痘そう(天然痘)
流行地
WHOによる天然痘根絶計画により1977年ソマリアにおける患者発生を最後に地球上から天然痘は消え去り、その後2年間の監視期間を経て、1980 年5月WHO は天然痘の世界根絶宣言を行いました。現在にいたるまで患者の発生はみられませんが、今後はバイオテロなどに使用される危険性が指摘されています。
感染経路
オルソポックスウイルスに分類されるウイルスで、ヒトのみに感染します。ウイルスを排泄する患者の呼気による空気感染や飛沫感染、患者の皮膚病変との接触やウイルスに汚染された患者の衣類や寝具なども感染源となります。ワクチン接種(種痘)を受けていないヒトでの感受性はきわめて高く、不顕性感染はありません。
潜伏期
7~17日間です。
症状
急激な発熱や頭痛、悪寒で発症します。一時的に解熱しますが、口腔や咽頭粘膜に発疹が出現し、顔面や四肢、そして全身に発疹がひろがります。水痘の発疹に似ていますが、天然痘の発疹はすべて同じ形態で経過するのが特徴的です。痂皮(かさぶた)を形成したあとは色素沈着や瘢痕を残します。痂皮が完全に脱落するまでは感染する可能性があり、隔離が必要となります。
典型的な経過をとらずに出血傾向をきたす症例は予後不良といわれています。また、経過中に脳炎をきたすこともあります。
治療法
特異的な治療法はなく、症状に応じた対症療法が中心となります。
予防等
わが国では昭和51年に種痘が中止されておりますが、バイオテロなどで万が一患者が発生した場合は、国家備蓄ワクチンを患者とその接触者に接種します。ただし感染後4日目程度ぐらいまでに接種しなければ有効性はありません。