリアは、ほとんど全域で報告されています。
付録
マラリアを媒介する蚊(ハマダラカ属)の見分け方
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ハマダラカ |
イエカ・ヤブカ |
止まる姿勢が他の蚊と異なりお尻を上げて止まり、成虫の 羽には、まだらの紋様がある |
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6 マラリア感染のリスクがある地域

出典:WHO International travel and health 2009 |
【2009年4月更新】
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