腸チフス・パラチフス
流行地
日本を除く東アジア、東南アジア、インド亜大陸、中東、東欧、中南米、アフリカなどに広く分布しており、とくに途上国に多くみられます。
わが国では腸チフス・パラチフスあわせ年間100例におよぶ発生件数がみられますが、その多くは海外で感染し帰国後に発症した輸入感染例です。
感染経路
ヒトにのみ感染する疾患で、患者や健康保菌者の糞便で汚染された飲食物を介して感染します。
潜伏期
通常10~14日ですが、摂取した菌量が多ければ潜伏期間は短縮します。
症状
腸チフスとパラチフスは、ほとんど同じような症状を示します。
主な症状は発熱で、高熱が持続します。下痢がみられることもあります。
典型例では、バラ疹(胸腹部に現れる淡紅色の発疹)、肝臓や脾臓の腫大、意識障害や徐脈(脈拍が遅い)などの症状がみられます。また、いったん解熱しても、約20%に再発を認めます。腸出血、腸穿孔をきたすこともあります。
治療法
抗菌薬の投与による治療が行われますが、とくにアジアでは薬剤耐性菌(薬の効かない菌)も報告されています。
予防等
上下水道設備の不十分な地域に滞在する場合は、加熱不十分と思われる食品は避け、飲料水も煮沸してください。飲食店や屋台などでの飲食も控えてください。また、胃切除後や制酸剤内服中は感染しやすくなるので、とくに注意しましょう。
海外で腸チフスワクチンを接種することが可能ですが、わが国では認可されておらず、接種できる医療機関も限られています。
腸チフスワクチンはパラチフスに対しての予防効果はありません。