ダニ媒介性脳炎

流行地

ダニ媒介性脳炎は、フラビウイルス科に属するウイルスによる感染症で、熱帯以外のユーラシア大陸の森林、西はフランスのアルザス・ロレーヌ地方から、東はウラジオストック、中国東北部まで広く分布し、日本人観光客に人気のある「ウイーンの森」のほか、「ロマンチック街道」で有名なドイツ・バイエルン自由州でも患者発生が多くみられます。
ダニの活動時期は地域と天候によって左右され、中央ヨーロッパでは5~6月と9月~10月に、北ヨーロッパやヨーロッパ山岳部では夏に、アジアなどの温帯地域では11~1月に最も活動が活発になります。なお、2001年に、オーストリアに滞在した日本人が滞在中に感染して亡くなった事例も報告されています。
日本国内でも1993年に北海道の酪農家の主婦が本疾患に罹患した報告があります。

感染経路

マダニ科に属する各種吸血性マダニの刺咬により感染しますが、ヒトからヒトへの直接感染はありません。げっ歯類の感染も認められています。
また、感染した山羊や羊等の未殺菌の乳を飲んで感染することもあるとされています。

潜伏期

7~14日です。

症状

頭痛、発熱、悪心・おう吐などのインフルエンザ様症状に始まり、発症2~4週後に20~30%の患者が上記症状に加え、めまい、羞明(光が異常に眩しく感じる)、構語障害、歩行不能、自律神経失調、昏睡などの重篤な髄膜炎・脳炎症状をきたします。
回復後も頭痛、集中力の低下、無気力、うつ状態などの神経・精神症状が長期間残ることもあります。

治療法

特異的な治療法はなく、対症療法を行います。

予防等

流行地では、皮膚の露出を少なくしてダニの刺咬を避ける工夫が重要です。とくに郊外や森林へ行く際には、昆虫忌避剤を使用し、衣服にも散布してください。ダニ媒介性脳炎のワクチンは海外では広く接種されていますが、日本では未承認です。
※2012年から流行している重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは異なる病気です。

2014年4月 更新