シャーガス病(アメリカトリパノソーマ病)

流行地

シャーガス病は寄生性の原虫であるクルーズトリパノゾーマによる感染症で、おもに中南米でみられます。

感染経路

家の土壁、屋根、天井、マットレスなどに生息しているサシガメ類昆虫の糞に含まれるトリパノソーマが粘膜、眼瞼結膜、皮膚刺咬部から体内に侵入することで感染が成立します。就寝中、知らないうちに感染していることがほとんどですので、注意が必要です。また、汚染された飲食物を摂取することによる経口感染、輸血や臓器移植による感染例も報告されています。

潜伏期

感染成立後、数週間後に発症します。感染者の約25%は数年~数十年後に慢性期症状(不整脈、心筋症消化器症状など)を発症すると考えられます。

症状

原虫の侵入した部位の腫れや炎症、リンパ節腫腸で始まり、発熱、肝脾腫に進行し、一部の患者は急性心筋炎・髄膜脳炎で死亡することもあります。さらに数年後、20~30%の患者に、慢性心筋炎(不整脈→突然死も)、巨大食道(嚥下障害→栄養失調・誤嚥性肺炎)、巨大結腸(便秘、腸捻転)などが起きることもあります。

治療法

急性期に抗原虫薬による治療を開始しなければ完治は困難で、慢性期に移行してしまうと、薬物療法の効果はあまり期待できません。心症状に対してはペースメーカー埋め込みや心臓移植、消化器症状に対しては開腹手術が必要なこともあります。

予防等

サシガメ類昆虫に刺されないことが重要です。中南米で、土壁・藁葺き屋根の家屋に夜間滞在することは避けましょう。