ペスト

流行地

ペスト菌による全身性の感染症で、アフリカの山岳および密林地帯、マダガスカル、ヒマラヤからインド方面、中国雲南省やモンゴル、北米ロッキー山脈および南米アンデス山脈周辺で主な流行が見られます。

感染経路

ペストは本来、ペスト菌常在地域の森林原野に生息するげっ歯類の感染症で、立ち入ったハンターやきこりがげっ歯類の寄生ノミを介して感染したり、自然災害や自然破壊によりげっ歯類やノミと接触する機会が増えて感染が拡大します。それ以外にも、肺ペスト患者の排泄するエアロゾルによるヒト-ヒト感染、流行地域での家畜やペットからの感染例も報告されています。
1899年にペストがわが国に侵入して以降、大小の流行をきたしましたが、家ネズミの駆除対策などにより、1926年を最後にペスト患者はみられていません。しかしながら、昨今の渡航形態の変化や市場自由化にともない、野生動物との接触の機会が増え、1998年米国で捕獲されたプレーリードックがペットとして日本へ輸出準備中に、ペストを発症し大量死した事例などを踏まえ、2003年3月1日プレーリードックの輸入禁止措置、2005年9月1日にげっ歯類(死体も含む)等の輸入届出制度が施行されるに至っています。

潜伏期

腺ペストは3~7日、肺ペストは2~3日です。

症状

ノミに咬まれた局所のリンパ節腫大と痛み、突然の高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛などをきたす腺ペスト、全身に菌が広がり急激なショック症状や四肢の壊死や紫斑をきたす敗血症型ペスト、腺ペスト末期や敗血症型ペストで肺炎をきたし痰やエアロゾルを介し容易にヒト-ヒト感染をきたす肺ペストの病態があります。

治療法

早期に抗菌薬を投与するのが有効です。

予防等

現地情報をよく把握し、野生動物に注意しましょう。ノミよけスプレーも有効です。ペスト患者を治療する医療従事者や流行地での長期野外活動など接触の危険性が高いと予想される場合は、抗菌薬の予防的内服やペスト予防接種も考慮してください(ただし、予防接種の有効性は高くありません)。