アメーバ赤痢
流行地
赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)により引き起こされる原虫感染症で、世界中に存在しますが、とくに衛生状態の悪い地域で多くみられます。先進国でも男性同性愛者間の性感染症のひとつとして、まれな疾患ではなくなってきています。
赤痢アメーバ症による死亡者数は、全世界で毎年4~7万人とされ、わが国でも年間数百例の報告があり、年々増加の傾向にあります。
感染経路
赤痢アメーバシスト(嚢子という形態の一種)に汚染された飲食物を口にすることにより感染します。また、男性同性愛者間での性感染もあります。
潜伏期
通常2~3週とされますが、数か月~数年におよぶこともあります。
症状
腸管病変と腸管外病変に分けられます。腸管病変は、無症状のものから重症の大腸炎までさまざまですが、典型的な症状は粘血便(イチゴゼリー状)、しぶり腹、排便時下腹部痛などです。増悪・寛解を数か月から数年間繰り返しますが、一般に全身状態は保たれ、発熱をきたすことはまれです。
腸管外病変で多いのはアメーバ性肝膿瘍です。発熱をきたすことが多く、上腹部痛、肝腫大などがみられます。約半数では下痢などの消化器症状を認めないため、注意が必要です。心臓、肺、脳などに病変がみられることもあります。
治療法
メトロニダゾールなどの薬剤による治療が有効です。肝膿瘍の場合には、外科的治療が選択されることもあります。
予防等
加熱調理が不十分な食品は避けましょう。食品以外にも汚染された食器や調理器具から感染することもあるので注意してください。また、赤痢アメーバ症の病原体E. histolytica は、非病原性のE. disparと形態学的に判別するのは困難なため、水様下痢のみの方で、海外の医療機関で便検査のみで赤痢アメーバ症と診断された場合には、誤診の可能性もあります。また、治療が開始されている場合にも、治療効果の確認のため、複数回の便検査が必要です。帰国後に医療機関を受診することをお勧めします。
2014年1月更新