炭疽
流行地
炭疽菌による急性感染症で、放置すれば急性敗血症で致死的となります。 ヒト以外にウシやウマ、ヒツジ、ヤギなど草食獣にも感染します。ヒトの病型には皮膚炭疽、腸炭疽、肺炭疽があり、自然感染の95%以上が皮膚炭疽です。 炭疽は地球上、特に土壌中に芽胞という形態で幅広く存在していますので世界の多くの地域に発生がみられます。スペイン中部からギリシャ、トルコを経てイラン、パキスタンに及ぶ地域は、炭疽ベルトとも呼ばれ、発生がみられます。また、ロシア、中央アフリカ、南アメリカなどでも発生が多くみられます。 2001年の米国での発生など最近では生物テロに使用される危険もあります。
感染経路
皮膚炭疽は感染動物の組織や血液、毛、皮革、骨などとの直接接触により、皮膚創傷部から侵入し経皮感染します。健常皮膚からはほとんど侵入しません。
腸炭疽は感染動物の汚染肉摂取により経口感染します。
肺炭疽の発生はきわめてまれですが、飛散した芽胞の吸入により感染します。
潜伏期
1~7日程度です。
症状
皮膚炭疽は、感染局所の発赤、水泡、黒色痂皮、所属リンパ節腫大をみます。
腸炭疽は、出血性腸炎をきたし、血便をみます。
肺炭疽は、上気道症状につづき呼吸困難となり、治療効果は期待できません。
治療法
発症前の抗生物質投与が必須ですが、敗血症をきたした症例での治療効果は期待できません。
予防等
汚染土壌や感染動物との接触を避ける必要があります。汚染された場合は、汚染の除去、消毒および滅菌が必要です。ヒト用ワクチンも実用化されていますが、問題点も多く、わが国では承認されていません。