急性灰白髄炎(ポリオ)

流行地

エンテロウイルス属に分類されるポリオウイルスによる感染症で、ヒトにのみ感染します。2000年にWHOは、日本が属する西太平洋地域での根絶宣言を出しましたが、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアなどポリオウイルスが常在する国では、依然として流行がみられ、他の国や地域への感染波及が問題となっています。

感染経路

経口的にヒトの体内に入ったウイルスは、咽頭や小腸の粘膜で増殖、血流を介して中枢神経系へ達し、脊髄運動神経に感染、典型的なポリオ症状(かつては「小児マヒ」と呼ばれていました)を示します。感染後症状がなくても糞便中に数週間にわたりウイルスが排泄され、新たな感染源となります。とくに5歳以下の小児は感染しやすい傾向にあります。

潜伏期

3~21日です。

症状

感染者の90~95%は症状が出ません(不顕性感染)が、約5%には発熱、頭痛、咽頭痛、悪心・おう吐、倦怠感、頚部硬直、下肢痛などの症状が見られます。感染者の200人に1人に下肢麻痺が出現し、そのうち5-10%が呼吸筋麻痺により死亡すると言われています。

治療法

特異的な治療法はありません。

予防等

ワクチン接種による予防が主体です。わが国では、2012年9月から生ポリオワクチンによる定期予防接種は中止され、単独の不活化ポリオワクチンが、また、同年11月からはジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチンの4種混合ワクチン(DPT-IPV)が定期接種に導入され、接種回数も4回になりました。
1975(昭和50)年から1977(昭和52)年の間に生まれた方は、ポリオに対する免疫能が他の年齢層に比べ低いとされています。この期間に生まれた方が、ポリオウイルス常在国に渡航する場合には、ポリオワクチンの再接種が望ましいでしょう。また万一、その方のお子さんがポリオ生ワクチンを接種する場合には、お子さんの腸内で病原性を回復したウイルスが排泄され、その方に感染する可能性がありますので、その場合にもポリオワクチン再接種をお勧めします。
欧米へ留学される際には、要求される接種回数が異なる場合がありますので、事前に確認しましょう。

2014年1月更新